2020.04.02

うそから出たまこと

エープリルフールの日は、毎年企業が自社サイトやSNSで発信する「うそ」を楽しみにしている。規模や業界に関係なく、さまざまな企業が参入する「エープリルフール商戦」だが、個人的に特別枠扱いの企業が1社ある。神奈川・厚木市の地ビール蔵「サンクトガーレン」だ。

サンクトガーレンは、エープリルフール企画として一風変わった新作ビールを毎年発表している。今年の新作はトロピカルな香りが持ち味の「ドリアンIPA」。当日公開されたランディングページでは、開発工程の紹介とともに、「4月1日限定販売」と大々的な告知が行われた。ここまでだったら普通のうそだが、サンクトガーレンはそのビールをECで「実際に販売」している。

販売ページ
実際の購入ページ

日付が変わる瞬間から販売を開始した「ドリアンIPA」は、正午ごろには用意していた3000本が完売したという。「4月1日限定販売」という言葉にたがわず、企画ビールを購入できるのは毎年この機会のみだ。

サンクトガーレンはこの取り組みを10年間近く続けている。確か昨年は「オオグソクムシビール」だった。ブランドファンにとって4月1日は、「攻めた新作ビール」がお披露目される場として半ば恒例行事化している。「お客さまを楽しませられる機会」として始まった企画だが、サンクトガーレンは4月2日から、また翌年の「うそ」に向けた企画開発を進めていくという。自社のビールとして消費者の喉に届ける以上、もちろんそこに妥協はない。

サンクトガーレンは、商品紹介ページ上で「実際臭いです」という言葉とともに、「#ぜんぶドリアンのせいだ」というハッシュタグを用意。購入者に届く週末ごろから、このハッシュタグでSNSを検索する機会が増えそうだ。

昨今の情勢からか、今年は催し自体を自粛する常連企業も数多くあり、若干寂しさも感じられた「エープリルフール商戦」だった。そんな中、職人としての誇りと、商売人としてのしたたかさを今年も発揮したサンクトガーレン。特別枠扱いはしばらく続きそうだ。

サンクトガーレン 「ドリアンIPA」

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