2024.06.26

中小企業の50.6%が越境EC実施、EC化率は23.4% ペイパルが中小企業のEC活用実態を調査

グローバルなオンライン決済サービスを提供するペイパルはこのほど、2024年4月に実施した「ペイパル 中小企業によるEコマース活用実態調査2024」の結果を発表した。ビジネスにおいてECが占める割合は約23%、越境ECを行う企業は過去3年で2倍に増加したことなどがわかった。

ペイパルは2024年4月、中小企業の現状と今後の見通し、およびECの実態を明らかにする目的で、日本全国のECを行っている中小企業(従業員数4人~299人)における意思決定者(310名/企業)を対象に「ペイパル 中小企業によるEコマース活用実態調査2024」を実施した。

中小企業が過去1年間に影響を受けた社外の要因をたずねた問いでは、 「物価の高騰」(50.0%)、「景気」(34.8%)、「為替レート」(31.0%)がトップ3となった。



過去1年に影響を受けた社内の要因としては、「人手不足」(35.5%)と「価格転嫁」(35.2%)がいずれも35%を超えた。次いで「賃上げ」(27.1%)、「新規開拓不足」(21.0%)が続いており、現在の中小企業は資金面での苦労が大きいことがわかるとしている。

円安による影響を尋ねたところ、「仕入れ価格、その他コストの増加」(49.0%)がもっとも多い回答を得た。次いで「売上高の減少」(13.9%)となっており、中小企業が円安による直接的なマイナス影響を受けていることもわかる結果となった。

ペイパルは、これらの結果から、中小企業は新規開拓をしていきたい意向はあっても、資金や人手不足などが影響し、攻めの一手を打ちにくい状況にあることが推測できるとしている。

ECへの取り組みについてたずねたところ、中小企業の売上高全体に占めるECの割合は、全体の約1/4となる23.4%だった。事業全体からみると、ECはまだまだ成長の余地があると言えることがわかった。

越境ECを行っている中小企業の合計は50.6%だった。2021年にペイパルが実施した調査で当時の越境ECの実施率が28%だったことと比較すると、過去3年で越境ECを行う企業は約2倍に増加した。また、「現在、越境ECを行っていないが、今後1年間に行う予定がある」と回答した企業は8.1%となり、1年後には約60%の中小企業が越境ECを行っていることが見込まれる結果となった。



ECにおける国内顧客と海外顧客(越境EC)の構成比は、 国内の平均が90.6%、海外の平均が9.4%だった。一方、ECの売上構成比をみてみると、国内からの売上が85.1%なのに対し、海外からの売上は14.9%となり、顧客単価は国内よりも越境ECのほうが高いと言える結果となった。これらの結果を受けペイパルは、物価高騰や円安の背景も踏まえると、中小企業にとって自社のビジネスを成長させる原動力の一つとして、越境ECを始めるタイミングなのかもしれないとしている。

中小企業がECを行う↑での課題をたずねた問いでは、「物流・資材コストの増加」が34.8%と最も高い結果となった。これは「物価の高騰」が影響していると考えられるとしている。2位以降は、「対応可能な社内人材の不足」(29.0%)、「多様な決済手段の導入」(28.1%)、「ECサイトのセキュリティ対策」(28.1%)、「在庫・発送管理の煩雑さ」(26.5%)、「専門的な知識不足による不安」(25.8%)、「運用費とメンテナンス時間の増加」(25.8%)といった項目が拮抗して並び、中小企業にとってECにおける課題は、資金、人材、決済、セキュリティ、専門的知識、効率といった複数の要素が絡み合っていることが分かった。

課題の3番目に挙げられた決済手段については、QR決済やあと払いといった新しい決済手段が続々と登場している中で、顧客のニーズに応えるために「多様な決済手段の導入」に対する必要性をこれまで以上に感じていることがみてとれるとしている。

ECサイトの決済サービス選定時の基準についてたずねたところ、「使いやすさ」(26.8%)、「決済時の手数料」(25.2%)、「セキュリティの高さ」(24.5%)、「初期費用のコスト」(24.2%)が25%前後と、こちらも複数の項目が拮抗する結果となった。これらの結果から、中小企業は「ユーザー数の多さ」(19.7%)や「知名度」(8.1%)より、費用面で導入や運用がしやすく、かつセキュリティの高い、使い勝手の良い決済サービスを求めていることが分かった。



2022年から始まったと言われる現在の円安トレンドは、多くの日本企業のビジネスに深刻な影響を与えている。中小企業も同様に、円安の影響を受けた物価や仕入れ価格の高騰、賃上げ、価格転嫁が思うように進まないなどの理由で、各種投資にはブレーキをかけている中、一方で、海外市場に目を向け始めている事業者も増加している。本調査においても、中小企業の越境ECの実施率は2021年の調査から約2倍に増加。「今後1年間に行う予定がある」と回答した8.1%と合わせると約60%にも上ることから、中小企業による越境ECビジネスの伸長が示唆される結果になったと分析している。

ペイパル 日本事業統括責任者 ピーター・ケネバン氏は、「今回の調査では、厳しいビジネス環境においても、中小企業の皆さんは意欲的にECビジネスに取り組んでいることが分かりました。特に越境ECの伸長率は約2倍となり、世界市場に目を向けている企業が増えています。一方で、ECの課題も多岐にわたっていました。資金、人材不足や運用効率、決済の多様化に加え、越境ECの課題である言語や物流なども含めると、その解決は同時に行っていく必要があります。ですが、より優れたテクノロジーサービスの活用や越境ECに強みを持つパートナーとの連携により、そのハードルはクリアできるのではないでしょうか」とコメントした。

ペイパルは、今回の調査結果に基づき、日本の中小企業がさらにビジネスを成長させていくために効果的だと考えられるポイントとして、「ECビジネス」「越境EC」「決済サービス」を挙げた。

本調査結果の全文は、ペイパルのWebサイトでPDFにて配布している。




RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事