2023.06.01

クイックコマース、相次ぐ撤退 OniGOは急成長、提携戦略が最適解か?


日本市場で即配サービス「クイック(Q)コマース」の成長は難しいのかーー。昨年から、有力企業の事業停止や、外資系企業の撤退が相次いでいる。その要因はコロナ禍の収束による巣ごもり需要の減退だけではない。2022年1月に国内から撤退したDelivery Hero Japanで新規事業開発本部本部長を務めていた佐藤丈彦氏は、日本ならではの商習慣や出店コスト、法規制などQコマースの成長を妨げる要因について明らかにした。そんな中、OniGOは既存の小売店舗との提携戦略に注力し、着実にサービスを拡大している。日本におけるQコマース市場の成長余地について探る。


「Qコマース」とは、最短10~15分で食品や日用品などを配達するデリバリーサービス。配送専用店舗(ダークストア)から近隣の消費者に商品を届けるモデルが一般的だ。ネットスーパーやECサイトよりも商品をすぐ受け取ることができる。

コロナ禍の巣ごもり需要拡大の追い風を受け、ヤフーが「ヤフーマート」を開始したり、外資系企業が日本に参入したりすることで、日本における「Qコマース」市場は急拡大しそうに見えていた。

だが、2022年1月にグローバルでQコマースを展開するDelivery Heroが、日本から撤退すると発表した。さらに、10月には国内で最も古くからQコマースを展開していたクイックゲットも事業停止を発表した。



今年3月には、韓国のEC大手であるCoupangも、日本におけるQコマースのサービス停止を発表し、撤退した。


日本ならではの障壁


なぜ多くの企業が国内の「Qコマース」市場から撤退するのか。日本でQコマース「pandamart」を他社に先駆けて全国展開していたDelivery Hero Japanで新規事業開発本部本部長を務めた佐藤丈彦氏は、日本ならではの細かい法律やルール、出店条件などに課題があったという。

「『Qコマース』で購入単価や利益を確保するためには商材の幅を広げていく必要がある。例えばタバコは利用頻度の高い商材だが、取り扱いには細かいルールがある。認可を得るには近隣にタバコ販売店がないことが条件になるが、営業していないのに廃業届を出していない店舗があるなど、希望の出店場所で思うように取り扱えないケースもある」(佐藤氏)と話す。


▲Delivery Hero Japan時代の佐藤丈彦氏

医薬品や酒類なども限られた出店場所や地域の行政との折衝などを考えると、取り扱うのが難しいケースもあったという。

日本ならではの地形もサービス展開の障壁となる。多くの都市部では、山と海に囲まれており、商圏が狭くなるという課題もあった。

「人口密度の高い都市でも、山や海に囲まれていると、そうではない都市と比べて商圏が3分の1くらいになってしまう。主要都市でも条件が悪く、収益化が難しいところがあった」(同)と説明する。

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