2023.01.23

【<記者座談会①>2023年のEC市場を読み解く】2022年を振り返る 戦略や分野別の動向は?


【注目分野別の2023年動向】

食品が拡大、苦戦する分野も


手塚:コロナ禍で食品カテゴリーが伸びたと思う。秋葉記者はどうみているか?

秋葉:消費者が生鮮品をネットで買うという行動は、だいぶ根付いてきたと思う。食品宅配に比べるとECはそれほどコロナ禍の反動は大きくなく、2022年に新規参入する事業者も出ている。消費者が利便性を理解し、ニーズが高まっているという印象だ。

ネットスーパーも一時期は苦戦しているというイメージがあったが、コロナ禍で消費者のニーズに応えられるようになってきている。イオンも好調のようだし、サミットも再開するなどマーケットも拡大基調だと感じている。

手塚:他のカテゴリーだと、コロナ特需の反動で苦戦しているところも目に付く。食品系はまだ右肩上がりなのか?

秋葉:例えばイオンはネットスーパーにかなり投資しており、専用倉庫を開設するなど、力を入れている。儲かりにくいと言われていた生鮮でも、ニーズを捉えて、しっかりと儲けようという動きになっている。

手塚:冷凍食品の方はどうか?

佐藤:成長が続いている。コロナ禍においてスーパーでも保存が利く冷凍食品は人気だったが、ECで家まで届けてくれて、しかも最近は栄養価の高い商品も多く、そのメリットが広まりつつある。冷凍便で届くので送料は高いが、それでも買うメリットを感じている消費者が増えている。

起爆剤になったのはおそらく「nosh(ナッシュ)」だったと思うが、2022年に「三ツ星ファーム」などが台頭してきた。大手冷凍食品メーカーのEC参入も増えており、高級志向の商品も出てくるなど、市場が進化している。

手塚:昔の冷凍食品というと、安さが売りで「一日いくらで生活できます」みたいなのを売りにしていたと思う。今は機能性や品質が上がっているようだ。他のカテゴリーの動きはどうか?

後藤:低単価のシューズを販売するヒラキが、羽毛布団を販売していることに驚いた。価格は6000円超なので、羽毛布団としては安いが、ヒラキの取り扱い商品の中では高単価になる。これがよく売れているそうだ。商材をズラすことで客単価の上昇に成功した例だと思う。

手塚:仕入れや原料のコスト上昇により、既存の商品を値上げしたくても難しいケースがある。目先を変えるのも一つの手だと思う。健康食品や化粧品はどうか?

星野:健康食品や化粧品は、数年前からCRMを重視する流れが強くなってきている。これはコロナ禍とは無関係で、人口が減少しているので、すでに顧客の奪い合いが進んでいる。

コスト上昇の対策としては、ポストに入るサイズのパッケージを採用して送料負担を減らす事業者などが増えている。コールセンターの応対数を減らすために、LINEで顧客対応したり、チャットボットを導入するケースも多い。

一方、業界大手のサントリーウエルネスに取材したら、やっぱり電話の施策はかなり重点的に取り組んでいた。コストを意識して顧客対応を自動化する企業もあれば、電話対応を強化している企業もあるようだ。

手塚:健康食品や化粧品は行政の規制強化や広告のルール変更などの影響もあると思うが、その辺はどうだったか。

星野:広告では、行政の規制も強くなっているが、グーグルやヤフーなどのプラットフォーマーの審査が厳しくなっている。例えばグーグルが2022年の春先に「美白」という広告のワードを禁止すると発表した。「美白」が使えなくなるのは結構、業界にとっては衝撃的だったようだ。ただ、今でもGoogleで「美白」と検索すると、「美白」をキーワードにしているリスティング広告が出てくるので、実際にどれくらい規制されているかは不透明だ。ただ、発表しているので、今後は間違いなく規制が強まっていくと思う。

他には消費者庁がアフィリエイト広告に対する指針をまとめたり、ステルスマーケティングに関する指針をまとめたりしており、今後、じわじわ効いてくる規制がたくさん動き出しているという印象がある。

手塚:コロナ禍の追い風が止み、コスト高や規制強化が進んでいるというのは、EC業界にとっては見通しが明るくない動きだ。23年はより厳しい競争が待っているかもしれない。



<記者が考える2023年のキーワード>


▲秋葉恭庸記者

「選ばれるECへの分岐点」

コロナ禍の「ECへの追い風」も一巡した。2023年は、「消費者に選ばれるECサイト」になれるかの分岐点になる。








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