「カゴ落ち客のフォロー」が鉄板の施策
吉村:MAで売り上げを上げるためのお客さまに響くコミュニケーション設計を強化するメリットと方法について、ケーススタディーとポイントを教えてください
西部:この話題は広範囲に渡ります。特に、広告については、戦略的に狙っているターゲットが広告に接触しやすく、そのターゲットに向けてクリエーティブが適正化されているかどうかを確認する必要があります。これには、チャネルの選定とクリエーティブの改善が含まれます。
一般的に、「カート放棄率は70%以上ある」ということが、よく言われます。そのため、カートを放棄した人のフォローを自動化する施策は、非常に効果的です。手動で行うと大変なので、MAツールの導入をおすすめしています。
次に、ビジネスモデルについて解説します。ECでは、小売アパレルのような、一つの商品を購入した後、クロスセルを行ってLTVを上げるビジネスモデルと、単品商品を何度も買っていただくモデル、定期的に異なる商品が届く頒布会サービスのモデルなどがありますが、今回は前者について焦点を当てます。
このようなビジネスにおいて、クロスセル施策をどのように構築するかが重要になります。クロスセルをするためには、単にテクニックを使うのではなく、お客さまが次に何を買いたいかを理解する必要があります。
例えば、顧客が次に何を買いやすいかを考えます。「一つ目に買った商品と一緒に使う商品」なのか、「消費したため別で購入する必要がある商品」なのかを考えます。それに基づいて、コミュニケーションを設計し、お客さまに次回の購入を促すことが大切です。
しっかりとしたコミュニケーションデザインを作ることによって、2回目や3回目の購入を検討するお客さまが増え、売り上げを上げることができます。
曽川:さまざまな施策がありますが、私が考える一番実施するべき鉄板の施策は、「サイトに訪れ、商品に興味があるけれど退店してしまった人々を追いかけること」です。
「お客さまにもう一度サイトに来訪してもらうためにはどうすればよいか」という視点から考えても、当然の施策です。
特に、小売業やアパレル業界などで、週に2~3回のメールマガジンを配信していれば、メルマガ経由の流入が多く期待できます。
メルマガに他の施策を併用することにより、アクセス数も増やすことができます。商品に興味があったものの購入しなかった人々も、フォローアップすることができます。
したがって、最初はこの「サイトに訪れ、商品に興味があるけれど退店してしまった人々を追いかけること」から始めることをお勧めしています。
これ以外の施策については、お客さまのニーズやライフスタイルを考慮して提案することになるため、非常に高度な思考が必要となります。西部さんなどの知識や見識を参考にすることをお勧めします。
成功事例としては、レコメンドエンジンとCRMツールを一つに統合することによって実施できた施策があります。レコメンド商品をさまざまな場所に差し込むことむようにしました。
取扱品目が多い場合は、商品自体がコンテンツとして機能するため、シーズンの変更などで新しい商品を提案することができます。ランキング機能も利用して、週間や月間のランキングを表示することで、お客さまにとって役立つ情報を提供できます。これらは、レコメンド用の新たな文章を考える必要もないので、とても効率的です。
「カゴ落ちメール」のメリットとしては、デザインやレイアウトに時間をかける必要がないことが挙げられます。商品や関連商品を紹介するだけでよく、企業ロゴと、ソーシャルアイコンがあれば十分です。テンプレートを使ってシンプルなデザインで作成し、早急に立ち上げることで、効果的なカゴ落ちメール施策を実現できました。
吉村:本日はありがとうございました。
ブランドとしてのCX(カスタマーエクスペリエンス)をどのように表現すればいいかを、二人に解説してもらいました。商品やサービスの機能性を提供するだけでなく、カスタマージャーニー全般における、お客さまとのコミュニケーションの中でリッチな体験を提供するためにも、マーケティングプランを練ることが必要であることを説明していただきました。
CRMの目的は、お客さまとのより良い関係を構築するために、商品やサービスの良さを伝えるマーケティングをすることだと教えていただきましたし、そのためには、MAを活用するための、データの取得と活用が必要だということでした。そうしたデータを使って、組織の対応力や、人材を活用・育成を行うことの重要性と、その方法についてアドバイスをいただきました。
【プロフィール】
■シナブル クライアントコミュニケーション&マーケティング 曽川雅史部長大阪本社のクラウドCRMベンダーにて法人営業でトップセールスを達成後、同社のウェブマーケティングを担当。子会社では広告事業の立ち上げに奔走。その後2年間の個人事業主期間を経て、福岡本社のウェブコンサルティング会社へ入社。大手企業への法人営業に従事。2020年シナブル入社。これまでの経験を生かし、EC売り上げを向上するための顧客分析と施策提案を行っている。ウェブ接客やCRM、レコメンドエンジン、検索などの機能を一つのプラットフォームとして提供することで、導入企業がデジタル施策を実現する労力やコストを削減することに貢献している。
▶シナブルのサイトは
こちら■合同会社Hamon 西部好範氏2008年、テレビ朝日リビング(現ロッピングライフ)に入社。リサーチ、商品分析・顧客分析、システム、フルフィルメントを担当。データベースマーケティングの部署を立ち上げ、リテンションの仕組みを構築しその領域で売り上げ10億円を達成。2020年、ライフェックスに取締役としてジョイン。CRM領域の責任者として、スタートアップから大手のクライアントを60社ほど支援。2022年7月、MOLTSに入社。グループ会社のKASCADEの執行役員に就任。2023年4月 Hamon 代表として独立。
■Innovation&Communication 吉村典也代表製造業向けコンサルティング会社や外資系システム会社などを経て、コンサルタントとして独立。通販・Eコマース事業、CRM、フルフィルメントをWF設計・運用までを顧客視点・スタッフ視点で支援している。やずやグループが開発した「通販基幹CRMシステム」の外販導入サポート業務で出会った事業者の課題を通じて、日本のコマースビジネスには成長の可能性、未知のカテゴリーがあると確信。1社でも多くの企業の事業をグロースさせるためのアドバイスやサポートを実施している。
▶吉村氏が顧問を務める富士ロジテックホールディングスのサイトは
こちら