2024.01.15

【〈記者座談会〉2024年のEC市場予測】《① OMO》「体験」付加価値にしたECが拡大


2023年は、アフターコロナでリアル消費に回帰する機運が高まった。EC専業の企業にとっては向かい風となる中、実店舗を持つ企業は、ECと実店舗での購買を融合させるOMO(ネットとリアルの融合)の取り組みを活発化させるケースが目立った。2024年もOMOの取り組みは加速しそうだ。人手不足やトラックドライバーの残業規制、エネルギーコスト高騰などによる配送費や物流費の値上げの動きも止まらない。政府による広告規制も追い打ちをかける。日本ネット経済新聞の記者が、「OMO」「物流」「法規制」をテーマに、2023年を振り返りつつ2024年の予測を語った。追い風のEC市場で、注目すべきサービスや事業者についても紹介する。


手塚:2023年は「リアル回帰」を迎えた。「ECからリアルに顧客が流れる」傾向が顕著だった。逆に、「リアルが盛り上がった分、リアルからECへ顧客を持っていきたい」という狙いで、ECとリアルを融合させるOMOの取り組みも、より一層進んだ。後藤記者はどうみているか。

後藤:アパレル企業を中心に、OMOの取り組みが進んだと思う。インテリアのEC市場においても、OMOの展開が目立った1年だったと感じている。

永井:化粧品EC市場ではリアルと連動したコンテンツを発信する企業が多い。アイスタイルの実店舗では、美容部員がライブコマースを実施しており、平均の視聴回数が数千人と好評だそうだ。

大手がECに本格進出し、店販・ECのノウハウを活用しつつ、OMOのサービスやコンテンツを提供し始めている。大手がOMOサービスのレベルを引き上げており利用する消費者の基準も上がったと感じている。

手塚:テナントによっては、店舗からのライブコマースが行えないケースも少なくないようだ。最近では、店内からライブコマースをすることをあらかじめ織り込んで店舗を作る企業も増えている。

永井:ライブコマースの分野では越境EC・インバウンド向けのOMO施策も登場してきている。2023年1月にオープンした、羽田空港国際線ターミナル・到着ロビー直結の商業施設「羽田エアポートガーデン」には、ライブコマーススタジオを完備した店舗もある。

手塚:OMO展開に適した店舗・施設を設けるデベロッパーもいるようだ。空港というと、上山記者もANAを取材しているが、OMOの展開はどうか。

上山:コロナ禍が明け、出張者など空港の利用者が戻ってきた。そうした背景を踏まえANAでは、全日空商事のECサイト「A‐style(エースタイル)」と、空港の実店舗「ANA FESTA(アナフェスタ)」を連動させた店舗を日本国内向けに開設した。2023年10月には、事前にECで決済した商品を出張先の空港でピックアップできる取り組みが始まった。

手塚:旅行者も増えている。「旅」の分野でもOMOが進むだろう。いずれにせよ「OMO」というワードが一般的になってきたと感じている。以前は、「オムニチャネル」という言い方が多かった。「オムニチャネル」は、「ネットとリアルで同じものが買える」というような曖昧な定義だったのではないか。主に、「在庫を統一化する」点が重要で、物流の取り組みを指していたとも思う。

そこから、会員データを連携する動きも進み、販促においてもリアルとオンラインで連動させるなど、施策として展開が拡大していった。スタッフがオンラインで発信するようなコンテンツは、アパレル業界ではすでに定番の取り組みとなっている。ライブコマースを精力的に行うブランドも多い。

「リアル回帰」を迎えた現在も、店舗スタッフのオンライン活用は継続しようという流れだ。参加人数は増え続けており、2023年に目立った変化の一つといえるのではないか。



<記者が考える2024年のキーワード>


▲手塚康輔記者

「勝てる領域を見極めろ」

EC市場の成長が鈍化している。これまで通りだと成長は継続できない。勝てる領域にリソースを集中すべきだ。


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