2024.01.16

製造小売企業が、リアル店舗、通販、デジタルコマースを活用して成長するポイント


リアル店舗や通販、ECといった多様な販売チャネルが当たり前となる中で、製造小売業はどのような事業戦略を選択すべきなのか。鍵は「データ」と「顧客体験」にあるが、それを効果的につなげ、具現化するには、システムを整える必要がある。製造小売業がオムニチャネル時代で成長するためのポイントについて、コンサルタントで富士ロジテックホールディングスの顧問を務める吉村典也氏と、東計電算 ecソリューション部 部長 菅沼康洋氏に聞いた。



――製造業や小売業の事業環境について、どのような課題があるのか。また、それを解決して成長している企業はどのような取り組みをしているのか、お伺いできればと思っています。

吉村:製造・卸:流通・小売販売の「縦軸としての融合」や「中抜き」も進みつつあります。それは、アパレルでも食品でもあらゆるカテゴリーで進んでいるトレンドです。

しかし、デジタルなどの非対面のコマースチャネルだけは、成長の限界があることも認識されつつあります。

あるべき姿としては、店頭でくみ取った顧客のニーズをもとに、小売から、原材料・製造メーカー、物流:配達方法、そして販売チャネルとサブスクモデルなどのサービス提供方法までを顧客中心でデザインすることのはずでした。

これまでの、格好のいい響きであったサプライチェーンは、実は大変そうで誰も手をつけなかった領域でもあります。

勘と経験で、売上目標という希望で、モノを作って配送し、売る場所-チャネルを迷走して探していました。

小売業だけではなく、製造業もプロセスを融合して、「お客さまが、これを欲しがっているから、作って、最適価格でお届けする」と考えていたのが、小売で、デジタルコマースではD2Cであったはずです。

デジタルにより、製造業が小売を通さず、自社の商品を直接お客さまにお届けすることが簡単になりました。必ず売れるわけではないですが、製造業も小売へ進出しているのが現状だと思います。

このような環境のなかで、コマース事業の展開はより競争が激しくなっていることや、それを支えるための、人材の問題はより複雑化していますし、関与する組織の数も増えていきます、そしてシステムの数は増えつつづけいるというのが現状ではないでしょうか。

ーー実際の企業トレンドについてお伺いさせてください。

吉村:製造小売が販売チャネルを拡大するステップとしては、

1:リアル店舗のビジネスを見直し、強化する
2:ダイレクトマーケティングを、強化する
3:デジタルコマースへ、地域で認められたブランドとして展開する

があります。

まず、はじめにリアル店舗のビジネスについてですが、製造業であれば、イベントや工場直売、直売店舗などの資産、小売であれば店舗を活用して再成長するポイントは3つです。

1:顧客データを活用する
2:顧客データ=顧客の声から商品を開発する
3:顧客と商品を開発するのは、顧客に一番近いスタッフなので育てる

ことです。

顧客データを集めて、預かって、共有=コミュニケーションする方法はこの時代ですので、リアル店舗での接客から、SNSやLINEも含めて様々な方法があります。

これは、スタッフが顧客と接して顧客視点でのニーズを汲み取っていくことで、伝統だけではない新しい視点=訴求を持った商品を開発したり、リブランディングしたりできます。

先ずは、基本の地場(地域の商圏)での力=顧客からの支持が得られていないと、デジタルへ進出してもUSP(自社の製品・サービスが持つ独自の強みである、その商品やサービスのみが顧客に提供できる価値)や社会的証明がないので成功するためにはとても費用と努力がいります。

――D2CのSNSでのコミュニティマーケティングと同様に先ずは顧客とつながって知るということですね。その次のステップはいかがですか?

菅沼:私たちは、通販の業務管理システムを、年商10億円を越える企業などへの提供を通じて、全国の企業の事業の効率化をお手伝いをしてきました。

ここ、10数年で変わってきたこととしては、ダイレクトマーケティング(通販ビジネス)へ拡張する際に、顧客の購入の理由と仕方が多様化してきたために、注文処理などのバックオフィスプロセスをよりしっかりと確立、業務手順を迅速に変更することが重要になってきたということです。

ここがしっかりしていないと、デジタルチャネルへ拡張した際に業務が煩雑になるだけでコスト管理などができなくなってしまいます。


アナログでのUIはデジタルでも生きる


ーー具体的にはどのように変化しているのですか?

菅沼:通販はアナログチャネルとして、店頭での注文申込書、郵便でのカタログ発送、電話や郵便での申込がよく知られている方法です。

従来であれば、一斉発送、注文受付が一般的ですので、繁忙期であればアウトソーサーのコールセンターなどを活用するためのシステムの仕様が必要でした。

今では、顧客をセグメントして、レスポンスをシミュレーション計算して、タイミングを調整してDM発送などのコミュニケーションすることで、顧客とのエンゲージメントを高めていくとともに、業務の平準化とマーケティングコストの効率化などとのバランスを取っている事業者が多くなりました。

そのためには、従来の通販業務システムに備わっているRF分析レベルでは不十分であることや、デジタルコマースでも顧客データを活用することが重要になってきますので、マーケティングオートメーションシステムとのコラボ連携が出来ることが必須になってきていることが大きな変化です。

1つ目のポイントとしては、注文処理をするためのアナログデータをシステムにエントリーするための正確性や効率化のために、UIとシステム機能としては、たとえば、入力フィールドにおいて、顧客が以前に入力した情報(例: 名前、住所、電話番号)を、オートフルフィル機能として、顧客の情報(IDとなるKeyデータ)や以前の注文履歴から、注文フォームを自動的に補完する機能を導入することで、注文処理の効率を向上させることができます。

また、過去の対応履歴とアラート機能で、お客様固有の対応を漏らさない事が大切です。

ここでは、類似データ候補や、重複排除、グレー・ブラック情報など顧客情報として普段では気付かない管理ポイント機能の有無や、そして、顧客別の有効なキャンペーン情報や、レコメンド情報が提示できるかは隠れたバックオフィスCXとしての機能ポイントです。

システムの基本機能としては、住所データの正規化や、電話番号の「- ハイフン」のあるなしでも登録検索ができるとかは、顧客やスタッフのUI視点だけで語られていますが、不正検知などにも有効な基本機能でもあります。

2つ目としては、製造小売企業が通販を展開をされている場合の多くでは、店舗と工場と倉庫との、在庫確認と各場所からの出荷業務ができることが不可欠ということです。

そのために、注文処理から、出荷処理までを専任担当以外でもスムーズにできることや、業務負荷調整のために、出荷予定日や出荷バッチを自由に調整できるなどの「現場の人」に優しい業務設計ができることが求められてきています。

3つ目としては、店舗で、コールセンターで顧客を知って、見て、対話したことを顧客データとして登録、活用できることです。

店舗での顧客の判別方法として、スタッフの顔認識だけに頼っていることは無いとは思いますが、従来のプラスティックカードなどでの顧客ポイントカード(会員証かどうかは別として)から、デジタルとしてのLINEやSNSやアプリなどへの移行は進めていくことになります。

そのための、店頭での顧客データ(販売・購買データ以外)をPOSとか、PCで登録して活用していくための機能は求められてきています。

これは、全体の会話から実用的な洞察を抽出することです。たとえば、タグを、情報、サポート、センチメントの 3 つのカテゴリに分類して、そして、その傘下に、あらゆる種類の特定のタグが設定できるとかです。コールセンターではあたり前の機能でしたので、それを店頭での接客でも使えるようにしていくことです。

RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事