2023.08.01

老舗100億円通販企業がデジタルでも売れるようになった3つのポイント


――通販企業は、CXの改善のために、顧客データを統合して、顧客にアクションするためにはどのような課題に対して、どのような解決策があるのでしょうか?

吉村:100億円を超える、いくつかの老舗の通販会社さんの基幹システムのリプレースのサポートをさせて頂いていましたが、先ずは、顧客データの取得フェーズでは従来の注文、顧客サポートチャネルである、電話・郵送での申込書などのオフラインチャネルでは以下の課題があります。

1:充分な顧客データが取得できない

2:顧客の定性的な情報が、CSRの恣意性の高い情報になってしまう

3:顧客データが、複数存在する(Aさんの情報/電話番号/メール)

Eコマースシステム+基幹+コールセンターシステム+MA(マーケティングオートメーション)などのシステムをAPIではなく、連携や追加開発している環境がほとんどで、顧客データは、通販基幹が中心になっていて情報が貧弱なままです。

日本は、OMSに対してCXとしてデータを保持活用するという意識がとても薄い

・トランザクション(購買・決済・発送)データしかない

一般的な、購買情報として、なにを、いつ、買った、それはどの支払い方法で、どうお届けして、債権管理がどうなっているか。その購買履歴情報に対して、どのような施策・キャンペーン、オファーで購入したかを紐づけているだけです。

OMSの機能としても:オーダーマネ―ジメント情報としては、最低限必要なものしかありません。そして、希薄な顧客データをもとに、RFそしてMを活用して企業が、基幹上で顧客分析・セグメントをして、CRMを企画・実施しているのが現状です。

顧客分析・セグメントを通販基幹ではなく、MA側(CRMの1部)に持たせることのメリットを理解していないので、顧客の変化を、動的に把握できていないことになりますので、ニーズを読み違えるので静的なキャンペーンだけになります。

デジタルではパーソナライズされたレコメンデーションが普通になっているにも関わらず、オフラインでは、コールでは有効なキャンペーンのサジェストや、メールや、DMではクーポン、推奨商品(入口商品と、購入回数や購入時期別程度での、セグメント別のクロスセル・アップセル)程度になってしまっています。

がしかし、顧客はそこに満足していなくて、通販企業として、必要性が高まっている「顧客の行動」と「気持ちと意図」をまとめていくCDP的な機能とか、もしくはそのSaaSシステムへの柔軟な連携機能を有したシステムとしての設計思想と実装が不足しています。

そのために、コミュニケーションを無視することになるために、「買わされている」感が残るために、継続率・再購入に至らなくなってしまい、売上が上がらない、キャンペーン・オファーを多発する、ますます顧客の心は、より安い、お得なタイミングで購入(その他のブランドへのスイッチも含めて)しようとなるという悪循環になるが、辞められない。

オフラインでのコールセンターのコミュニケーションチャネルのパラダイムシフト、スマートフォン・固定電話からの音声チャネルだけではなく、チャットからの音声タッチポイントが各年齢層で進んでいるにも関わらず、対応できるCRMシステムとの連携になっていないなどが挙げられます。

――通販企業は、どう解決されようとして、エスキュービズムさんに相談にきているのですか?

梅木:100億円の年商で、20万人の顧客基盤のある、誰もがご存知のコスメ通販会社さんからも、ご相談が寄せられているように、ここ数年は、相談件数は増えていますが、数十億円を超えている通販企業数からみても、まだ、今日お話しした課題を解決できている「老舗の通販企業」は多くはない、と思っています。

D2Cを謡う新興のデジタルコマース通販企業はビジネスの立ち上げからあらかじめ、ECやSNSありきでビジネスを始めている事や、自社に商品研究開発施設を持つわけでもなく、ファブレスでもあり、組織が軽いことも特徴です。

