2024.02.16

【有識者に聞く!2024年のEC市場展望】いろは 竹内謙礼代表「国内モールは『アマゾン』が一歩リードか」

テーマ:「モール」


販促施策の立案や新規事業の立ち上げなどを支援するいろはの竹内謙礼代表は、国内三大ECモールについて、「『アマゾン』が一歩リードしている状況ではないか」と推測する。「アマゾン」「楽天市場」「ヤフーショッピング」は国内のEC事業者にとっては切っても切れない話題だ。竹内代表に現在の三大モールの状況とこれからの変化などについて聞いた。



「アマゾン」が優位か


国内のEC事業者において、「アマゾン」「楽天市場」「ヤフーショッピング」の動向は目が離せないだろう。

ここからの話は推測になるが、今までの各ECモールの決算発表を見る限り、国内流通総額は「アマゾン」が「楽天市場」と「ヤフーショッピング」を突き放し、一歩リードしたのではないかと推測する。2022年のアマゾンの日本事業の売上高は3兆2000億円。この数字から換算すると、「アマゾン」の国内流通総額は約6兆円ではないかと考えている。

一方で楽天グループ(楽天)の国内流通総額は5兆6000億円で、この数字には「楽天市場」と「楽天トラベル」が含まれている。ここから物販が占めるおおよその売り上げ比率から推測すると、「楽天市場」の流通総額は4兆円前後ではないかとみている。

もちろん、これらの流通総額は推測値でしかないので、場合によっては見当違いな数字になっているかもしれない。しかし、2021年までは「アマゾン」と「楽天市場」は拮抗していたが、2022年に急速に「アマゾン」が他モールを突き放した可能性は十分にある。これは個人的には衝撃的な出来事といえる。

ぜここまで「アマゾン」は好調なのか。それは主に①CM効果②安さ、買いやすさが広まった③企業イメージの差――などが挙げられるだろう。

アマゾンはECモール「アマゾン」と「アマゾンプライムビデオ」の二つのテレビCMのみを放送しており、視聴者にとっても、アマゾンがどのような企業なのかがはっきり分かりやすくなっていると考える。

楽天では、「楽天市場」「楽天モバイル」「楽天カード」「楽天トラベル」と、さまざまなテレビCMを放送しており、もしかしたら視聴者の中では、「楽天=ネット通販」という認識が薄れてしまったのではないだろうか。

またコロナ禍で消費者のネットリテラシーが高まり、多くの人がECサイトで商品を購入するようになった。そのとき「『アマゾン』のほうが安いよね」『『アマゾン』の方が買いやすいよね」と思う人が増え、結果として、他のモールを利用していた人が、「アマゾン」に流れてきた可能性も考えられる。

「安さ」を理由に購入する人が増えるということは、意外とポイント経済圏で顧客を囲い込みできなかったことを示唆している。「ヤフーショッピング」は「PayPayポイント」を中心とした経済圏を形成しているが、それが必ずしも消費者から支持されているということではないのだろう。

2024年も「アマゾン」一強になるのだろうか。そこを判断できるのが、LINEヤフーが仕掛ける「LYPプレミアム」と、楽天が手がけるSKU施策だ。

「アマゾン」が急成長したのは、「楽天市場」から顧客が流れたと同時に「ヤフーショッピング」からも顧客が流失したことも考えられる。「ヤフーショッピング」と「LINE」の連携が実現すれば、いくらかは「アマゾン」から顧客を再獲得することができるだろう。


「楽天モバイル」が鍵を握る


「楽天市場」に関しては、「楽天SKUプロジェクト」が始まり、今後に期待ができる。また個人的には、楽天は「楽天モバイル」の赤字も今後2年間で黒字化に持っていくのではないかと考えている。逆に言うと半ば強引にでも早く「楽天モバイル」を黒字化しないと、楽天は楽天本体が厳しくなってくる。楽天にとっては、「楽天モバイル」こそ楽天が生き残る道なのだから。

今後、楽天は「楽天モバイル」の業績回復のため、何らかの大きな復調施策を投じるはずだ。「楽天市場」に出店している企業にとっても、「『楽天モバイル』は関係ない」と言うのではなく、店舗も楽天にもっと協力的になり、ともに楽天を盛り上げる姿勢が重要だろう。





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