2024.05.27

【BtoB‐EC最大手がさらに進化】アスクル 温泉さおり氏「新サイト基盤に『商品力』『機能性』の強化続く」

アスクル 執行役員 EC本部 本部長 温泉さおり氏


BtoB‐EC最大手のアスクルは、BtoB事業において「利益成長カーブを変える」という目標を達成し、2024年5月期は第3四半期まで増収増益を続けている。新しいアスクルWebサイトへの移行や、品ぞろえの拡張とカテゴリーごとの深化など、最大手でありながらチャレンジを続けている。執行役員 EC本部 本部長 温泉さおり氏にBtoB事業の現状や最新の成果について聞いた。



――業界をリードしてきた存在として、BtoB‐EC市場の進化はどう見えているのか?

昨今、特に中小企業が人手不足であったり、インフレや原料高があったりする中で、DXや効率化がキーワードとして注目されていると思っている。購入業務も効率化したいし、コストも落としたいし、人手もかけたくないというニーズは大きい。そのニーズに対して、物販以外のソリューションを提供する企業が増えている。

当社は中小企業向けと大企業向けのサイトを統合し、もともと大企業向けに提供していた購買管理系の仕組みなどを中小企業でも無料で使えるようにしている。中小企業の「効率良く買いたい」「購買を管理したい」といったニーズに応えている。

一方、大企業は1カ所で全部買いたいというニーズがある。すべてのサプライヤーの商品を買える購買プラットフォームを求めている。品ぞろえや買いやすさを高めることで、大企業のニーズにも応えていく必要がある。

――コロナ禍がBtoB‐ECの拡大にも影響したのだろうか?

テレワークが進み、各社とも一気にDXを進めやすい土壌になっている。生成AIなどのテクノロジーが一般化してきており、そうした流れが業務を自動化したり、DXを推進したりする機運につながっている。

一昔前は大企業にしか購買のDXのニーズはなかったが、それが中小企業にも浸透してきている。大企業のような一括購買というほどの規模ではないが、効率良く社内の注文を取りまとめて発注するというニーズが高まっている。これまではおそらく、担当者が社内を回って必要な物を聞いたり、付箋に書いて発注を頼んだりしていたと思うが、テレワークだとそのような方法では取りまとめできなくなっている。なるべくオンライン上で注文を取りまとめ、承認などを完結させたい企業が増えている。


幅広い業種で利用されている点が強み


――他社のBtoB‐ECプラットフォームもサービスを拡大しているが、差別化のポイントは?

当社は時間をかけて強い顧客基盤を築いてきた。特定の業種だけではなく、幅広い業種で利用されている点が強みだと思っている。業界ごとに浮き沈みがあっても、幅広い業種に利用されていることで、その波を吸収できている。

物流も強みだ。ECに特化した物流センターも構えているので、お客さまが「すぐに欲しい」というニーズにも応えられる。

在庫もかなりそろえているので、皆が買う商品からロングテール商品まで1箱で届けることができる。

オリジナル商品をかなり用意している点も差別化のポイントだ。環境に配慮した商品や個性的な商品もそろえている。

――先行企業として蓄積している購買データをどう活用しているのか?

購買データもかなりたまってきており、それを社内のマーケティング活動に生かすだけではなく、サプライヤーにもデータを開放している。

以前はtoCのデータのみを開放していたが、今年4月からはtoBのデータも開放するようになった。なかなかtoBのプラットフォームでデータを開放しているところはないと思う。

サプライヤーが今まで見えなかった「どういう業種のどういう規模の企業が買っているのか」などが分かると、そのシーンもイメージでき、売り方を考えたり、新商品を開発したりするときに役立てることができる。

――環境に配慮したオリジナル商品や、環境スコアの表示などの取り組みが利用者に評価されているのか?

やはり購入する企業としても、できれば「環境に良い商品」や「リザイクできる商品」を買いたいと考えている。そうしたニーズに応えるため、独自の環境スコアを付け、サイトで大きく表示している。こういう情報を手がかりに、商品を購入していただいている。

「エシカル」をテーマにした商品やサービスは、競合との差別化や付加価値につながっていると思う。

将来的には利用企業が、自社の購買において「どのくらい環境貢献できたか」「CO2の排出量を削減できたか」を確認できるようにしたいと思う。

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