2023.01.23

【<記者座談会①>2023年のEC市場を読み解く】2022年を振り返る 戦略や分野別の動向は?


今年も「日本ネット経済新聞」の記者が集まり、EC業界の現状や、EC市場の展望について語った。2022年を振り返りつつ、2023年の課題や注目ポイント、期待する取り組みついても活発な意見が飛び交った。コロナ特需が陰りを見せ、円安によるコスト高や景気の悪化、さらなる規制強化など暗雲が立ち込める中、記者たちが見つけた”光明”はどこにあったのか。




【2022年の市場動向は?】

攻めより守りの動きが顕著

 
手塚:2023年のEC市場を展望する前に、2022年のEC市場は振り返りたい。後藤記者はどう見ているか?

後藤:EC事業者が売り上げよりも利益の確保に動いた1年だったと思っている。新規顧客を獲得するより、既存顧客を育てていくことに注力する事業者が多かった。

手塚:コロナ禍の追い風が止んできて、さらに仕入れ高や原油高など全体的なコスト上昇により、利益が生み出しにくくなっている。攻めというより守りに動いた事業者も多かったかもしれない。星野記者はどう見ているか。

星野:後藤記者の言う通り、利益確保に動いている会社が非常に多く、新規顧客を獲得しようとする動きは少し弱まったかなという印象がある。一方でリアル回帰が進み、店舗とECをひも付けるOMOが進んだという話をよく聞くが、自分としてはあんまり実感がない。どういう企業がOMOを積極的に進めたのか。

手塚:一番分かりやすいのがユニクロだと思う。スマホアプリで実店舗の在庫もECの在庫も確認でき、ECで買ったものを実店舗で受け取ったり、実店舗の在庫商品をアプリから取り置きして、来店して試着して買ったりすることができる。リアルとネットのシステムが連携・統合されており、それぞれの良さを生かしたシームレスな顧客体験を実現している。ユニクロはセールなども実店舗とECで連動しており、私もよくアプリでセール情報を確認し、欲しいものがあったら、外出していれば実店舗で買い、家に居ればECで買ったりしている。

そのユニクロの柳井正社長が決算説明会で「オフラインでできることがオンラインでも再現できるようになった。今後はオフラインでしかできないものをもっと強化する」と宣言していた。実店舗ならではの地域性や密な交流を生かして、ユニクロの存在感をもっと発揮し、顧客との関係性を深めることでECの利用も促進していくのが狙いだと思う。リアルとネットの仕組みを統合していくとともに、それぞれの強みをさらに強化していく動きは、今後さらに進みそうだ。

手塚:ライブコマースを活用する事業者は増えたか?

後藤:ライブコマースはおそらく、2023年にもっと本格化すると思っている。EC事業者がコミュニティー戦略を強化し、顧客のロイヤルカスタマー化がより進んでいった段階でライブコマースの活用が進む流れだと思う。

手塚:後藤記者の言うとおりライブコマースで成果を得るには、もともと顧客基盤がないと難しい。リアル店舗やSNSなどで自社のブランドのファンをいかに増やせるかが重要だ。ファンを集めた上で、ライブコマースを導入することで、顧客のLTV向上につなげられると思う。メタバースなどのテクノロジーも同様で、新規顧客との接点を期待すると思うが、自社で顧客を集めることができないと厳しいと思う。

佐藤:韓国食品を販売する大象ジャパンが毎月、「楽天市場」内でライブ配信をやっている。出演するのは社員ではなく、インフルエンサーを起用しているが、ファンが増えているそうだ。商品によってはすぐに完売することもあるという。

手塚:「Qoo10」のライブコマースもかなり視聴者や注文を集めていると聞いた。韓国商品のような、そのジャンル自体にファンがいると、お客さんも集めやすいのかもしれない。そういう場合は、新規顧客の獲得にもライブコマースは生かせそうだ。

佐藤:韓国では人気のある個人がライブコマースで販売して、即完売になるようなケースもあると聞いた。漁師が海で釣った魚をその場でライブ配信しながら売るような使い方もあるそうだ。

手塚:中国でもそういう話を聞いたことがある。日本でももっとライブコマースの活用法は広がりそうだ。



<記者が考える2023年のキーワード>


▲手塚康輔記者

「新領域への挑戦」

少しずつEC市場に閉塞感が漂う中、新たな「マーケティング」「商品分野」「国・地域」に挑戦する勇気が問われる。


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