2024.01.16

製造小売企業が、リアル店舗、通販、デジタルコマースを活用して成長するポイント


オムニチャネルで成功するためには


ーーマルチチャネルでもデータを活用することができるということですね。チャネルを増やしていくとともに、オムニチャネルを実現することが大切だと言われていますが、事業者さんはどうされていくべきですか?

吉村:そうですね。商品カテゴリーによって顧客の購買行動が違うので自社の顧客がどうなのかを、RF(最終購入日・購入頻度)ではなく目的を持って見ることからがポイントになります。

大きな傾向としては、RFで見れば、どのカテゴリー、チャネルであってもF2転換が一番の壁です。

デジタルではFの回数別に、チャーン(離反)のリスクウエートが高まるポイントがあります。
売上=顧客のチャネルごとの対比は、リアル:4とデジタル:1とかであれば、まずはリアル接客基点が大切と分かります。

そこから、顧客がマルチユースなのか、オムニチャネル購入を期待しているのかを確認します。例えば、コスメなどは、オムニチャネルはほぼ期待できないとかのデータが出てきます。

オムニチャネルを提供すれば、顧客がロイヤルカスタマー化することはありません。ロイヤルカスタマーがオムニチャネル利用しているのが目立つだけなので、顧客中心の購入体験が必要だと分かります。



オムニチャネルには、コミュニケーションと購買チャネルがあります。

コミュニケーションでは、よくEメールより、LINEが良いとか言われますが、顧客にとっては使い慣れたチャネルであることが一番の選択肢です。

よくある間違いとしては、LINE登録やID連携を必須としているケースです。これは顧客にとってのメリットがないことを理解して実施するべきです。

コマースでは、カスタマーサービスとして2つのCSがあります。

ヘルプデスクとしてのカスタマーサポート(CS)、顧客の実現したいことをコンシェルジュカウンセリングするカスタマーサクセス(CS)でのオムニチャネル対応には、複数チャネル横断しているコンタクト履歴をスムーズに見れることをベースに、購買履歴や商品の配送状況などを、カスタマーサポートスタッフで一元管理することです。

それは、顧客の用件を把握するまでを判りやすくすること、問題や用件が理解できた後の応対スキルをサポートできているかがポイントになります。

これが実現できていれば、デジタルでは、セルフサービスのカスタマーポータルとしてコマースサイトでのマイページや、チャット、アプリなどの応対でも活用できるので、顧客にとってのストレスは軽減され、購入後体験としても良い評価になることは理解できると思います。

購買チャネルとして選択の重要なポイントの1つは、価格以外では、顧客にとっての利便性になります。

例えば、サブスクリプション購入の本質では、使用量との残量との関係で購入頻度の手間を省くことが本来の目的で、定期購入の会員になりたいわけではないです。消費タイミングが顧客自身も理解できていないなかで、無理やり1カ月毎に送られても困るわけですから、消費のタイミングをコミュニケーションしてF2転換するサービスも簡単に提供できます。



そして、アパレルやアスレジャーなどのサイズ物は自分のサイズ登録や返品交換が可能なので店頭と同じ安心買いができることなど、Amzonなどの購入体験を知ってしまうと抵抗感や不充足感がでてきます。

これからの購入後体験としては、返品・交換・回収・修理などのリバースロジを活用して再販売・リコマースでの収益化も企業としては見逃せない機会でもあります。

ポイントの2つめとしては、そのチャネルだけや、私だけが購入できる特異性を提供できることがオムニチャネル化のメリットになります。

必ずしも、複数のチャネルで購入できることが目的ではないことになります。

このような事例もあります。

百貨店やショッピングセンターなどの館などのチャネルで商品を販売していたブランドが、自社サイトでコマースを始めました。しばらくして、顧客からの声を基に修理サービスをはじめました。

そうすると、自社チャネルで購入されていない顧客からの相談・依頼が増えてきました。そうなのです、他の流通チャネルで購入されていた隠れたロイヤルカスタマーと繋がることが出来ただけではなく、外部のチャネルでは受けられないサービスへのニーズが隠れていたことに気付かされたということです。

顧客は、従来とおりの購入チャネルとしては「館」を選択するでしょうが、顧客との繋がりができていくということはとても重要な価値でもあります。

ーー現在の市場では、顧客獲得コストが上昇しているため、ソーシャル広告、PPC、その他のデジタル チャネルを通じてターゲット ユーザーにマーケティングを行うには、より多くの資金が必要になります。一度顧客を獲得したら、その顧客を長期的に維持することがさらに優先されます。ここで注目すべき施策の事例はありますか?

