2024.01.15

【〈記者座談会〉2024年のEC市場予測】《① OMO》「体験」付加価値にしたECが拡大


今後は「通常の店舗」が「OMO店舗」に


黒田:そごう・西武のOMO型ストア「CHOOSEBASE SHIBUYA(チューズベースシブヤ)」など、無人店舗も活性化した印象がある。

永井:同ストアは2021年、東京の西武渋谷店内にオープンした。店舗内で商品のQRコードを読み込むと、専用のECサイトから商品を購入でき、好評だと聞いている。ニーズの高さを受け同社は2023年9月にも食のOMOストアをそごう千葉店内に開設した。

手塚:無人店舗は、リアル回帰で人流が増えている点に対応できる上、よりコストを抑えたいというニーズにも応えられるだろう。2024年の市場予測についても聞きたい。後藤記者はどうみているか。

後藤:インテリア分野ではベガコーポレーションが積極的に動いている。同社では2023年4月、「LOWYA(ロウヤ)」初の直営店として福岡店をオープンした。オープンの際は多くの人が訪れたという。福岡店はOMOのスタート店。完成形ではなく今後の出店拡大を通して完成形に近づける計画のようだ。

ECで売る力が強いベガコーポレーションだが、彼らが本当に強いのはSNSなどで顧客としっかりコミュニケーションが取れている部分だと思っている。現在はコミュニティーも展開しておりSNSの基盤を店舗にも落とし込めている。店舗を展開したエリアのEC化率に変化が出ているというポジティブな話も聞いている。確実に成果が出ており今後の動向が楽しみだ。

手塚:ベガコーポレーションは来年以降、どんな店舗を展開していくのか?

後藤:OMOの取り組みを行う実店舗は、大阪・難波や、2024年春頃に名古屋への展開が決まっている。通常インテリアの店舗では、空間の広さやスタッフ数などの制約があり、長期間レイアウトが同じであることが多い。一方、同社の店舗の設計は、スタッフが定期的にレイアウトを変えていくという。

手塚:日々コンテンツや見せ方を変えている、ECサイトのような取り組みとも言える。

後藤:ECサイトの動きや、季節、特集などに合わせつつ、仕掛けていくのだろう。

他のインテリアのEC企業でも、積極的な店舗展開が続いている。店舗での接客や、「実物を触る」といった体験に、主眼が置かれているようだ。2024年は、各社からこうした情報が多数出てくるのではないか。

手塚:インテリアのEC化率は10%に満たない。店舗があることで周辺エリアの顧客との接点が増え、ECにも流入する可能性がある。永井記者の2024年の市場予測は?

永井:化粧品ECにおいては「リアルで接客するとLTVが上がる」とされている。アフターコロナになり今後一層EC事業者によるリアルの接点作りが活発化していくだろう。

手塚:アパレル大手では、試験的にOMO型店舗を展開していた。アダストリアやベイクルーズなどのOMO型店舗では、デジタルサイネージを設置し、ECのコンテンツを配信したりしていた。

恐らく今後はOMOとうたって新店舗を作るというよりは、「通常の店舗がOMO型店舗」になるのではないか。店舗リニューアルや新規出店の際、オンラインとの連動も見据えながら行うようになると考えられる。

店舗スタッフについても、OMOの取り組みが当たり前になっているように思う。オンラインでは、普段からライブコマース・ライブ配信などでつながり、リアルでは、よりリッチな体験を提供するといったケースが、今後さらに増えていくだろう。


「利便性」「限定感」「体験」がキーワード


手塚:上山記者の2024年予測は?

上山:先ほどの空港のOMOサービスの事例のように、ユーザーの利便性を高める施策や、活用の仕方は、今後増えていくとみている。

手塚:確かに、「利便性」「限定感」など、リアルの価値が土台にあって活用されるECが、さらに増えていく可能性を感じている。例えば、ディズニーランドも専用のアプリがあり、パーク内に入っている人だけ使えるECサイトがある。「パーク限定のキャラクターグッズをお土産で購入したい」という人は多いが、「購入列が長く、時間がかかる」「荷物になる」といった負の部分がある。そこを解消するために、パーク来場者専用のアプリECが活用されている。

手塚:EC業界を取材していると「体験」というキーワードを聞く機会が増えているのではないか。コロナ禍では、体験が抑制された。今、そうした制限から解放され、ようやく外で「コト消費」ができるようになった。より、「体験の魅力」を感じ始めているのではないか。「体験を付加価値にしたEC」も今後も増え続けるだろう。



<記者が考える2024年のキーワード>


▲永井愛理記者

「ECサービスの水準が向上」

コロナ禍を経て、OMOなどを含め、消費者に提供されるECサービスの水準が向上。今後標準化するだろう。




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