2023.08.25

【コラム】返品率の増加に対応するには最適な倉庫ソリューションの導入が必要 小売り事業者がサプライチェーンの未来に備えるには

効率的な物流ソリューションで倉庫のボトルネックをなくす

サプライチェーンの混乱は日常茶飯事であり、この問題は今後も起こり続けるでしょう。本稿では、サプライチェーンが、逆境に耐え、将来を見据えたサプライチェーンの強化に導くための4つの戦略をご紹介します。
 

サービスの拡大と多様化


現在のグローバル市場では、小売業者は競争力を維持するために、「迅速な配送」と「幅広い商品セレクション」といった需要を満たす努力をしなければなりません。その二つは、消費者に求められています。競合他社と差別化するためのひとつの方法は、提供する商品セレクションを拡充することです。売り上げや利益の増加、市場リスクの低減につながります。

しかし、Stock Keeping Unit(ストック・キーピング・ユニット:「SKU」)の増大が懸念されます。つまり、商品を多様化することは、管理をより複雑にし、より多くの在庫保管スペースを必要とすることにもつながります。大きなコストのかかる倉庫を借りずに済むよう、在庫を効率的に管理することが重要です。

AutoStoreシステムは、既存の保管スペースの最大75%をリリースすることができるため、余剰となったスペースへ追加の在庫を格納することが可能です。企業は、間接費を増やすことなくSKUを多様化することができます。AutoStoreを導入することで、増え続ける在庫を効率的に管理し、市場での競争力を維持することができます。


効果的な返品管理の実現


特にeコマースの時代において、リバースロジスティクス、つまり商品の返品プロセスは、小売業者にとって重要な課題となります。オンラインでの購入品は、店舗での購入品よりも返品される頻度が高いといわれています。一般的に、店舗での返品率が8~10%であるのに対し、オンラインでの返品率は20~30%と言われています。こうした返品の増加は、すでに物量への課題を抱えている小売のサプライチェーンにさらなる負担を強いることになります。小売業者は、時間とリソースを必要とする返品処理という、更なる課題に直面することとなります。

消費者がオンラインで購入した商品を返品する理由には、「間違った商品が届いた」「破損した商品が届いた」「説明と違う商品が届いた」など、いくつもあります。リバースロジスティクスには、当初の注文処理プロセス(フォワードロジスティクス)よりも、最大で20%広いスペースと、多くの労働力を必要とします。そのため、こうした返品は小売業者にとってコスト増を招く可能性があります。このようなコスト増に加え、倉庫スペースが限られているケースがあるため、企業が効率的に返品を処理することは、ますます困難になっています。

効果的なリバースロジスティクスマネジメントは、健全な在庫回転率を維持し、物流費用を抑えたい小売業者にとって極めて重要です。返品の主な原因を理解し、適切なテクノロジーと戦略を導入することで、小売業者はリバースロジスティクスがサプライチェーンに与える影響を最小限に抑え、こうした課題をチャンスに変えることができます。

AutoStoreソリューションは、ピッキングの精度を向上させ、返品商品の迅速な保管、最適化された保管、優先順位付けされたピッキングを実現します。それによって、リバースロジスティクスプロセスを効果的に管理できます。ピッキング精度が向上することにより、小売業者は返品率を下げ、返品を効率的に処理し、適切な顧客に適切なタイミングで販売できるようになります。例えば、AutoStoreのユーザーであるパーツタウンでは、AutoStoreを導入して以来、ピッキング精度が50%向上し、倉庫全体のわずか7%のスペースでロボットが全製品の約75%をピッキング処理しています。

リバースロジスティクスマネジメント業務を合理化するシステムを導入することで、企業は返品という物流課題を成功の機会に変えることができます。

 

サプライチェーンのデジタル化


私たちは昨今のパンデミックから、逆境から立ち直り、変化に適応できるレジリエントなサプライチェーンの重要性を学びました。サプライチェーンの将来性を確保する方法のひとつが、デジタル化です。デジタル化とは、先進的なデジタル製品やサービスを導入して、業務を合理化し、管理を改善することです。マッキンゼーによると、AIを活用したサプライチェーンマネジメントを導入した企業では、物流コストが15%、在庫レベルが35%、サービスレベルが65%改善したことが報告されています。

