2023.03.03

電通「2022年 日本の広告費」、ネット広告14.3%増の3.9兆円に 総広告費は過去最高の7.1兆円


その他の媒体別広告費の詳細


・新聞広告費

マスコミ4媒体広告費の内、新聞広告費は3697億円(前年比96.9%)だった。北京2022冬季オリンピック・パラリンピックや第26回参議院議員通常選挙、FIFAワールドカップカタール2022などが広告費の押し上げに寄与したものの、新型コロナ再拡大やウクライナ情勢による経済環境の変化、前年の東京2020オリンピック・パラリンピックの反動減などにより、通年では減少した。

業種別では、「交通・レジャー」が前年比117.8%と、コロナ禍による低迷から回復した。レジャー施設・興行関連のみならず、旅行・宿泊や交通業種も大きく伸び、通年で増加した。一方で、「薬品・医療用品」はシニア向けの薬品を中心に同88.1%、「情報・通信」はコロナ禍の反動でコンピューター類を中心に同91.8%と減少した。


・雑誌広告費

雑誌広告費は1140億円(前年比93.1%)だった。紙の出版物推定販売金額は、前年比93.5%と減少。内訳は書籍が前年比95.5%、雑誌が前年比90.9%となった。一方で、電子出版市場は前年比107.5%と引き続き成長し、5000億円を突破した。紙と電子出版を合わせた出版市場全体は同前年比97.4%で、4年ぶりに前年を下回った(数字出典:出版科学研究所「出版月報」2023年1月号)。

雑誌広告費は、年間を通じて前年を下回る結果となり、通年で前年比93.1%となった。業種別では、コロナ禍からの回復に伴う行動制限の緩和や国・自治体の全国旅行支援施策の実施などにより「交通・レジャー」が増加した。一方で、雑誌広告費シェアの高い「化粧品・トイレタリー」は前年に続き減少した。


・ラジオ広告費

ラジオ広告費は1129億円(前年比102.1%)と通年で前年を上回った。業種別では、コロナ禍からの回復を受け「ファッション・アクセサリー」(前年比122.5%)と「外食・各種サービス」(前年比113.4%)、および前年に続き「化粧品・トイレタリー」(前年比117.3%)が大きく増加した。


・テレビメディア広告費

テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連)は、1兆8019億円(前年比98.0%)だった。地上波テレビ(1兆6768億円/前年比97.6%)においては、番組(タイム)広告費は、北京2022冬季オリンピック・パラリンピック、FIFAワールドカップカタール2022、および国内のプロ野球、プロゴルフトーナメントなどの大型スポーツ大会や各種イベントが放送されたものの、東京2020オリンピック・パラリンピックやFIFAワールドカップカタール2022のアジア最終予選などによる反動減を打ち消す需要増には至らなかった。地域別では、通期で大阪地区、名古屋地区、福岡地区が前年を上回った。

スポット広告費は、1~3月期は人材領域の出稿がけん引し「外食・各種サービス」が好調だった。しかし4~6月期は「情報・通信」が低調となり、半導体不足、ウクライナ情勢による原材料高騰の影響も加わり、7~9月期まで同様の状況が続いた。10~12月期は、「外食・各種サービス」の好調に加え、半導体不足の影響を受けていた「自動車・関連品」で復調の兆しがみえたものの、「情報・通信」の低調を補うレベルには至らなかった。地域別では、通期で基幹8地区全てが前年を下回った。

衛星メディア関連(1251億円/前年比103.5%)においては、通販市場が引き続き好調に推移。スポット需要も増え、前年を上回った。BS新3局はBSメディアの活性化に寄与した。


・屋外広告

屋外広告は2824億円(前年比103.1%)だった。人流回復の傾向が顕著になり、それに伴い広告費も堅調に推移した。都市部を中心に出稿は回復し、ラグジュアリーブランド、エンターテインメントなどの業種を中心に広告需要が高まった。長期看板は、繁華街に設置された大型媒体で広告主の変更や契約延長などの需要が高まった。短期看板や短期ネットワーク看板、屋外ビジョンは、繁華街で目立つ大型のインパクト型OOH媒体に需要が集中し、増加した。3Dコンテンツ放映は前年に続き話題となった。


