2022.12.12

【カラクリのセミナーレポート】ビームスの矢嶋氏など登壇 今後のEC戦略は「オムニチャネル」が鍵


カスタマーサポート支援のカラクリは10月、「新時代のEC × DX(デジタルトランスフォーメーション)成長戦略」と称し、オンラインセミナーを開催した。パネリストにオイシックス・ラ・大地から奥谷孝司専門役員COCO、CaTラボから逸見光次郎代表、ビームスから矢嶋正明執行役員を招き、今後のEC戦略に関して討論を行った。今後のEC戦略の鍵は「オムニチャネル(企業と顧客のタッチポイントを統合し、総合的に顧客へアプローチする手法)」と「手厚いサポート体制」にあるようだ。



「現在感じている変化」は?


セミナーは複数のテーマを設けた。今回のセミナーレポートでは、重要なテーマを抜粋して紹介する。一つ目のテーマは「現在感じている変化の兆しや注目していること」。

3人とも国内のEC市場に関しては、ネットで商品を購入することにためらわない人が増えているとの見解を示した。「ネットで商品を購入する」ということが、”便利だ”ということが消費者の中で知れ渡ったとみている。

海外にまで目を向けると、奥谷氏は海外でよく見られるオーバーテクノロジー(現在の技術水準をはるかに超えた技術のこと)化に懐疑的な意見を持っているという。

「技術レベルが高いと、本当にものって売れるのかと疑問視している。技術よりも買い物価値の向上が重要だろう」(オイシックス・ラ・大地 奥谷専門役員)と指摘する。


▲オイシックス・ラ・大地 奥谷専門役員

先日、実際に米国を訪れた逸見氏は、米国事情について「にぎやかなデジタル、派手なサイネージやアプリへの送客はもう静かになっている。店舗受け取りや駐車場での商品受け取りは消費者の間で浸透している。だが、『広域配送型』のように、何十キロ先まで商品を届けるが、その背景にはロボットがセンターに入って対応するというのはどうなのだろうか。収益がきちんと確保できるのか疑問視している」(CaTラボ 逸見代表)と説明する。

ビームスの矢嶋氏は、「現在感じている変化」について、コロナ禍の反動を受け、EC売上高の伸びが多少緩やかになっていることを挙げつつ、その中で「オムニチャネル」が活発化してきているという。

「当社は全国に実店舗があるが、全ての実店舗がSNSアカウントを持って情報発信している。このお店のあの人が紹介してくれるから買うといった動線作りに成功した。お店のスタッフがコンテンツになり、購入を促進できている」(ビームス 矢嶋執行役員)と話す。


▲ビームス 矢嶋正明執行役員


ECは物販ではなく”サービス”の提供へ


2つ目のテーマは「1年後や3年後の少し先のECの未来はどうなっていくと思うか」。3人は①ECは物販ではなく、”サービス”提供が重視されるようになる ②ECと実店舗の購入場所がよりシームレスになっていく――ことを挙げた。

「これからのECは物を売り込むというよりは、『オンライン接客』や『チャットボット』などで、どれだけ良いサービスを提供できるかが重要になってくると考えている。『スタッフスタート』などのツールで、お店のスタッフとつながりを持ちたい消費者も出てくる。単純に物を売るだけではなく、どれだけ手厚いサービスを提供できるかが大事になってくる。深いエンゲージメントが求められるようになるだろう」(オイシックス・ラ・大地 奥谷専門役員)と考えている。

購入場所もさらに垣根がなくなっていく。消費者は実店舗、EC、どちらかでしか買わないということは少なくなっていくとみる。

CaTラボの逸見氏は「シームレス化はするが、実店舗、EC、それぞれサービス内容を洗練化していくことが重要だ」と言う。

さらに「話が壮大になっているが、しっかりとした顧客対応は決して大手企業や豊富な資金力がある企業でないとできないことではない。企業の大きさは関係なく、顧客のことをどれだけ考えているかが重要なのだ。小さい企業の方が、手堅く小さく顧客対応を始められるため、むしろ好都合なはずだ」(CaTラボ 逸見代表)と説明する。

今後、EC売り上げが伸びる企業と伸びない企業の差は、どれだけ消費者に寄り添った良いサービスを提供できるかどうかにかかっている。

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