2023.02.09

【佐川急便とヤマト運輸】法人向け宅配料金の値上げ示唆 すでに10%上昇を通告された事業者も


ヤマト運輸は2月6日、届け出運賃の値上げを発表した。佐川急便も1月27日の発表で、4月1日から値上げを行う旨を発表していた。佐川急便ではすでに、通販・ECの法人顧客に対して、運賃の値上げの要請を始めているようだ。法人顧客の値上げ幅は荷主によって異なるが、1月27日の届け出運賃の改定と同程度の値上げを通告されたケースもあるという。ヤマト運輸も、法人顧客への個別の価格交渉を行っていくことを示唆している。物価高騰や人材不足の影響による運賃値上げの荒波は、通販・EC業界に容赦なく押し寄せている。

 

価格転嫁もやむなし


佐川急便では、法人顧客の値上げについて、「当社の顧客の中で、特約運賃で契約している法人の荷主については、今後個別に、運賃改定の交渉をしていく」(経営企画部)としている。

本紙ではこのほど、複数の通販・EC事業者や3PL(物流代行)に、運賃値上げに関するヒアリングを行った。その結果、ヒアリングに回答した事業者の半数が、佐川急便から運賃の値上げの要請を受けたと回答した。流通規模の大きい3PL事業者は、2022年末の時点で値上げの要請を受けていたようだ。運賃の値上げのタイミングや値上げ幅は契約によって異なるが、届け出運賃に比べると値上げ幅が少ないケースが多いようだ。

3PL事業者を通じて佐川急便の値上げを通告された、家庭用品などを扱うEC企業A社は、「佐川急便の値上げによって、配送費は年間8~10%増加しそうだ。年間数千万円規模の負担増加になるとみられる」(A社社長)と話している。

「当社が配送を委託している日本郵便も、いずれは値上げを要請してくるだろう。アマゾンや楽天市場に出品している商品は、送料込みの価格設定となっているため、送料を上げれば製品価格も上げざるを得ない。製品価格を値上げする形になるだろう」(同)とも話している。


積載効率が交渉に影響も


一方で、佐川急便からまだ値上げを打診されていない通販・EC企業もあるようだ。

カニやフルーツなどの食品ECを運営するB社は「佐川急便には月間数万個を委託しているが、まだ値上げの要請は受けていない。届け出運賃の改定の話を聞いて、値上げの要請は十分あり得るし、理解できると思った。要請を受けた場合は、業務内容ごとに協議していきたい」(B社執行役員)と話している。

化粧品や健康食品の中堅EC2社にも話を聞いたが、いずれも値上げの要請はまだされていないようだ。

前出のB社の執行役員は、「配送会社が優先的に値上げを要請するのは、出荷件数が多い顧客や、もともと安い運賃で契約している顧客だけではないだろう。積載効率が悪い顧客も、優先的に要請される対象になるのではないか。バラバラのサイズの荷物を一度に委託することが多い場合、トラックにデッドスペースができてしまう。配送効率が悪いと判断される可能性がある」と指摘している。
 

ヤマト運輸も「個別に交渉」


2月6日に届出運賃の価格改定を発表したヤマト運輸も、法人の値上げ交渉を行っていくことを明らかにした。

ヤマト運輸は、「法人の顧客に対しては今後、契約更新のタイミングなどを見ながら、運賃の価格の改定について、個別に交渉していく」(コーポレートコミュニケーション部)と話している。

本紙がヒアリングを行ったEC事業者や3PL事業者については、ヤマト運輸から値上げの打診を受けたと話す企業は、2月9日時点でまだなかった。

ただ、今後、ヤマト運輸についても、運賃の値上げに向けた交渉を行っていくとみられる。



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