・交通広告

交通広告は、1360億円(前年比101.0%)だった。鉄道は、ポスター、デジタルサイネージともに、前年に続きネットワーク系媒体よりも主要駅で人流が多いロケーションに設定されたインパクト型OOH媒体に需要が集中した。全国的に大型デジタルサイネージは前年を上回った。空港は、国内線は緊急事態宣言に伴う移動制限が解除されてから、わずかに回復したものの、外国人入国制限により旅客数の回復が遅れ、国際線は前年より減少した。タクシー広告は、サイネージ広告を展開できるタクシー会社の新規加入もあり、前年に続き増加した。


・折込

折込は、2652億円(前年比100.8%)だった。巣ごもり・在宅需要を後押しする媒体として引き続き活用され、9月までは前年を上回る水準で推移した。10月以降は電気代や紙代をはじめとするエネルギーや原材料などの経費高騰により販促活動が減少し、低調となったものの、通年では前年を上回った。業種別では、スーパーやホームセンター、家電量販店を含む流通・小売が増加した。サービス業は前年に続き買い取り業者が好調。旅行・ホテルも大幅に回復した。メーカーは前年に続き通信販売が好調で大きく増加した。金融・保険に関しては前年並みに留まった。


・DM(ダイレクト・メール)

DMは、3381億円(前年比98.1%)だった。個人用の在宅向けDMや、BtoB営業目的のオフィス向けDMなどの広告需要が一巡し、減少した。外出自粛の緩和に伴い、観光・旅行などの交通・レジャー関連や、通信販売、金融・保険などは増加した。前年に続きデータマーケティングを活用したパーソナライズDMやデジタル施策と連動したDMが多くみられた。無宛名便DMは、公告や各種告知物などを中心に、インターネット広告やマスメディアなど他のメディアではカバーしきれない層へのアプローチ手段として活用が進んだ。


・フリーペーパー

フリーペーパーは、1405億円(前年比97.4%)だった。第26回参議院議員通常選挙の関連広告が大きく寄与した。一方で、依然として新型コロナや物価高の影響は続き、金融、住宅・不動産、求人情報、グルメ・飲食などの業種が回復したものの、発行部数や発行頻度の減少に伴い、前年比97.4%となった。地域情報を主体としたフリーペーパーは、発行地域での飲食店、商業施設、百貨店などの集客を目的とした広告に回復の兆しがみられた。


・POP

POPは1514億円(前年比96.2%)だった。広告主にとって費用対効果の高いデジタルサイネージやスマートフォン利用施策に代表される双方向コミュニケーションツール、リアル店舗の強みを生かした体験型のPOP施策などの活用が見られたものの、全体的に実施数が減少し、広告費は前年を下回った。


・イベント・展示・映像ほか

イベント・展示・映像ほかは、2988億円(前年比92.5%)だった。イベント領域は、前年の東京2020オリンピック・パラリンピックの反動で1233億円(前年比89.9%)と減少した。展示領域は、各種展示会の開催や百貨店、複合型商業施設、企業PR施設、テーマパークなどのエンターテインメント施設の新装・改装、催事などにより広告需要は高まったものの、全体としては減少した。映像関連は、オンライン展示会やWeb講演会・セミナーなどに付随する配信動画、商品サービス紹介などの制作需要は前年に続き高まった。シネアド(シネマ・アドバタイジング)は、映画館が営業を再開し、話題作が数多く公開されたことで、ラグジュアリーブランドの広告需要が高まった。


「日本の広告費」市場には含まれない、その他、広告関連市場としては、商業印刷市場が1兆7750億円(前年比99.7%)だった。商業印刷市場のうち、ポスター・チラシ・パンフレットの印刷市場は、1兆650億円(前年比99.5%)とわずかに減少した。原材料費(用紙・インク・版など)やエネルギー関連コストの高騰により、印刷会社各社が価格転嫁を実施したものの、印刷ロットの減少やサイズダウン、実施回数減の影響を受け広告費も減少した。

ポスティング市場は1387億円(前年比108.1%)だった。前年に続き新型コロナの影響や代替媒体などで全戸配布の社会的需要が継続し、1387億円と増加した。官公庁・自治体関連の配布物や公告などの引き合いは継続。主要都市圏を中心に地域の求人情報、グルメ・飲食、塾・教育、住宅・不動産、宅配などが増加した。

DM制作関連市場は1103億円(前年比103.0%)だった。対人営業の代替手段やリモート営業の販促ツールとしてDMが活用され、企画制作作業が前年より増加した。さらに、データマーケティングをはじめとした作業運用費も増加した。







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