このたび、「データに見るECの地殻変動」というタイトルでEC化率を軸としたコラムを連載する貴重な機会をいただいた。前職の民間シンクタンク在籍時、おなじみの経済産業省電子商取引に関する市場調査を長年担当し、日本のEC化率を算出してきた(現在は退いている)。実は調査業務を通じて得た気付き、考えがたくさんあり、それらをいつか伝えたいと常々思っていた。私にとって今回の連載はまたとない機会である。
いろいろ書きたいことはあるのだが、今回は初回ということもあり、基本的な話として2021年のEC化率の予想と2022年の見通しについて述べさせていただきたい。
2021年のEC市場は10%弱の伸長か
そもそもEC化率とは、分母を物販系商取引全体の市場規模、分子を物販系BtoC‐EC市場規模として算出する率である。従って、EC化率の算出作業はEC市場だけにとどまらず、個人消費全体も定量的に捕捉する必要がある点を、まずはご理解いただければと思う。
経産省の同調査と同じロジックで主要な政府統計を用いて分母を算出してみたところ、2021年は153兆1000億円。コロナ禍2年目で支出先の細かな変化は見受けられるが、総額で見れば2020年比でマイナス9000億円と微減である。よって分母を理由としたEC化率の変動はなさそうだ。
では分子はどうか。先日発表されたアマゾンの決算データによれば、2021年の日本の売上高はUSDベースで12.8%増だった。
一方、楽天の決算発表によると、国内EC流通総額は10.4%増だった。それらに加え、他の上場企業の決算発表やEC事業者の生の声、大手宅配便事業者の配送実績等をもとにすれば、やや粗い予測だが2020年比で10%弱の伸長率、実額13兆円台前半あたりと予測する。
仮に伸長率を8.0%と置くと、2021年のBtoC‐EC市場規模は13兆2120億円、EC化率は8.63%となる。いずれ経産省が公式発表するだろうが、大きく的を外してはいないだろう。
2020年は前年比20%以上の伸長率であったため、その反動が来ているともいえるが、いまだにこのレベルで成長する産業は他に何があるだろうか。