2023.07.03

「消費者庁は説明責任を放棄している」消費者庁のさくらフォレスト措置命令に疑問の声も 措置命令内容を詳説

消費者庁は機能性表示食品への処分の理由の詳細を明かさず


消費者庁は6月30日、健康食品の通販・ECを展開するさくらフォレストが販売する機能性表示食品「きなり 匠」「きなり 極」の2製品に対して、景品表示法に基づく措置命令を行った。消費者庁は、2製品の機能性表示食品の届け出資料について、「表示の裏付けとなる合理的な根拠として認められなかった」としている。問題とされたのは、「DHA・EPA(中性脂肪)」「モノグルコシルヘスペリジン(血圧)」「オリーブ由来ヒドロキシチロソール(LDLコレステロール)」という三つの機能性関与成分に関する表示。消費者庁では、同様の根拠で表示を行っている機能性表示食品88製品について、定性的な確認を行う方針だという。消費者庁では、2製品に含まれていた三つの機能性関与成分のうち、「DHA・EPA」については、有効性を示す論文の配合量が足りていなかったと指摘した。つまり、配合量が多ければ問題がなかったとみられる。一方で、「オリープ由来ヒドロキシチロソール」については、「検定方法やデータの解析方法など、機能性の評価方法がそもそも不適切だった」としているのみ。どんな検定方法の何が不適切だったかは、記者会見の場でも明らかにしていなかった。景表法や機能性表示食品制度に詳しい、東京神谷町綜合法律事務所の成・眞海弁護士は、「機能性の根拠を否定するという極めて影響の大きい判断をしておきながら、その判断理由を何も示さないというのは、行政としての責任放棄だと思う」とコメントしている。



「『機能性がある』とするのは適切でない」


消費者庁が景表法上の優良誤認を認定したのは、①「きなり 匠」の届け出表示を逸脱した表示 ②「きなり 匠」の機能性表示 ③「きなり 極」の機能性表示――の3つだ。


▲機能性表示食品への措置命令は、「葛の花」に次いで2件目

「きなり 匠」は、「本品には DHA・EPA、モノグルコシルヘスペリジン、オリーブ由来ヒドロキシチロソールが含まれます。DHA・EPAには中性脂肪を低下させる機能があることが、モノグルコシルヘスペリジンは血圧が高めの方の血圧を下げる機能があることが、オリーブ由来ヒドロキシチロソールは抗酸化作用を持ち、血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の酸化を抑制させることが報告されています」と機能性を表示していた。

「きなり 極」は、「きなり 匠」の「DHA・EPA」の機能性と同じを表示していた。

「きなり 匠」は、ECサイトや同梱資料などに、「血圧がグーンと下がる」などと表示していたことが、「届け出表示を逸脱した表示」と認定された。

2製品の機能性表示についてはどちらも、「届け出表示の裏付けとなる科学的根拠が合理性を欠いている」として、不当表示として認定された。

消費者庁はさくらフォレストに対して、2製品の機能性の表示に関して、合理的な根拠の提出を求めたところ、さくらフォレストからは、機能性表示食品の届け出資料を含む資料が提出された。ただ、合理的な根拠として認められなかったとしている。

消費者庁によると、さくらフォレストからは、2製品に含まれる機能性関与成分「DHA・EPA」について、30報以上の論文が提出されたという。ただ、提出された論文のほとんどについて、論文内の試験で摂取されている1日当たりの含有量が、「きなり」の配合量の倍近い量で検証されていたという。つまり、「きなり 匠」「きなり 極」のDHA・EPAの配合量は、DHA・EPAの有効性を示す論文の配合量に、足りていなかったとしている。

消費者庁は、DHA・EPAの配合量の参考数値として、トクホの製品に含有される860~1050mgや、医薬品に含まれる1680~1800mgを公表している。「きなり 匠」のDHA・EPAの含有量は400mg、「きなり 極」は500mgだった。

さくらフォレストが提出した資料の中には、「DHA・EPA」が、実際の含有量より少ない量でも効果があるという論文もあったという。一方で、「少ない量では効果がない」とする論文もあったとしている。

「『効果があるとする論文』と『ないとする論文』が両方ある場合、本来、両側面を適切に評価したうえで、機能性表示食品の届け出を行うべきだ。消費者庁は、『機能性がある』と評価するのは適切ではないとして、客観的な効果を実証したとはいえないと認定した」(表示対策課ヘルスケア指導室 田中誠室長)としている。



▲表示対策課・ヘルスケア指導室 田中誠室長

 

違反表示の詳細を明かさず


消費者庁は、「きなり 匠」に含まれている血圧に関する機能性関与成分「モノグルコシルヘスペリジン」について、機能性を評価している試験のデータが、「サプリメント単独の効果を実証したとはいえない」(同)と認定した。

さくらフォレストが提出した「モノグルコシルヘスペリジン」に関する資料では、同成分を減塩しょうゆと併用して行ったデータを、臨床試験結果として採用しているという。同データでは、「モノグルコシルヘスペリジン」を配合した減塩しょうゆを摂取した群と、プラセボを配合した減塩しょうゆを摂取した群と比較して、「モノグルコシルヘスペリジン」を摂取した群の血圧が有意に低下したとしている。

消費者庁によると、さくらフォレストは、「オリーブ由来ヒドロキシチロソール」について、LDLコレステロールの酸化の抑制について、被験者群と非被験者群のデータを比較して有意差を検証した論文を提出したという。消費者庁は、さくらフォレストが提出したデータについて、「評価方法がそもそも不適切。検定方法やデータの解析方法が不適切だった」(同)としている。本メディア記者の追加取材に対しても、評価方法のどこが不適切だったのかついては、7月3日時点で明らかにしていない。
 

他の機能性表示食品も確認


消費者庁は、さくらフォレストの販売する2製品に対する措置命令に合わせて、「2製品と同種の届け出」を行う機能性表示食品について、届け出を行う事業者に対して、定性的に確認を行うとしている。「同種の届け出」とは、①「DHA・EPA」を機能性関与成分として届け出ている機能性表示食品の中で、配合量がさくらフォレストの2製品以下となっているもの ②「DHA・EPA」「モノグルコシルヘスペリジン」「オリーブ由来ヒドロキシチロソール」のいずれかを含む機能性表示食品で、SR(システマティックレビュー)で届け出を行っているもの――の2つの条件のいずれかに当てはまるものだとしている。


▲機能性表示食品を所管する食品表示企画課の蟹江誠 保健表示室長

消費者庁によると、上記の条件に該当する機能性表示食品は、「DHA・EPA」が31件、「モノグルコシルヘスペリジン」が14件、「オリーブ由来ヒドロキシチロソール」が47件あるとう。上記の件数の中で、重複を省き、88製品が該当するとしている。

消費者庁は、機能性表示食品の届け出を行う事業者や業界団体に対して、「表示の裏付けとなる科学的根拠が合理的根拠を欠く場合、景表法や食品表示法に違反する可能性がある」ことを、改めて周知するとしている。

RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事