もう一つ特徴的なのが、自社にWeb系のプログラマを抱え、ITベンダーに依存せず、内製化によってアジャイル的に機能をリリースしてるため、ビジネス部門の要求に対して相対的にスピードが早い。ITに対してかなりの投資をしています。

対して、老舗の通販企業はそもそもが何年(場合によっては10年以上ぶり)に1回のシステム刷新か、延命の選択に迫られており、社内に大規模PJを推進できるPJマネージャーがいないことが多いです。

それを埋めるために、ヘッドレスコマースに、リテールテイメント連携に対応できるように、API連携をベースとしたシステムにしています。ソースコードも開示し、ベンダーロックインを排除した自由度の高いシステムとして提供しています。お客様にパッケージの心臓部分を含むすべてのソースコードを開示しています。自由にカスタマイズをしていただける権限をお渡しすることで、お客さまが当社以外のベンダーを選定されて開発を行う事も、自社で運用チームを立ち上げて100%の内製化を実現する事もできる、多彩なメリットを生み出しています。

また、これらの特色を生かして、経営層からも重要課題として挙げられているEビジネス基盤の自社で内製化する、上流工程から運用までトータルに支援できる体制、「内製化支援サービス」もご提供させていただいています。D2C企業でパーソナライズソリューションを実装しながら、自社の複数カテゴリーブランドを統合提供するマーケットプレイスを展開される事例も出てきています。


<まとめ>
デジタルコマースに目を奪われがちで、忘れがちでもあった、「通信販売」会社、歴史だけではなく、売上規模もまだまだ数十億、数百億で健在なビジネスであることを改めて認識しました。従来の顧客層へのサービスを維持、発展しつつ、新規の顧客との関係を構築するという、真にオムニ化とビジネスモデルの変化を試行し続けていることが、ケーススタディからも伝わってきます。

それに、応えるべきシステムツールも変わっていくことの大切さや、特にユーザー側での自由度を得ることができる提供モデルは、海外のShopifyなどの成長を見るまでもなく一般化していくことが想像できます。これを機に、「顧客中心」であった企業が再成長することが期待できそうです。



【プロフィール】

・エスキュービズム 取締役 梅木研二氏

大手SIにて流通小売企業向けのEC、POS、基幹システム、人事給与、会計、BI、インフラといったシステムをPKG及びスクラッチ開発、ASP導入など様々な提案と導入を規模を問わず行ってきた。エスキュービズムにジョインしてからは大手小売業様や通販事業社様向けのオムニチャネルシステム導入プロジェクトに携わることが多く、商品・在庫・顧客のデータが散在している状況と、それらを管理管掌する部署もバラバラであるような状況をたくさん見てきた。ITだけ導入しても決して課題解決しない状況において、それでもベターを実現するために
どうすべきか?について事業者様とともに悩み、考え続けている。

<エスキュービズムの事業概要>
https://bit.ly/3NLzAkw


・富士ロジテックホールディングス 顧問 吉村典也氏

単品・総合通販ビジネス、テレビ通販会社、Eコマース系事業会社、百数十社へのCX業務を設計、運用サービスのパートナーとして、バックオフィスやフルフィルメントセンターの立ち上げ支援、通販基幹システム、コマースシステムの選定サポートなどを行ってきた。最近では、大手健康食品会社の子会社が自社開発した、「通販基幹システム」のセールス・マーケティングサポートを通じて、昔ながらの100億円超え、100億円を目指す、通販企業さんとの数多くの出会いがある。そして、これらの企業が、これからの顧客に対応できる、ビジネスモデルの変化や、それを支えるデジタルトランスフォーメーションに乗り遅れていることに気付かされたという。新しい日本型の通販・コマースシステム、CRMやCXなどを広めたいと考えて、情報発信や、オムニチャネルシステム:CXシステムの設計から導入、運用支援をしている。

<関連記事>
「2023 シン・通販対応コマース 変わる通販ビジネスと、オムニチャネル時代に対応するコマースシステム とは #1」
https://bit.ly/3qYfjj0







RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事