アスクルは2023年5月期決算において売上高・利益とも過去最高を継続した。BtoB事業の成長加速と、日用品ECサイト「LOHACO(ロハコ)」の黒字化という2つの目標も達成している。2025年5月期には、売上高5500億円という高い目標を掲げている。BtoB事業のさらなる成長と、黒字化したBtoC事業の再成長の見通しについて、執行役員 EC本部 本部長 温泉さおり氏に聞いた。
黒字化の影に地道な努力
――「LOHACO」を黒字化できた要因は?
売上総利益の面では、値上げを含めた価格の見直し、サプライヤーとの地道な交渉、ポイント施策の絞り込みなどを進めた。
物流面では、置き配を促進している。デフォルトを置き配に設定し、強めに置き配を推奨するUIに変えた。これらの取り組みにより、置き配の比率は上がっている。置き配であればBtoBの配送ネットワークでBtoCの商品を運ぶ混合輸送がしやすくなり、配送費の低減につながる。
1箱当たりの単価の上昇にも取り組んでいる。送料が無料になる配送バーを変更したり、まとめ買いでお得になる販促を実施したりすることで、単価は上昇している。単価が上がることで配送効率が高まっている。
固定費の削減にも注力した。BtoBとBtoCの事業本部を統合し、重複している業務を減らし、業務の効率化や人員のスリム化を図った。
――BtoBとBtoCの事業本部の統合による各事業でのシナジーは?
今年3月から事業本部を統合している。統合によってコスト削減を実現できただけではなく、シナジー効果も出ている。例えば、それぞれの事業本部に集客チームがあったが、統合により同じ業務は1人の担当者に集約するなど効率化を図った。
さらにBtoB事業は外部からの集客に注力しており、BtoC事業はモールでのポイント販促やメーカー販促に長けていた。それぞれが、注力してきた部分のノウハウを共有し、より効率的な販促を実施できるようになった。
1箱当たりの単価を高める取り組みや、商品施策においてもそれぞれの事業部で培ってきたものを生かすことができている。
――今期(2024年5月期)のBtoC事業は、第4四半期から前期を上回る計画だ。
「ヤフーショッピング」のキャンペーン変更による影響により、第3四半期までは前期を超えるのは難しそうだが、一巡してくる第4四半期からは前期の水準を超えることができるだろう。商品の拡充の準備もしており、販促も徐々に強化していく。第4四半期から再成長を図り、来期以降もその流れを継続していきたい。来期からBtoC事業も会社の伸長率くらいの成長を実現していきたいと思う。
――Zホールディングスとのシナジーに期待することは?
今年10月以降のID統合が鍵を握ると思う。LINEユーザーにもリーチできる可能性が出てくる。まだZホールディングスとの取り組みで決まっているものはないが、顧客基盤が増えるために何かできることを期待している。
――「LOHACO」以外のBtoC事業の状況は?
ペット用品を販売するチャームの売り上げは順調に拡大しており、前期は過去最高になっている。利益面では原価高騰の影響を受けているものの、売上高・利益とも計画通り推移している。