楽天グループ(楽天)は1月25日、「楽天市場」の出店者向けイベント「楽天新春カンファレンス2024」を開催した。三木谷浩史社長は、講演において「楽天はこれからAIエンパワーメントカンパニーに進化していく」と語った。三木谷社長は、楽天が自社で取り組むAI活用や、店舗向けに提供するAIサービスの詳細についても言及した。
三木谷社長は「AIは手段だけではなく、会社の在り方、人のマネージメント、マーケティングの考え方とか全てに関わるインターネット以上の革命だと思う」と語った。
▲講演する三木谷浩史社長 生成AIの登場が大きなインパクト
特に生成AIの登場が大きなインパクトをもたらしたという。過去のデータを学習し、それに基づいた判断をする従来のAIとは異なり、生成AIは人間のように考えることができる。「人間にしかできないと思ったことが、AIによってできるようになる」(三木谷社長)と話す。
楽天はAI活用を加速するだけではなく、「楽天市場」の店舗などクライアントに対しても、AIを使いやすく、分かりやすくしていくという。それこそが「AIエンパワーメントカンパニー」の真意だという。
マーケティング、オペレーション、クライアントの効率を20%向上
「AI³(エーアイキューブ)」という概念の基、AIをツール化し、価値を最大化していく。
「キューブは三乗ということだ。3つの観点でAIを皆さんに使っていただけるようにしようと思う。1つがオペレーションの効率を上げていく。2つ目はいかに安く、いかに有効的にお客さまを引っ張ってくるか。いかに再購買していただくかを進める。3つ目は店舗さんの効率も上げていく」(同)と話す。
楽天はAI活用で生産性を高めるために、「トリプル20」という目標を立てている。自社のマーケティング効率、オペレーション効率を20%高めるだけではなく、店舗などクライアントの業務効率を20%高めることを目標にしている。
「今までは『楽天市場』という集客装置、ECの装置を通じて店舗とエンドユーザーをつなげてきたが、これにAIを付け加えることで、さらに『楽天市場』をパワーアップさせたい」(同)と話す。
楽天のAI活用における優位性とは
AI活用において、楽天に優位性があることも強調した。
「楽天には世界でも類を見ないデータがある。国内会員数は1億人、ポイントも昨年1年間で6600億ポイントも発行している。それだけさまざまな取引が行われているということだ。ショッピング、トラベル、銀行、証券、クレジットカード、モバイルで生まれる、さまざまなデータが1つのIDで結びついている。世界的に稀有な、非常にリッチなデータを持っているのが楽天だ」(同)と話す。
複数のサービスのデータを1つのIDで管理できることにより、AIを生かしてさまざまなことが実現できるという。
例えば北海道にスキーに行っている人に対して、スキーウエアをより効率的に販売したり、銀行で新しいハウジングローンを組もうとしている人に新しい家具やテレビを販売できる可能性がある。
まず、AI活用の第1弾としてOpenAI社とパートナーシップを生かし、2023年11月に「Rakuten AI for Business」を発表している。「OpenAIのサービスをガンガン使っていただけるような仕組みを構築している」(同)と言う。
人材の面でも、楽天は優位性があるという。
「日本はAIエンジニア、データサイエンティストの育成において遅れをとっている。楽天は世界中からエンジニアが約6000人集まっており、7カ国9都市で開発を行っている」と話す。