実績で大手企業の不安を払拭
――大手企業の場合、SaaSの導入に躊躇するケースもある。どのように理解を得ているのか?花岡:SaaSで大規模なトラフィックに耐えられるのか、セキュリティー的に大丈夫なのか、といった懸念を持たれる事業者さまもまだ一定数存在する。その懸念を払拭するために、年間100億円以上の流通がある事業者さまでも問題なく運用できており、大量のデータやアクセスに強い仕組みだと伝えている。セキュリティーにおいても、グローバル企業で高いセキュリティー基準をお持ちのユニリーバさんにも導入できている実績を伝え、ご理解いただいている。
機能面と同時に信頼できる仕組みであることを丁寧に伝えることを心掛けている。
――大手企業でもメインのECサイトで採用されるケースも増えているのか?花岡:メインのECサイトに採用されるケースも増えているし、新規ブランドのECサイトなどから導入が始まるケースも多い。
大手企業の場合、新規ブランドのECサイトでは、既存ブランドで採用しているECシステムをあえて導入しないことがよくある。大手企業の内部で既存のECシステムに対して課題感があり、それを使い続けると、最先端のマーケティングから乗り遅れるという危機感もあるようだ。そういったケースでは、しっかりと対面で対応でき、新規ブランドのマーケティングからバックヤードまでフォローアップできる当社が選ばれるケースが多い。
新規ブランドで試していただき、パフォーマンスやサポートも安心して導入できるということを確かめてから、メインのブランドやECサイトのリプレイスでも選んでいただけるケースも増えている。当社としても、そこを狙っている部分もあり、今後そのような事例が増えていくと思う。
食品やアパレルが増加
――導入企業の商品ジャンルにも変化があるのか?花岡:もともとコスメや健康食品の事業者さまに選ばれることが多かったが、現在はかなりの割合でフード領域のお客さまに導入していただいている。アパレル系の企業の導入も増えており、SKUが多いブランドやサイト向けの機能も随時、アップデートしている。
例えば予約購入機能を提供したり、返品管理機能の開発も着手したりしている。MAツールはどんなジャンルでも使える機能なので、提供を開始したことが総合通販の事業者さまにとってもポジティブに捉えられている。
▲取締役COO 花岡宏明氏――運営面やバックヤードの支援体制も強化しているのか?花岡:その領域もかなり強化している。インフルエンサーなど、ブランドを売る力はすごく持っているが、運営のリソースは全然ないといった際に、バックヤードを全部任せたいというニーズが結構ある。当社も商品の出荷や顧客対応の業務をパートナーシップ企業と共にトータルソリューションとして提供している。
商品企画からマーケティングまでコンサルティングできる従来からの強みに加えて、バックヤードをトータルで任せられるサービスも充実してきたことで、エンタープライズ企業の新規事業の立ち上げなどに刺さっている。
今後、あらゆる企業が物販に参入してくると思っている。そうした際に、物販をゼロから立ち上げるためのリソースを確保する難易度はかなり高い。そういった方々が簡単に物販に参入できる仕組みをトータルソリューションとして提供できるように、さらにサービスに磨きをかけていく。
年内にBIツール提供予定
――今後の機能やサービス強化の予定は?花岡:「次世代EC構想」を2023年中に実現することを目指している。その一環としてMAツールをリリースし、よりBIツールの需要が明確になった。BIを活用することで、お客さまの今の事業状態を全て可視化できる。それを踏まえて、マーケティングやサプライチェーンのソリューションを活用して、こういう施策を実施すれば、この数字が改善するといった提案ができる。
BIを提供することで、「ecforce」だけではなく、ソリューション全体の価値を高めることができる。このBIは今年の目玉になると思う。
オフラインの領域のソリューションも進化させる。昨年、自社ブランドのポップアップを展開し、オフラインの実証実験を実施した。今年の夏には、さらに大々的なオフラインの取り組みを行う予定だ。オフラインのソリューションを提供していくことで、OMO領域の支援体制も強化していきたい。