2023.08.14

【有力通販インタビュー】スクロール 鶴見知久社長「DMSCへ転換、支援事業の成長加速」


スクロールは今年5月、今期(2024年3月期)から始まる3カ年の中期経営計画において、ダイレクトマーケティングソリューションカンパニー(DMSC)への転換を図ると発表した。市場成長の鈍化が予測される通販事業の取り組みを進化させながらも、市場拡大を期待できるEC市場において、物流代行を中心としたソリューションで存在感をさらに発揮する。鶴見知久社長は「当社の3PLにおいて通販・ECへの事業理解の深さが強みになっている」と語る。前期(2023年3月期)の業績の振り返りとともに、DMSCとしての強化策について鶴見社長に聞いた。


――生協組合員向け通販事業の状況は?

コロナ禍に生協の組合員数が伸び、当社の通販事業にも追い風が吹いていた。前期の第1四半期は苦戦を強いられたが、これはコロナ禍の落ち着きによる通販利用の減退が要因ではなく、為替が急激に円安に振れた影響が大きかった。中国のゼロコロナ政策により、生産地がロックダウンしたことで、供給面でも苦戦した。

第2四半期からは、前々期並みに落ち着いてきた。コロナに対する世の中の意識も慣れてきており、下期からは影響はほとんど受けていない。

物価高による国民生活への影響が、生協の食品中心の事業の中にも出てきているようだ。われわれが提供している衣料品や服飾雑貨品に関しては、食品より優先順位は低い。家計が圧迫される中で、決して順調なマーケット状況ではないといえる。

仕入価格の上昇に対応するため、販売価格を見直したり、カタログ用紙代などの値上がりに対応するため、効率的にカタログを配布したりすることで、原価率上昇の抑制や事業効率の最大化を図っている。

――BtoC向けeコマース事業やHBT事業の状況は?

われわれの扱っている商材のマーケットの状況は良くない。ナチュラムが取り扱うアウトドア商品は、コロナ禍1年目に飛躍的に伸びたが、2年目以降に店舗系の事業者が多く参入し、各社が在庫を抱えたことで、供給過多に陥った。ECにおける安売り、値引き合戦が始まった。ナチュラムも厳しいかじ取りを迫られた。

健康食品や化粧品、旅行企画を取り扱うHBT事業は、規模的に小さくなっているため、大胆な施策は打ちにくい状況だ。以前のようにネット広告やリアルメディアで大々的にプロモーションを展開しても、投資に対するリターンが見込みにくい。現在は既存顧客を中心に離脱を防ぎながら、新商品を開発している。


DMSC転換で成長加速


――DMSCへの転換を図る計画のもと、ソリューション事業を中核に据えていくと判断した要因は?

流通小売市場は今後の日本の人口動態を見ても拡大しにくいマーケットだ。一方、EC市場は実店舗からチャネルの切り替えが進んでいる段階なので、まだまだ市場の拡大が望める。当社としてはBtoC向けのEC・通販で培ってきた知見やノウハウを生かし、物流代行(3PL)を中心に拡大してきたソリューション事業をより強化することで、顧客のニーズに応えられると考えた。

――前期のソリューション事業は2桁成長を遂げている。中核である物流代行サービスの状況は?

物流移転はクライアントにとって経営判断となるため、コロナ禍の移動や人との接触に制限がある中で決めていただくのは難しい状況だった。住まいと同様で実物を見ずに引っ越しを決めるのは難しい。物流のニーズは衰えていないが、実行に移すタイミングが先延ばしになっていた。

前期ぐらいからは、その意識は完全になくなり、コロナ前と変わらない状況に戻った。物流移転の検討や決断も進んでいる。

――物流代行サービスの強みは?

通販企業が提供する物流代行サービスであり、深い事業理解が何よりの強みだ。顧客獲得やCRMなど、出荷に至る前の取り組みまで理解し、クライアントの課題解決の提案ができる。物流サービスの品質も高く、多様なサービスを提供できる引き出しの多さも特徴だ。

物流拠点が複数あり、キャパシティーや人材の規模も拡大している。コロナ禍では急な注文の増加にも対応してきた。そのような波動対策も提案できる。


ワンストップが強みに


――物流代行以外のソリューションのメニューも豊富だ。グループで多様なサービスを提供できるメリットは?

コールセンターやBPO、パッケージシステム、決済代行などワンストップでサービスを提供できる。さまざまなサービスを連携して提供できる点が、ソリューション事業の強みになっている。昨年から、EC事業の運営代行サービス「ECACT(イーシーアクト)」も本格提供している。幅広いサービスを提供することで、クライアントの課題も見えやすくなる。

ソリューション事業はさらなる成長を目指しており、経営資源の集中投下により事業成長を加速させたいと考えている。

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