テーマ:「越境EC」
一般社団法人日本越境EC協会の出口允博専務理事は、「日本企業は越境ECを始めなくてはならない」と強調する。出口専務理事に近年の越境EC事業について聞いた。
昨年は越境EC事業を始めた企業が増加したと思う。2024年はさらに増加するだろう。というより日本の事業者は「越境ECを始めなければならない」。衰退していく日本経済でどのように売り上げを伸ばしていくかというと、商圏を国内だけにするのではなく、経済が成長していて、人口ボーナス期がこれから何年も続く市場に販路を作っていかなければならない。
越境ECの相手国としては、中国、北米、欧州、東南アジアがトレンドだが、JETROのアンケート調査によると、多くの企業は東南アジアを相手国と考えている。
北米や欧州に向けた越境ECは「Amazonを活用する」という方法が注目を集めており、越境ECを開始する企業が増えたと感じている。購買力が強い欧米のため、日本から見ると販売戦略が立てやすいと感じると思う。
ただ、AmazonはFBAの対応、税金の対応、物流の対応など、立ち上げるまでに有識者とともに時間をかけて事業を構築する必要がある。その点、東南アジアは日本からBtoCでの直送モデルを構築しやすく、他国と比べるとスキームを立ち上げやすい利点がある。
東南アジアとひとくくりにしても国が違えば、文化も法律も、人々の購買行動も違う。例えばインドネシアやマレーシアはムスリム国のため、商品カテゴリーによってはハラール対応が必要になる。
日本の企業側にも、「海外で売るということはどういう覚悟が必要なのか」ということをしっかり認識しなければならない。日本製だから売れると思い込んでいる日本企業は多いが、欧米を含め海外の人たちは中国製を始め他国の品質が格段に上がってきていることをよく知っている。
短期間で黒字化しようと考えてはいけない。東南アジアの人たちは慎重な人が多く、買い物に失敗したくないという意識がとても強い。時間をかけてしっかり市場調査し、どの国で、どういう方法ならば売れる可能性が高いのかを調べる必要がある。
物流についても、単に送るだけでは届かない。専門にしている物流会社が必要だ。今なら事業の構築方法によっては補助金が使えるため、比較的リスクを抑えて立ち上げることができる。短期間で諦めないで腹を括って取り組めば、3~5年後に、「あのときにスタートしておいて良かった」と思うことだろう。