2023.03.08

【連載〈第9回〉】フルフィルメントで「ブランド体験」をつくりだす


私、工藤一朗(くどう・いちろう)が代表取締役を務める株式会社ライフェックスではこれまで、通販・ECをはじめとした、数多くの企業のブランディングの構築から新規獲得、CRMまでを一気通貫で支援し、成功に導いてきた。この連載では、アフターコロナの新規獲得に関するノウハウを、余すところなくお伝えしていきたい。前回はCRM施策に関して、顧客視点と理念を一致させるのに役立つ「メインメッセージ」という考え方をお伝えした。顧客の趣味・嗜好のデータを探る上で欠かせないLINE活用についても解説した。

 

【前回記事リンク:https://netkeizai.com/articles/detail/7917


これまで、商品認知の初期段階からブランディングとCRMを重視することが重要であると伝えてきた。情緒的価値を感じるブランド体験を作り、購買につながる導線へと接続することも重要だと伝えてきた。だが、ブランド体験を作りだすもう一つの存在を忘れてはならない。それはフルフィルメントである。

フルフィルメントとは、通信販売やECにおける、受注から配送までの業務(受注処理、梱包、在庫管理、発送、受け渡し、代金回収など)の一連のプロセスを指す言葉だ。

中でも顧客へのラストワンマイルを担う物流センターや、お客さまと直接コミュニケーションするコンタクトセンターなどは、CRMという視点で見ても重要な存在として挙げられる。戦略にいくらブランド・アイデンティティー(以下BI)を込めたとしても、実際に顧客と触れ合う人に、その瞬間、その意識が欠けていれば、ブランドは正しく伝わらない。

今回は、ブランドを適切に体現する、フルフィルメントに対する考え方をお伝えしていこう。


物流や梱包にもブランドとの一貫性は必要


先述のように、顧客と直接的な接点を持つフルフィルメント担当部署は、ブランド体験を作りだす上で、重要な存在だ。直接的に売り上げを生み出す部署ではないが、ブランドイメージを適切に届けることで十分利益に貢献できる。

例えば、サポートをしたり、返品・交換などを受け付けたりするコンタクトセンターは、顧客の満足度向上を図り、最良のブランド体験を届けるための最前線という考え方もできるだろう。

では実際に、フルフィルメント担当部署は、どのようにブランドイメージを届けていくことができるのか、いくつか具体例を見ていこう。

例えば、物流センターにおいては、商品の梱包の仕方によって、ブランディングに寄与できる。ECで買った商品が届き、開封する瞬間というのは、最も気持ちが高揚する瞬間だ。その瞬間をブランド体験として演出するために、最近ではイラストやメッセージを施した段ボールで梱包するなど、顧客がワクワクするようなアイデアを実践している企業も少なくない。

また、段ボールのイラストやデザイン以外の面でも、BIを表現している企業がある。例えば、パーパスとして環境への配慮やSDGsを掲げている企業では、緩衝材として、ビニール袋に空気を入れたものや発泡プラスチックなどではなく、再生可能な紙を同梱しているところがある。過剰包装による無駄を出さないために、商品の形状に合わせて形を変えられる段ボールを開発して使用する企業もある。少量ロットの注文でも最適化された段ボールをオンデマンドで製造できる製函機を導入する業者なども増えている。

他にも、簡単に折りたためて、廃棄や収納のストレスが軽減された段ボールを導入する企業も増えている。こういった気遣いは、顧客の満足度につながるだけでなく、ブランドとしての意思を伝える手段の一つだと考えられるだろう。

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