菅沼:購入体験が、Amazon化している中で、「定期おトク便」以外では、配送情報を活用した購入後体験でのエンゲージメントを上げていくことも大切です。

私たちは、ヘッドレスコマースでいう、バックエンド側のフルフィルメントを得意としています。日本郵便、佐川急便、ヤマト運輸さんの一体型送り状印刷機能をはじめとして、発送伝票番号からの配送状況を提供できます。

これを活用して、注文受付から配送完了までの見逃されていたコミュニケーションタッチポイントを「配達状況」というキラーコンテンツを活用してCRMチャネルに変えて活用されている企業もあります。

配送完了後は、MAとの連携でパーソナライズされたCRMを、メール・LINEだけではなくコマースサイトでも展開できるとAOV・LTVは確実にアップしていきます。



これは、大手の流通さんのお問い合わせ状況の課題を解決する中で開発して実装してきたサービスでもあります。


オムニチャネルではサービスとマーケは一体になれる


吉村:通販業務管理システムとマーケティングオートメーションの関係でいえば、顧客サービスの情報や顧客とのコミュニケーションは、マーケティングと一体であるべきであることはよく知られています。

これに、最近では、SNSでの顧客ポストをウオッチして不満があればそれをカバーしますし、評価があればUGCなどとして活用しています。

カスタマー サービス チームとマーケティング チームが連携すると、驚きや喜びをもたらす機会をより適切に特定し、それに基づいて行動できるようになるということです。

これは、リアル店舗での顧客との接客では普通にしていることです。このような点からも、製造小売企業はとてもオムニチャネルでの成長の可能性と優位性を持っています。

顧客視点での商売をされてきた人材と経験を活かして成長を実現してください。




【プロフィール】

■東計電算 ecソリューション部 部長 菅沼康洋氏



2001年に東計電算に入社し、お客様とシステムを結びつけるエンジニアとしてのキャリアをスタート。大手配送会社向けのクラウド型送り状発行システムを開発し、500社以上に導入。その後、クライアントのニーズに添って業務範囲を広げ、通販事業者向けのバックオフィスシステムを開発して大手で実施した業務改善ノウハウを中堅・中小向けに構築して提供。近年はオムニチャネル化を進めている製造小売企業の課題を解決するために、バックオフィス機能を活用できる、ECサイトとマーケティングにも力を入れている。2020年に部長に就任。日本一の通販システムを構築し、通販事業者の業務効率改善と売上げ拡大を実現する為、日々奔走している。

<東計電算の事業概要>
https://bit.ly/4a0wlif


■富士ロジテックホールディングス 顧問 吉村典也氏



単品・総合通販ビジネス、テレビ通販会社、Eコマース系事業会社、百数十社へのCX業務を設計、運用サービスのパートナーとして、バックオフィスやフルフィルメントセンターの立ち上げ支援、通販基幹システム、コマースシステムの選定サポートなどを行ってきた。最近では、大手健康食品会社の子会社が自社開発した、「通販基幹システム」のセールス・マーケティングサポートを通じて、従来の100億円超え、100億円を目指す、通販企業さんとの数多くの出会いがある。そして、これらの企業が、これからの顧客に対応できる、ビジネスモデルの変化や、それを支えるデジタルトランスフォーメーションに乗り遅れていることに気付かされたという。新しい日本型の通販・コマースシステム、CRMやCXなどを広めたいと考えて、情報発信や、オムニチャネルシステム:CXシステムの設計から導入、運用支援をしている。

<富士ロジテックホールディングスの事業概要>
https://bit.ly/3uD01SH








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