2023.11.27

【スポーツ用品のグローバル企業「デカトロン」に聞く】「マーケットプレイス化のメリット」とは?

英国デカトロン マーケットプレイス責任者 ラリー・ボーウェン氏


データを活用してマーケットプレイスを進化


――マーケットプレイスで品ぞろえが広がり、顧客が増えることで、より多くのデータを集めることができると思います。そのデータを次のビジネスにどう生かしていますか?

私たちはどういった商品をそろえるべきか、どのような品ぞろえを実現すべきかという面で、マーケットプレイスのトランザクションのデータを活用しています。

英国やヨーロッパにはデータの使用に関する厳密な規制があり、データの取り扱いにおいて、非常に慎重に取り組まないといけません。

マーケットプレイスに出品するブランドにとってマイナスを与えることがないようにデータを慎重に取り扱っております。

マーケットプレイスで得られたデータをPB商品の開発に生かすことはないですし、商品開発の部署とは、そういったデータを共有していません。

――マーケットプレイスのデータはマーケットプレイスのみに生かしているのですか?

データの活用先の1つ目が、より魅力的な品ぞろえの実現です。

ニッチなスポーツでも急成長を遂げることがあります。英国はクリケットで知られていますが、クリケット自体は大きなスポーツではありません。

ただ、商品の伸びが2倍、3倍となるのであれば、商品戦略を練り直し、クリケット用品の店舗を誘致することも考えられます。

マーケットプレイスの質を高めることにも、データを活用しています。

出品者の商品の売れ行きはもちろん、レビューの評価、配送がオンタイムでできているか、海外発送に対応しているか、配送料金はどのくらいか、などをしっかりと見ています。

私たちのオンラインサービスの質を上げることで、ベストな価値を提供したいと思っています。

――オンラインマーケットプレイスを導入した成果は?

英国では2年半前から、オンラインマーケットプレイスを提供していますが、英国のデカトロンの中で最も早く成長しているビジネスの1つとなっています。

現在では、200以上のブランドをそろえ、15万品目以上を提供しています。マーケットプレイスにより、品ぞろえを広げることができました。

――Miraklのソリューションの魅力は?

Miraklのエコシステムはこれまで、われわれのビジネスに貢献してきました。Miraklで構築したマーケットプレイスは、私たちのオンラインサービスと容易に連携できています。

出品者は商品を多数アップロードできますし、簡単に管理できます。商品が売れると通知が来て、発送処理に移ることができます。システムは非常に使いやすいものになっていると思います。

Miraklやパートナーの知見でサポートしていただいており、とても助かっています。

―― 今後のオンラインマーケットプレイスの展望は?

私たちの実店舗には、スポーツの専門家がおります。その資産を十分に活用することを考えております。

例えば実店舗で専門家に相談してから、オンラインで発注することもできます。オンラインから実店舗に発送し、受け取る際に専門家のアドバイスを受けることもできます。

オンラインとオフラインを連動させることで、自社ブランドのみならず出品者のスポーツ用品においても、専門家の知見を生かすことができると考えています。

他のリテールの店舗やオンラインプラットフォームとの差別化を図るために、スポーツの専門家を実店舗に配置していることを生かしていきたいと思います。

オンラインマーケットプレイスでは、ブランド、選択肢、経験、発送方法、データの質、サーフィング、検索しやすさ、など多様な面でより差別化を図っていきたいと考えています。


【記者の目】

再三の日本市場攻略、マーケットプレイスが次の鍵?!


私がデカトロンを初めて知ったのは、アウトドアEC大手のナチュラムと2011年に資本業務提携を締結した時だった。グローバルの巨大スポーツ用品店がナチュラムを足掛かりに日本進出を本格化するという動きに注目していた。

その後、ナチュラムはスクロールの傘下に入り、デカトロンは兵庫・西宮や千葉・幕張に大型店を開設した。コロナ禍の影響もあり、デカトロンの国内店舗は昨年、全店閉鎖した。しかし、ECサイトや卸売りは継続しており、豊富なPB商品などの強みを生かし、日本市場を開拓する姿勢は変わらないようだ。

今後、グローバルで培ったノウハウを生かして、日本でもマーケットプレイスを展開するかもしれない。マーケットプレイスのパートナーであるMiraklも2022年から日本で事業展開を本格化している。今後もデカトロンの日本における事業展開に注目していきたいと思う。


【プロフィール】
英国デカトロンのマーケットプレイス責任者。デカトロン以前は、デリバルー、アマゾン、オルサムで6年間さまざまなマーケットプレイス業務に携わり、ブランドオペレーションと特別プロジェクトを指揮。マーケットプレイスビジネスを拡大するためのデータ駆動型アプローチを通じて、マーケットプレイスの状況を深く理解してきた。







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