2022.07.13

【<インタビュー> ビビッドガーデン 秋元里奈社長】「食べチョク」流通総額はコロナ禍前の128倍 生産者ファーストで成長加速


サブスクにも注力


──サブスクリプションにも力を注いでいます。

食べチョクはお取り寄せやハレの日というイメージがありました。日常的にサービスを利用してもらいたいという思いがあり、サブスクにも力を注いでいます。最初は野菜の「食べチョクコンシェルジュ」から始めて、その後、果物のニーズが高まってきたことから、2種類のサービスで展開しています。旬の果物が生産者から直接届く定期便「食べチョクフルーツセレクト」は今年3月のリニューアルを機に利用者が1.5倍に増えています。

当社のさまざまなサブスクサービスを利用していただき、便利な機能などを取り入れています。サブスクに出品できる生産者は厳選しています。安定した品質を担保できるという点で、プラットフォームで培ったデータを元にしたユーザーの満足度の高い生産者とのマッチングが受け入れられています。

──サービスの構築について、アイデアを得ていることはありますか。

生産者から「こうしたことをやって欲しい」などの声をいただくことをきっかけにしています。その要望がユーザーにニーズがあるのかを検討しながらサービスに落とし込んでいます。また、一人の生産者を満足させたことで、他の生産者が苦しいことにならないということも考えています。

月単位でやるべきことの見直しを行っていて、優先順位は変わっています。当社はスタートアップなので、早くトライ&エラーを繰り返して、市場の変化を捉えて早く動くという強みを意識しています。

──メディアの露出も増えました。広報戦略についてお聞かせください。

創業時から広報の勉強をしていました。大切なのは、代表者もしくは経営陣のなかに広報に対してきちんと理解している人がいることだと思います。メディアに露出するメリットはサービスの認知を高めてユーザーと接点が持てることです。その一方で、「炎上」などのネガティブな面もあります。その時の大きな時流を読んで、経営陣が意思決定できることが大事だと思います。

記者やメディアの方とお会いする中で、自分の話した内容が記事になった時に、どこが取り上げられたのか、自分が伝えたいこととメディアを介して伝わることがどう異なったか、そのあたりを意識するようにしています。

例えば、テレビに出演するときも「何で自分が呼ばれたのか」という背景をきちんと考えています。求められていることと私たちが伝えたいことをうまく織り交ぜながら話すようにしています。

企画やサービスの初期段階から広報のメンバーが中に入っており、リリースを作成しています。社内の動きを吸い上げられるような仕組みになっています。

──採用についても強化しています。

個人のメンバーが「note」を活用してSNSを中心に情報発信しています。入社後に活躍してもらうことが重要ですので、人数だけを追わずに、きちんとマッチする人を採用するように心掛けています。そのため、ネガティブな退職はありません。そもそも組織に対して後ろ向きな人を採用しないなどの工夫をしています。

人数が増えることで、一人一人にかける時間が少なくなるため、マネジャーなどに同じ熱量が伝わるように意識しています。マネジャーに対する私の対応が、そのままメンバーに伝わります。全ては社長である私自身の振る舞いによって決まると思います。


連携による事業拡大を


──13億円の資金調達を行いました。資金の用途について教えてください。

企業との連携による事業の拡大や、マーケティング強化によるユーザー数の拡大を目指すほか、エンジニアや経験豊富なエグゼクティブ人材の採用を強化します。

地方銀行系ベンチャーキャピタルが6社参加していることが大きな特徴です。これまで全国さまざまな自治体と57件連携し、生産者の販路拡大・販売促進を行ってきました。例えば、「ここでしか手に入らないもの」を作っている高齢の生産者に参画してもらう場合、距離が近いところに自治体の方がいらっしゃればハードルが下がります。地方銀行も地元を盛り上げたいという思いがあります。

数字では見えづらいですが、小規模で伝統野菜を作っている方を中心に、生産者は減少傾向にあります。地方だと需給バランスが悪く、買いたたかれてしまい、利益がでにくい構造があります。高くてもこだわった野菜が欲しいという人は都市部に多い傾向があります。ここをマッチングすることに食べチョクの社会的な役割があり、事業を通じて社会課題を解決していきたいと思います。



【秋元里奈氏 プロフィール】
神奈川県相模原市の農家に生まれる。慶応義塾大学理工学部卒業。DeNAでwebサービスのディレクターやアプリのマーケティング責任者など4部署を経験。2016年11月に株式会社ビビッドガーデン創業。2020年4月にアジアを代表する30歳未満の30人「Forbes 30 Under 30 Asia」に選出。2020年9月に報道番組「Nスタ」の水曜レギュラーコメンテーターに就任。「スッキリ」のコメンテーターも務めるほか、「セブンルール」「カンブリア宮殿」などに出演。




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