2023.03.16

適格消費者団体、景表法改正案に見解 「開示要請の実効性は不透明」

2月28日に閣議決定された景品表示法改正案に、「適格消費者団体が事業者に対して表示の合理的根拠資料などを開示するよう要請できる」旨の規定が盛り込まれたことについて、特定適格消費者団体である消費者機構日本はこのほど、本紙の取材に対して、「開示要請の規定の実効性は未知数」とする見解を明らかにした。適格消費者団体である消費者支援機構関西も、同様の見解を示している。


適格消費者団体の訴訟を支援


景表法改正案には、「適格消費者団体が、一定の場合に、事業者に対し、当該事業者による表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の開示を要請することができるとともに、事業者は当該要請に応ずる努力義務を負う」とする規定が盛り込まれている。

適格消費者団体では、通販事業者を始めとした、さまざまな事業者に対して、広告表示や、ECの申し込み画面の表示の改善などを求める申し入れを行っている。

事業者が改善の申し入れを受け入れない場合は、広告表示の差し止めなどを求める訴訟に発展するケースもある。

いざ訴訟となった際に、勝敗を分ける要因となるのが、合理的根拠資料の有無だ。現行の制度では、事業者からの自主的な開示がない限り、事業者が合理的な根拠を持っているか否かを、消費者団体は知りえない。「合理的根拠を持っていないと思って訴訟を起こしたら、持っていて負けた」ということが起こり得るのだ。

今回法案に合理的根拠の開示に関する規定が盛り込まれたことには、そうした点について、適格消費者団体を支援する狙いがあった。


要請無視の懸念も


ただ、改正法案に盛り込まれた「開示要請」の規定の実効性に不安を感じる適格消費者団体もあるようだ。
 
消費者機構日本では、「事業者の表示に誤りがあると考えられる場合、違法表示であることを団体側で立証しなければならないが、健康食品などの表示に関しては専門的な知識が必要になるケースも多い。開示要請の規定があると、やりやすくなる」(板谷伸彦専務理事)と一定の評価をしつつも、「事業者に課されるのはあくまで努力義務であるため、どこまで実効性があるかは不透明」(同)としている。
 
消費者支援機構関西も、「開示要請を根拠づける規定が創設されたことは無意味ではない。ただ、誠実に対応する事業者は従前から開示に応じており、問題は開示を拒否したり無視したりする一部の事業者だ。努力規定が設けられたからといって、これまで要請を無視してきた事業者が応じるかは未知数」(事務局)としている。
 
「努力義務による対応は不十分だ。当団体としては、不実証広告規制のような、事業者に強制的に合理的根拠資料を提出させる権限を適格消費者団体に与えるべきだと考えている。少なくとも、事業者が正当な理由なく適格消費者団体に対する回答を拒絶した場合には、消費者庁が調査や資料の提出を求めるなど、事業者が得をしない対応が必要」(同)とも話している。
 
消費者庁では、「民間の団体に、不実証広告規制の権限を付与することは法制度上難しい。今回新設する規定により、直ちに法的根拠が発生するというわけではないが、事業者が合理的根拠を示さなかった場合、訴訟における、裁判官の心証形成に役立つのではないか」(表示対策課・南雅晴課長)としている。





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