【次に来るマーケ手法は?】 「ライブ販売」「越境EC」は伸びしろ大
手塚:ライブコマースは2023年にもっとEC業界で普及しそうか?
三浦:ライブコマースを実施している事業者は増えているが、まだ視聴者を集めるのに苦戦しているケースが多いと聞いた。ターゲットとなる若年層は、さまざまなコンテンツに触れており、ライブコマースになかなか時間を割いてくれないようだ。
手塚:確かに見るための動機付けや、見たくなるような仕掛け作りが、日本は未成熟なのかもしれない。でも若者がYouTubeやTikTokを一生懸命見ていることを考えると、自分の好きな人がライブコマースに登場していたら見てくれる可能性はある。
星野:プラットフォームがライブコマースの機能を持っていないことが、まだ市場が盛り上がっていない理由だと思っている。中国だと「タオバオ」や「ウィーチャット」などがそれぞれライブコマースの機能を提供して、視聴からショッピングまで完結することができる。日本では、インスタグラムなどがショッピングの機能を強化はしているものの、ライブコマースの機能はまだ弱いと思っている。ECサイトに誘導することはできても、結局はECサイトで通常の購入手続きをする必要があるので、スムーズにショッピングを楽しむことができない。皆が利用するプラットフォームで環境が整備されれば、もっと利用される可能性はあると思う。
手塚:中国版のTikTok「抖音(ドウイン)」にはライブコマースの機能が付いているらしいので、日本のTikTokにもいずれライブコマース機能が付くという見通しもある。日本のECモールもライブコマースを実施しているところは多く、一部では実績も上がっているようだ。
「楽天市場」でも人気店のライブコマースは盛り上がると聞くし、「au Pay マーケット」や「Qoo10」のライブコマースも結構売れているという話も聞く。まだ規模はそこまで大きくないため、現状だと盛り上がっている感が少ないのだと思う。ただ、グローバルの動きや、国内のライブコマース関連サービスの動きを見ていると、”まだ”来ていないだけで、いずれ日本でも一つの販売手法として定着していくのだと思う。
見えない成功事例
手塚:円安で越境ECに注目が集まっていると思うが、なかなか成功事例が見えてこない面もある。2023年はさらに盛り上がるのだろうか?
永井:チャンスが大きな市場だと思う。ただ、海外に向けて売り出すには、日本市場と同じか、それ以上にしっかりとブランディングやマーケティングに取り組まないと、簡単に顧客をつかまえることはできない。
うまく売り上げを伸ばしている事業者を見ていると、最初は利益を取らずに、先行投資している。中国だと現地に入り込んで、現地の方々と一緒にしっかりと取り組んでいるところが結果を出している。
黒田:取材している食品メーカーは、越境ECに関心を持っている企業が多い。実際、もち吉さんは2023年に越境ECに取り組むと言っていた。ただ、やはり成功事例が見えにくい点が、参入をちゅうちょさせる要因になっていると思う。
手塚:黒田記者が取材しているICHIGO(イチゴ)さんは成功事例だよね?
黒田:日本の菓子を海外向けに詰め合わせにしてうまく販売している。今後、オリジナル商品にも力を入れていくようで、収益性も高まりそうだ。
永井:ICHIGOさんは、海外のインフルエンサーと地道にプロモーションを積み重ねて集客していったと聞いたことがある。海外人材の採用にも積極的なようだ。
黒田:社員の7割くらいが海外の方のようだ。組織自体がグローバル展開を見据えている。
手塚:国内EC市場の成長スピードが緩やかになってきたこともあり、海外に目を向ける人は必ず増えそうだ。
<記者が考える2023年のキーワード>▲三浦翔 記者 「広告が多角化」
ウェブ広告は飽和状態となっている。紙媒体やテレビ・ラジオCMなどに出稿するEC企業が増えていくと予想する。
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