2024.03.27

【「EC-CUBE」反撃ののろし】岩田社長と恩蔵CMOに「体制」「ソリューション」の進化を聞いた

イーシーキューブの執行役員CMO マーケティング本部 本部長 兼 営業本部CCO 恩蔵優氏(左)、代表取締役社長 岩田進氏(右)


セキュリティー確保の新ソリューションを開発


――「EC-CUBE」のセキュリティー面の懸念は払しょくできているのか?

岩田:われわれが提供している新たなソースコードに関しては、万全の状態になっている。ただ、どんなソフトウエアでも後からセキュリティーパッチを適用することはあることだ。万全だと思っていたものが、多くのユーザーの目にさらされる中で、セキュリティホールが見つかるということはあり、そこに関しては速やかにパッチを提供するということを組織として徹底している。ここまでがわれわれが管理できる範囲となる。

ただ、オープンソースならではの悩ましいところがある。ダウンロードされて使われ始めるとわれわれのコントロール外になってしまう。おおよその問題はわれわれの管理外のところで起こっている。当然、ダウンロードした事業者に向けての啓発活動やアナウンスはしっかりやっているが、それでも対応されない事業者も存在する。

それは例えば、ECサイト構築の会社が初期の構築だけを請け負っているが、ランニング(保守運用)に関しては対価をもらっていなかったり、発注会社と関係性が一旦途切れていたりするケースがある。そうするとわれわれやパートナー企業が管理できない状況になってしまう。そこが残された問題点だと思っている。

ここに対しても当社がもっと踏み込んで行くべきだと考えている。ユーザー登録をしてもらい、しっかりと一定程度のセキュリティーレベルを確保するためのソリューションを提供しようという取り組みもしている。


柔軟性高いオープンソースのニーズが拡大


――改めて「EC-CUBE」を導入するメリットは?

岩田:構造上のセキュリティーの課題がデメリットだとすると、「カスタマイズ性」「柔軟性」がメリットだ。われわれはデメリットを最小化し、メリットを最大化しなければならない。

「EC-CUBE」の提供を開始したのは2006年だが、この当時のソフトウエアの配布形態というのは、大型のシステムがパッケージソフトで作られていて、ユーザーはそれを使うしかなかった。もしくはフルスクラッチで作るしか選択肢がなかった。そこに対してわれわれがオープンソースという解を提示した。

これにより、大型のシステムでもなく、フルスクラッチでもなく、ベースラインがすぐにできて、柔軟にカスタマイズできる新たな構築手段としてオープンソースが盛り上がった。そこからSaaSが出てきて、ソフトウエアをオンラインで使う形態が台頭した。手軽に導入できるSaaSのニーズが高まり、「EC-CUBE」のデメリットの方が大きく捉えられるようになっていた。

ところが今、その状況が大きく変わろうとしている。SaaSが増えれば増えるほど、SaaSではできないことを実現したいと考える卒業組が増えてきた。どこまでも柔軟にSaaSで展開するのは不可能だ。

これが業務システムであれば、ユーザーのニーズに回答していく形で、進化することで対応可能だが、ECというのはインターフェースやUXそのものが、差別化の大きな源泉になる。そういう意味ではある一定の次元に到達した事業者にとってはいかに差別化するかということが重要であり、本質的にSaaSの限界が来る。

それを踏まえるとSaaSを卒業し、本格的なECを構築する事業者の市場が今後、さらに大きくなると見ている。「EC‐CUBE」が初期から掲げていた「ECに色を」というコンセプトが、少し形を変えてフィットする時代が来た。

「EC-CUBE」の本質的な部分は変わらず、製品提供から開発まで請け負う提供形態などを進化させることで、高まるニーズに応えることができると考えている。

恩蔵:EC業界でもノーコード・ローコードがもてはやされ、SaaSのニーズが高まったと思うが、その流れは一服した感がある。当社への問い合わせが増えていることからも、そう感じている。最近は「そこそこでいいのか」「しっかりやりたいのか」の2極化が進んでいる。

私はよく「ECサイトを作りたいだけなら最大限のメリットを提供できないので他社にいってください。ECビジネスをやりたいならぜひ当社と一緒にやりましょう」と言っている。ただ物販をするのではなく、ECビジネスとして多角的に展開したいと考えている事業者には、使い勝手のいい「EC-CUBE」がお薦めだ。

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