2024.03.15

「ふるさとチョイス」のチェンジHD、Amazonのふるさと納税参入で異例のコメント

「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクの親会社のチェンジホールディングス(HD)は3月12日、Amazonのふるさと納税参入の報道を受けて、自社のふるさと納税事業について異例のコメントを発表した。「特産品のECはふるさと納税の趣旨ではない」とし、成長性よりも安定性を重視した事業運営を志向していることなどを示した。

チェンジHDは、「朝日新聞デジタル」における“「黒船来襲」アマゾンのふるさと納税参入 「うますぎる」プランとは”との報道について、株主、投資家から多数の問い合わせがあったことを受け、フェアディスクロージャーの観点から情報発信を行うとし、自社の今後のふるさと納税事業についてのコメントを発表した。

グループ会社のトラストバンクで運営している「ふるさとチョイス」は、自社の中核事業の1つであり、今後も自社グループにおいて極めて重要度の高い事業と位置付けられるとの見解を示した。一方で、ふるさと納税事業については、成長性よりも安定性を重視した事業運営を志向しているとし、成長戦略には、①自治体のデジタルトランスフォーメーション支援 ②人材不足を解消するためのAIなどのテクノロジー活用 ③サイバーセキュリティ製品・サービスの国産化――の3領域を挙げた。

今後も事業戦略・成長戦略を繰り返し説明していくとし、投資家においては、ふるさと納税事業の成長性より、安定的な事業運営ができているかを評価してほしいとした。進行期においても前年比で106%の寄付があり、安定的な事業運営ができているとした。

ふるさと納税事業展開にあたっての大前提とし、ふるさと納税は地方税法等の法律に基づく国の制度であり、お世話になった地域や応援したい地域に寄付をするという制度であることを改めて示した。寄付に付随して返礼品がもらえることから、特産品や日用品をインターネット上で売買するECと混同されがちだが、本来の制度趣旨とは異なる。寄付者にとっても生産者にとってもメリットの大きい仕組みであり、ふるさと納税制度の普及を促進してきたことは間違いないが、「国の制度は国の意向に沿って運営すべし」が自社グループの考え方であることを改めて示した。

競争環境については、法の趣旨に即して健全に制度が運用される限り、多様な事業者が参画することは寄付者・自治体にとって選択肢が広がることから、市場全体にとってプラスに働くものとの考えを示した。「競争より協調」を基本的な考え方とした上で、特に決済手段の多様化に取り組んでおり、ポータル事業で競合する企業とも決済領域で協調路線を歩んでいる。例えば、「Amazon Pay」「PayPay」「楽天ペイ」などの決済サービスは、「ふるさとチョイス」の利用者も高い利便性を提供しているとした。

一方で、今後さらに競争環境が激化してくることを3年前から想定し、「アライアンス戦略」「リアルチャネル戦略」「プロダクト戦略」を実行。「アライアンス戦略」では、競合他社がEC事業や決済事業において「独自の経済圏」を有しいるのに対し、自社ではそれらの経済圏に属していないものの、数千万人規模の顧客基盤を有する企業と連携した事業展開を行なっており、「NTT ドコモ」「KDDI/ローソン」「クレディセゾン」などとの連携が効果的に運用されているとした。

「リアルチャネル戦略」においては、競合他社がインターネット上で完結した寄付募集を主軸としているのに対し、自社では、銀行や証券会社のプライベートバンキング部門と組んだ富裕層向けの提案の実施、全国的に数千店を店舗展開している事業者が対面で顧客に「ふるさとチョイス」の説明・提案をするなどの活動を行っている。

「プロダクト戦略」においては、競合他社にはない1万点弱の返礼品を「チョイス限定」という形式で提供。インターネット販売に適している大量生産・大量消費のプロダクトとは異なる、ふるさと納税に相応しい、地域の魅力ある返礼品を開発/開拓していくとしている。また、ゴルフ場や宿泊施設など、寄付者が当該地域に足を運び、交流人口が増える仕組みを「チョイス Pay」の活用により構築する。

これらの戦略は、大手競合他社が模倣することが難しいものであり、進行期においても多大な成果を創出し、制度の健全な発展と自社グループの安定的な成長に寄与しているとし、今後も継続・踏襲していく計画であることを示した。




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