2024.02.01

【専門家対談】購入後のエクスペリエンスでAmazonを超える 【其の一】


Eコマース・オムニチャネルコマースにおいて、CX(カスタマーエクスペリエンス)の重要性が再認識されるようになっている。リテンションの重要性の認識が高まる中、CXのトレンドについて、Innovation&Communication の吉村典也代表と、シナブルの曽川雅史執行役員に聞いた。聞き手は、「日本ネット経済新聞」を発行する日本流通産業新聞社の星野記者が務めた。



星野:Eコマース・オムニチャネルコマースにおける CX の重要性が再認識されるようになっています。

従来のCRM においてメインの施策は、商品のお届け完了後に、パーソナライズされたステップメールを配信することや、キャンペーンコミュニケーションを行うことでした。

現在は、リテンションの大切さが強く再認識されるようになっていますが、そんな中、「購入後体験」のトレンドやメリット、運用方法などについて、専門家である吉村さんと曽川さんに、事例なども踏まえながらお話しいただきたいと思っています。


購入後体験は、AOV(平均注文額)と CLTV(顧客生涯価値)のためのコミュニケーションプラットフォーム


星野:
吉村さんは「購入後体験」という言葉を使っておられます。CX とほぼ同義だと思いますが、改めて「購入後体験」とはどのようなことを指しているのでしょうか。

吉村:まずは、自分自身が、顧客の立場で、企業の商品を購入するケースを一緒に考えてみることにしましょう。

現在、私たち消費者が、企業や商品に期待することは、絶えず、急速に変化しています。企業の現状に満足しているわけではありません。

企業が提供する商品やサービスが良いことは、もはや当たり前になっています。顧客は、企業が、商品購入に伴って提供する「体験」について、サービスや商品の品質と同じくらい重要な要素だと認識するようになっていると言われています。

つまり、企業が顧客とのあいだでどのような関係をつむぐかということは、企業の扱う、商品やサービスそのものと同じくらい重要であるということです。

曽川さんが常々口にしていることですが、Amazon での購入体験を知っている私たち消費者は、別の企業の購入体験を Amazon と比較して評価しています。

Amazon では、購入時から購入後の体験が顧客中心で設計され、提供され、絶えず改善されているということです。


曽川:
今まではカスタマージャーニーと言えば、「顧客にどのように商品・サービスについて周知し、よりストレスなく、商品を購入させるか」という、商品購入までのプロセスと、リピート購入にいたる CRM施策に焦点が当たりがちでした。

CRM を、マーケティングオートメーションなどが得意としていることは、よく知られています。そんな中、私が今、着目しているのは、三つの顧客体験になります。

一つ目は、商品をカートに入れてからチェックアウトするまでの、購入中の体験です。

二つ目は、注文をして配達完了するまでの購入後のトランザクションの部分です。

そして三つ目が、CRM 領域の顧客体験です。メールだけではなく、EC サイトや SNS における「ロイヤリティープログラム」までを含みます。

あるべき購入後体験を、順序立てて説明すると、1顧客に商品のお届けに関する期待値を正しく持ってもらう2商品をお届けするまでの体験をカスタマイズする3商品お届け後になにか問題があった際のサポートを行う4顧客をファンへと導く――となります。これがコマース事業者のミッションと言って良いでしょう。

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