投資対効果を最大化し、長期間にわたって施設の健全化を維持するためには、ビジネスの現在および将来のニーズを見越したツールやテクノロジーに投資することが重要となります。これには、デザイン、サイズ、ストレージ容量、機能などの要素を考慮することが含まれます。今、適切なツールやテクノロジーに投資することによって、企業は、時代の先端を走り続け、将来の成長に備えることができるでしょう。

将来性のあるサプライチェーンを支えるデジタル化のひとつに、倉庫の自動化が挙げられます。これらのシステムは、成長するビジネスの容量要件、ならびに注文処理要求を満たすために、容易に最適化・拡張が可能です
 

サプライチェーンの可視化への投資


サプライチェーンのデジタル化とサプライチェーンの可視性への投資は、2つの異なるプロセスです。しかし、2つは関連するプロセスなのです。サプライチェーンのデジタル化には、注文の管理、在庫の追跡、ロジスティクスの調整など、サプライチェーンのプロセスを自動化・合理化するためのテクノロジーの活用が含まれます。これには、さまざまなサプライチェーンソリューションやプロセスを統合する可能性があることも付け加えておきます。

一方、サプライチェーンの可視性への投資は、サプライチェーンで何が起きているかを常時把握し、理解する能力を向上させることと同義です。そのためには、在庫レベルや注文状況、ロジスティクスなど、サプライチェーンのさまざまな側面をリアルタイムで可視化するツールやテクノロジーを導入する必要があります。

サプライチェーンを可視化することは、いくつかの点で企業に利益をもたらします。

 
〇販売または市場動向データのリアルタイム分析の提供

〇ボトルネックと潜在的な障害の特定

〇収益に影響を及ぼす前に、予測に基づいた対策を実行

〇エラー自体の削減

〇将来の計画策定のために価値のあるビジネスインテリジェンスを提供
 

マイクロソフトの調査によると、ビジネスリーダーの51%が、収益と生産性を促進するためのデータ戦略を持っていることが分かりました。未来を予測するのは難しいことです。確かなことは、最も効率的なサプライチェーンは、データを効果的に活用してプロセスを最適化し、需要の変化を予測し、可用性を高めることが実現できることです。しかし、重要なのは単にデータを収集することではなく、さまざまなシステム間でデータを統合し、エンドツーエンドの可視性を可能にすることです。

これを達成するために、企業はシステム間で効果的に情報を伝達できるツールやテクノロジーに投資する必要があります。その一例として、AutoStoreのフルフィルメントソフトウェアであるQubIt™ Fulfillment Platformがあります。これはクラウドネイティブなソリューションで、APIファーストのアーキテクチャによって他の業務アプリケーション(サードパーティのフルフィルメント・アプリケーションやルーティング・配送システムなど)と容易な統合を可能にし、既存のITシステムを補完することができます。

サプライチェーンがますます複雑化し、さまざまなソースからさまざまなデータが入手できるようになる中、企業では、長期的な目標に基づいた意思決定を行うにあたって、サプライチェーンを可視化することが不可欠となっています。可視性がなければ、サプライチェーンの現状を完全に把握し、プロセスを最適化し、需要の変化を予測し、可用性を高める戦略的な選択を行うことは困難となります。サプライチェーンの可視化により、企業は複雑さを管理し、効率性と収益性を高めるデータ主導の意思決定を行うことができます。



<著者情報>
AutoStore グローバル・ビジネス・デベロップメント・マネージャー Clemens Schoeller (クレメンス・シェラー)氏




クレメンス・シェラーは、EMEAおよびAPAC地域におけるAutoStoreのビジネス開発コンサルティングサービスを指揮しています。15年以上の国際経験を持ち、倉庫オートメーションとロジスティクスの分野で深く多様な経歴を有しています。ドイツのFachhochschule der Wirtschaft (FHDW)で学業を修めた後、大手オートメーション・コンサルタントやシステム・インテグレーターでさまざまなコンサルティングやプロジェクト・マネジメントに携わりました。シェラーは、様々なプロジェクトの経験を通して、自動倉庫技術とシステム設計の知識を深め、AutoStoreユーザーが日々直面する運用上のニーズへの対応や、課題解決に従事しています。







RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事