2023.01.25

【<記者座談会③>2023年のEC市場を読み解く】注目のマーケトレンドは?「OMO」「ライブコマース」のポテンシャルは?


「売る」が目的ではない


永井:私の取材先でも体験を重視する実店舗を展開する事業者が増えている。ショールーム型の「売らない店舗」も今後、増えていくと思っている。

アパレルだと、ECがメインのグローバルファッションブランド「SHEIN(シーイン)」の実店舗やポップアップでは、基本的に商品の販売は行わず、すべてECで買うように促している。商品を試着できたり、着用したまま撮影できたりするのが特徴となっている。そのため、試着室もデコレーションされていて、まさにフォトスポットのようになっている。撮影した来店客の多くに、SNSでその姿を拡散してもらうことで、来店していない人にも影響を与える仕組みになっている。

手塚:「楽天市場」も昨年12月、韓国関連商品を集めた実店舗「Kulture Market(カルチャーマーケット) Supported by Rakuten」をラフォーレ原宿に開設した。この実店舗では商品も買えるが、店頭に設置されたQRコードを読み取ると、「楽天市場」の商品ページに遷移できる仕掛けがある。そこで商品詳細を確認したり、あとからオンラインで購入したりできるわけだ。もちろん商品を試したり、美容に詳しいスタッフに相談したり、ガチャで景品をもらえるサービスもあるという。

このような体験を重視した設計で、ECとのスムーズな連携も実現できる店舗は今後も増えそうだと思う。三浦記者の取材先ではどうか。


組織自体がOMO化


三浦:ここ数年、ECで売り上げを伸ばした事業者のリアル出店は増えると思う。コロナ禍に一等地の物件が空いたという話をよく聞くので、これまでEC事業者が出しにくかった場所にも進出することができる。

それに伴って、在庫や顧客などのデータをシステムで一元化させたいと話している事業者が多い。実店舗の数が増えてから対応しようと思うと大変なので、最初から一元化した仕組みを考え、リアル展開に踏み切るところもある。

実店舗とECで運営する組織だったり、売り上げだったりを分けずに、一つのものとして考える事業者も増えていると感じる。そこを分けるとどうしても規模が大きい方に偏ったり、部署間で足の引っ張り合いが起きたりする可能性がある。組織的にもOMOを図るケースはますます増えると思う。


リアル集客に注力


手塚:コロナ禍の行動制限もなくなってきたので、リアルからの集客を強化する動きも増えそうだ。

黒田:私が取材している食品事業者では、リアルの場合、催事販売などが多いので、しっかりと商品を販売して、味わってもらい、ECでリピートしてもらうことを目指すところが多い。しっかりとリアルで販売するため、外部から接客のプロを臨時で雇うところもある。

プロと素人の接客では、通りすがりの顧客が足を止めたり、商品を手に取ってもらえる確率が大きく異なるからだ。商材によってもリアルの売り場の捉え方は、異なっていると感じた。




<記者が考える2023年のキーワード>


▲永井愛理 記者

「OMOの加速」

実店舗の需要が復活し、苦戦するEC事業者も多いだろう。オンライン・オフラインを横断したアプローチが重要に。

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