消費者庁は2月9日、改正特定商取引法に関連して、「通信販売の申し込み段階における表示についてのガイドライン」を公表した。6月1日の改正特商法の施行に合わせて運用が開始される。ガイドラインでは、ネット通販の商品購入時の最終確認画面において、支払総額や請求時期、発送時期などについて、消費者にとって分かりやすいよう一覧で明記するよう規定している。2021年11月の意見募集の際に公開された原案が、大筋で維持された形だ。消費者庁は同日、全てのEC事業者に対して、自社のカートシステムの、最終確認画面の契約事項の表示を確認・改修する必要がある旨の注意喚起を行った。
2021年11月から12月にかけて実施された、同ガイドラインに関する意見募集では、各業界団体から、「ほとんどの通販事業者のシステムに何かしらの改修が必要だ」「多くの事業者に、特商法が施行される6月1日までの短い期間で、コスト負担が発生する」といった声が寄せられていた。今回公表されたガイドラインでは、こうした課題は解消されないまま残された。
ガイドラインでは、消費者を誤認させないための表示の具体例などが示されている。
例えば、ガイドラインでは、「最終確認画面において表示を行う際には、表示事項について当該画面上で分かりやすく表示すること」を求めている。定期購入契約の場合は、「各回の代金（2回目以降の代金が異なるような場合、各金額を表記）」「消費者が支払うこととなる代金の総額」「割引価格から通常価格への移行時期や金額」などを、明確に表示しなければならないとしている。
無期限のサブスクリプションの場合には、「その旨を明確に表示する」「一定期間を区切って分量を明示する」ことなどを求めている。
ただし、申込確認画面に必要事項を全て記載することが難しい場合は、消費者が明確に認識できるような、リンク表示による参照ページやポップアップなどで、当該事項を表示するなど、「容易に参照できるようにする」方法も認めている。
購入期限のカウントダウンセールや、期間限定のタイムセールなど、「一定期間を経過すると消費者が商品自体を購入できなくなる」売り方を行う事業者も注意が必要だ。取引を行う際に「申し込みの期間に関する定めがある」場合、具体的な期間を明記する必要があるとしている。「今だけ」といった表示では不十分だとしており、具体的な期間の表示方法として、「商品名欄等において商品名に併記する方法」「バナー表示を置く方法」「リンク先や参照ページ、ポップアップなどで表示される画面等に詳細を記載する方法」などを例示している。
ガイドラインでは、解約手段を特定の方法に限定する場合、最終申込画面に明記しなければならない旨も規定している。例えば、申し込みはECサイトから行ったのにもかかわらず、解約方法をLINEに限定する場合などは、その旨を記載しなければならないとしている。解約方法を電話にしている場合は、確実につながる電話番号を掲載することも規定している。
「お試し」や「トライアル」といった、一般的な契約ではなく試行的な契約であると消費者が認識してしまう可能性のある表示をしていた場合、実際の契約が定期契約となっていた際には、違法となる可能性があるともしている。ガイドラインでは、違法になる可能性がある表示の例も示している。
消費者庁によると、今回公表されたガイドラインに違反する行為を行っていた場合、消費者庁や地方経済産業局が行う行政処分の判断要素となりうるとしている。改正特商法では、消費者が誤認をして意思表示をした場合は契約を取り消すことができる「取消権」を設けており、違反行為は取消権の対象になる可能性がある。違反行為に対して、警察が特商法に基づいて逮捕・起訴を行った場合、100万円以下の罰金が科される可能性がある。改正特商法では、必要な表示をしていない場合や虚偽の表示を行った個人には3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人には1億円以下の罰金が科されると定めている。
◆消費者庁「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン【令和４年２月９日付通達別添】」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/assets/consumer_transaction_cms202_220209_07.pdf◆事業者向けチラシ「貴社カートシステムでの改正法への対応について」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/assets/consumer_transaction_cms202_220209_11.pdf 
