テレビショッピング大手のジュピターショップチャンネルの2023年3月期における売上高は、前期比1.2%減の1555億3800万円だった。ここ数年、新規顧客を獲得するために強化していた新聞への出稿を抑制した影響で、売り上げは微減だった。一方で、営業利益は同7.0%増の190億5400万、経常利益は同6.7%増の194億3600万円と増益を記録した。小川吉宏社長は「前期は変革の1年だった。今一度、原点に立ち返って『より顧客が楽しい番組』『楽しい商品』は何なのかを考えた。その結果、出稿抑制の影響で数値だけを見ると売り上げは微減だが、実質はその影響を考慮すると、売り上げは増加している計算になる」と話す。小川社長にジュピターショップチャンネルが目指す姿、前期の振り返り、今期の注力点などを聞いた。
「顧客が楽しい」を念頭に
――改めて前期を振り返ってもらいたい。
前期は「顧客が楽しい番組は何なのか」ということを常に考え、考え抜いて出たアイデアを施策として展開してきた。
商品に関しては、ファッション商品とファッション番組の強化、体験型商品の販売を拡充した。ファッション番組は、ただ売れている商品を番組内で紹介するのではなく、「時代のモードを再発見!」のような企画を考案した。80年代、90年代のさまざまなファッショントレンドを現代流に取り入れた商品などを紹介した。
毎年、売れ筋商品をただ一挙に紹介するだけではつまらない。商品を紹介するにしても、顧客が楽しんでもらえる番組内容の放送に注力した。
体験型商品では、国内旅行やクルーズ旅行など、体験してもらえるチケットの販売を行った。これらの新たな取り組みが、多くの顧客から支持を集めることができた。
――増益を達成できた要因は?
構造改革を実行した。毎年継続してやってきた取り組みも、今一度「本当に取り組むべきなのか」を再考した。毎年やってきたからではなく、採算性を見極め、取り組むべきか、そうではないかをはっきりさせた。無駄を減らすことで、売り上げは変わらずとも、利益率を改善することができた。
――デジタル面での取り組みについて伺いたい。
今年1月に「SHOP CHANNEL PEOPLE」というショップチャンネルのウェブサイト上でゲストやブランド担当者、社員がファッションコーディネートを提案するサービスを開始した。
当社の社員はさまざまな人が在籍しており、体型もさまざまだ。「SHOP CHANNEL PEOPLE」に訪れた人は、そのようなさまざまな体型の人の着こなしを見てから、洋服を購入できる。ページ訪問者と近い体型の人もいるはずで、自分と似たような体型の人のコーディネートを参考にすることが可能だ。
まだ正式に提供を開始して半年だが、「SHOP CHANNEL PEOPLE」を見て、商品を購入した人は、私の想定より何倍も多い。需要があるのだなと再認識している。
――顧客参加型の番組も開始しているが、手応えはどうか?
2022年12月から、平日のお昼の時間帯に「Oh!Cha15(お茶行こう)」という番組を開始した。「Oh!Cha15」は、視聴者から寄せられたメッセージに対して、番組内で回答していくというものだ。番組内で商品を紹介するわけではないので、直接的な売り上げにはつながらない。
実際に社内からも「売り上げにならない」と懐疑的な意見もあったが、そうではない。顧客のことを思って、少しでも楽しんでもらえる番組を作りたかった。実際に視聴者からの反応も良い。楽しんでもらうことで、「またショップチャンネルを見に行こうかな」と思ってもらえるはずだ。