2021.10.14

【<徹底解明>モール物流戦争の行方】第1回 宅配クライシスと逆行、進む“最安”競争


配送料以外の魅力も


3大モールは物流サービスを強化することで、EC事業者の事業者の在庫を確保し、モールの競争優位性向上につなげようとしている。

ある通販会社は、「通販物流に強い3PLに見積もりを取ったが、1件当たりの出荷費用が約1000円だった。それがモールの物流だと200円台。比較にならない」と話す。

モールの物流サービスを選択する理由は、配送料だけではない。アマゾンやヤフーでは自社の物流サービスを利用する店舗の商品にラベルを付け、購入を促す取り組みを行っている。

楽天は現時点で、「RSL」利用企業が「楽天」で優位性を得られる特典を付けてはいないが、以前の取材でその可能性について言及している。

モールをメインの販売チャネルに据えているEC事業者にとって、モール物流を利用しない選択肢は考えにくくなっている。今後もモール物流はキャパシティーを広げ、在庫の奪い合いを進めていくだろう。配送料を含むサービス競争は、まだまだ激しさを増していきそうだ。


モール物流の次なる一手は?


アマゾンは今回、出店者の自社物流を支援するサービスをヤマト運輸と発表したが、「FBA」において「RSL」やヤフーとヤマト運輸の「フルフィルメントサービス」に対抗する動きは、まだ見せていない。

今年7月には年内に東京、埼玉、千葉の計5カ所にデリバリーステーションを開設すると発表した。それに伴い、配達を担う数百人規模の「Amazonフレックス ドライバー」の募集も開始した。都市部ではより網目の細かい配送網を構築している。

こうした独自の配送ネットワークの構築に合わせて、さらに優位性のある運賃やサービスを提示してくる可能性はあるだろう。

ある物流会社は、「アマゾンはプライスリーダーのポジションを譲らないだろう。すべての費用で下回るのではなく、ボリュームの大きいサイズだけ最安値を出してくるような動きがあるのではないか」と予測する。

ヤフーは現在、ヤマト運輸と手を組み、物流サービスを提供している。ヤフーの親会社であるソフトバンクグループが物流会社を抱えていることは着目すべきことだろう。どこかのタイミングで、最新の技術を用いた物流網に投資を加速する可能性はある。

楽天は日本郵便と合弁会社を設立し、物流サービスの再構築、再強化を進めている。日本郵便が佐川急便との連携を発表したことも、楽天の物流サービスに影響を与えるかもしれない。


2021年3月に資本業務提携を発表した楽天と日本郵政は物流の新体制を構築

連載の2回目以降では、各モールの戦略や動向について、より詳細に分析する。



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