2023.08.23

【EC企業のSDGs消費喚起策】楽天「EARTH MALL」1年で流通3倍 アスクルは「環境スコア」でCVR向上


SDGs(持続可能な開発目標)が社会に浸透する中、EC企業がSDGsやサステナブルをキーワードにした取り組みを強化している。多くの顧客を抱えるECモールの取り組みも積極的だ。楽天グループ(楽天)が「楽天市場」内のサステナブルな商品をまとめて紹介する「EARTH MALL(アースモール)」の2022年における流通総額は、前年比211%増に拡大したという。ヤフーショッピングには、博報堂と三井物産が共同で設立したEarth hacks(アースハック)が今年7月、CO2削減の指標である「デカボスコア」導入商品を購入できる「Earth hacks モール」を出店した。SDGsへの意識が高まる中、通販・EC各社は分かりやすくSDGsに関する買い物ができる環境を整えている。



「EARTH MALL」訪問数は前年比125%増


楽天は2018年11月、「EARTH MALL」を開設し、「国際フェアトレード認証」「有機JAS認証」「FSC認証」など12の認証に基づいた商品や、日々の環境の変化に応じてサステナビリティにつながる商品を選んで、紹介している。


▲楽天グループが運営する「EARTH MALL」

サイト内では、「フェアトレード」「オーガニック」など8つのキーワードを設け、記事コンテンツで紹介する商品が該当するキーワードを明示している。

取扱商品は徐々に増え、2023年4月時点で約14万1000点を紹介している。2022年のサイト訪問数は前年比125%増と伸びており、流通総額も同211%増と拡大している。

訪問数や流通総額の急速な伸びの要因については、「外的要因としては、コロナ禍を経て、ECでのお買い物が定着してきたことに加え、サステナブルやSDGsというワードが浸透し、それらの価値観がお買い物の際の1つの判断指標となってきていることが考えられる。内的要因としては、自治体と協働したキャンペーンの実施や、『編集部のお買い物日記』といったサステナブルな商品を紹介するコンテンツの発信などによる認知拡大、アクセス数増が挙げられる」(広報)と分析している。

今年8月に開催した大型イベント「Rakuten Optimism 2023」では、「ふるさと応援バル」と題し、愛媛県などの自治体が「EARTH MALL」で販売している商品や、ふるさと納税の返礼品を使った料理を提供する催しも開催した。リアルのイベントでも「EARTH MALL」の取り組みを紹介し、さらなる利用者獲得につなげている。


「デカボスコア」で分かりやすく


博報堂と三井物産は今年7月、温室効果ガス削減を目指す新会社「Earth hacks(アースハックス)株式会社」を共同で設立した。新会社では、商品やサービスの二酸化炭素排出量の削減率を示す「デガボスコア」の普及にも取り組んでいる。

「デガボスコア46%」と表記された商品は、通常の方法で商品を製造したときと比べて、CO2を46%削減して製造したことを表す。

会社設立と同時に、「デカボスコア」導入商品を販売する「Earth hacks モール」を「ヤフーショッピング」に出店した。廃材から製作した家具や和紙から作ったTシャツなど、約200商品の販売を開始している。


▲今年7月に開設した「Earth hacks モール」

Earth hacksの関根澄人社長は、「脱炭素という言葉に対して、まず何をしたらいいか分からないというのが消費者の本音だろう。このことを受け、当社はさまざまな取り組みを通じて、日常にある、実は環境によい選択を発見させ、称賛することで、無理なく前向きにできる脱炭素アクションを増やしていく。気が付いたら脱炭素社会になっているという世界を作っていきたい」と話す。

今後、年内に1000商品以上の取り扱いを目指す。商品の環境への貢献度を可視化することで、環境意識の高いユーザーに利用を促す。


アマゾンも認証商品拡充


米・アマゾンが今年7月に発表した2022年版のサステナビリティレポートによると、サステナブルな商品求める顧客に向けて、サステナビリティ認証を受けた商品を見つけやすくする「Climate Pledge Friendly(CPF、クライメント・プレッジ・フレンドリー)プログラム」を提供しているという。

2022年中にCPFプログラムの対象となる商品の数を2倍以上に増加した。現在、顧客が購入できるCPF商品は55万点以上ある。顧客に届けたCPF認証商品の数は8億点以上に達し、プログラムに用いられる認証数は、50を超えている。

大きな影響力を持つ大手ECモールが、SDGs消費の喚起を務めることで、EC市場全体に波及していく可能性がある。EC事業者単体でのSDGs消費促進の取り組みも今後、加速度的に進んでいく見通しだ。

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