2024.01.15

【有識者に聞く!2024年のEC市場展望】JECCICA 川連一豊代表理事「『単なる一元化』の次の仕組み作りが必要」

テーマ:「OMO」


一般社団法人ジャパンEコマースコンサルタント協会(JECCICA)の代表理事であり、フォースターの代表取締役を務める川連一豊氏は、ECシステム開発を長年手掛けている。仕組みの上で未成熟な、日本における「OMO/オムニチャネル」の課題や対処法を川連氏に教えてもらった。



日本ではオンラインとオフラインの統合のことをOMOと言い、マーケティング手法の一つとされている。米国ではOMOとは言わず、オムニチャネルというキーワードが使われている。米国でオムニチャネルと言えばウォールマートが有名だ。

2023年11月の感謝祭からブラックフライデー、クリスマスの状況データから見ると、米国全体の流通額が7.9%増という数字も出ている。その中でウォールマートの大きな店舗網を活用して、プレゼントを探したり受け取ったりするための直前オプションを追加している。クリスマス間近の買い物客向けには、12月24日午後4時までの注文で、同日深夜0時までのカーブサイドピックアップと配送を用意していた。

米国のターゲットでは、クリスマス・イブの午後6時まで、カーブサイド注文とオンライン購入、店舗でのピックアップ(BOPIS)注文ができるようにしていた。配達による注文の締め切りは12月24日午後4時で、ターゲットのShiptサービスによる配達は最短1時間としている。

日本でも、「物流の2024問題」を考えると、オンラインとオフラインの活用は必須となる。うまくリアル店舗やオフライン資産の活用を考えていくことが重要な要素になる。

ただ、日本の場合、まだまだOMOやオムニチャネルに必要なシステムや仕組みができていないといえる。これが多くの企業の悩みとなっている。ERPのサポート問題や、システムの移行に必要な人材がいなかったり、バラバラな合体ロボのようなシステムをどうやって作り直すのか、改善するのかなど課題が多い。

特に人の入れ替えが激しい企業や組織活性化のための人事異動が多いとドキュメントがない、最新版の文書がないといったケースもあり、いったい中身がどうなっているのか、内容を理解するだけで1年以上かかってしまうことも多々ある。

今後のOMO戦略を考える上で、自社の戦略に合わせた仕組み化、システム化がどうしても必要になる。特に自社独自の戦略は大きく売り上げに影響するため、その仕組みはオリジナルになってしまう。

例えば、サプライチェーンシステム間の相互運用性や最新の目的別在庫・目的別受注管理、最初に解決すべき在庫と発注の課題、そしてユーザー動向によるマーケティングの仕組み作りなど多くの課題がある。ここを乗り越える施策を考えておかないと、うわべだけのOMO、オムニチャネルになってしまう。

顧客のことを第一に考え、シームレスな購入体験を提供するためには、以前より課題が多くなってくる。単に在庫一元化、受注一元化、商品情報一元化などだけでは、勝てない時代になってきた。

今後のAIの進化、中国越境ECソリューションサービス、Amazonのますますの拡大などを考えると、ガラパゴスで守られていた日本のECはかなり”ヤバい”状態になると予想できる。そう考えるとリアルを利用したOMOは自社の事業を守り、伸ばすには重要なファクターになり得る。

単なる一元化から次のOMOを考え、いかに早く仕組みを構築化できるかが勝負になるだろう。







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