2024.06.21

【連載<第4回>迫る!3Dセキュア2.0義務化の真実】JCA実務指針を明確化 ECへの対応呼び掛け強まる

連載の第1~3回では、決済代行会社の話を中心に「EMV3ーDセキュア(S)」の導入現状をまとめ、EC事業者の導入が他の業種に比べてやや遅れていることが分かった。
 
ECでのクレジットカードの不正利用を防ぐ規格「EMV3ーDS」導入期限は2025年3月。これに向けて、業界関係者への呼び掛けを強めているのは、日本クレジット協会(JCA)だ。JCAでは実務レベルでの対応指針の策定も進む。
 
2024年3月に公表した「クレジットカード・セキュリティガイドライン5.0」は、EC事業者やカード会社などにそれぞれ求められる役割を示した「実務上の指針」の位置付けだ。
 
5月31日には、カード発行会社や決済代行会社(PSP)に向けて「加盟店におけるEMV3ーDセキュア導入・運用ガイダンス 関係者版1.1版策定のお知らせ」を公表。内容は一般には非公開だが、カード会社などを通じて加盟店への対応を求めているようだ。
 
クレジットカードセキュリティーの対応についてJCAが強調するのは、「線の考え方」だ。
 
不正利用対策としてJCAは、「まず不正ログインの対策を講じるように、加盟店にお願いしている。配送時にチェックもできるのではないかという点から決済後の不正の認知も重要。不正検知の購買行動、検索履歴など情報を用いることで、不正取引かどうかの可能性を検知できる」(事務局)と説明する。その上で、JCAは「EMV3ーDS」をはじめとして、「カード決済前と決済後」の双方で、複合的な対策を講じることを呼び掛けている。
 
「EMV3ーDS」導入義務化は、現時点では法律に伴うものではないが、2025年4月からは法律上で運用していく見込みだ。
 
EC関連業界団体との取り組みもある。「JADMAなどの業界団体との共同で啓発はできるが、直接加盟店への呼び掛けはできない。できることとしてはマスコミ対応や、要望あれば講演会に行って説明していく形だ。それでもJADMAとは、不定期に意見交換会などを行っている」(同)と話している。


JCAはガイダンス公表


JCAは5月31日、「加盟店におけるEMV3ーDセキュア導入・運用ガイダンス 関係者版1.1版策定のお知らせ」を、会員であるクレジットカード会社や決済代行会社に公開した。JCAによると、このガイダンスには「EMV3ーDS」の未導入が例外的に認められるケースのほか、特定の条件を満たせば加盟店の判断で「EMV3ーDS」の認証が行えることも示されているようだ。
 
JCAは文書の詳細な内容を公開しておらず、その理由について「一般公開することによって、EC加盟店を不正利用する第三者に手の内を知られる可能性があり、明らかにはできない」と説明した。
 
EC加盟店は、契約している決済代行会社やカード会社に問い合わせることで、ガイダンスの詳細についての説明を受けることができるとしている。


一部加盟店に被害集中


JCAによると、クレジットカードの不正利用の被害額は2020年ごろから増加が目立ち、2023年は540億円に上った。不正利用被害のほとんどがEC加盟店で発生しており、被害額の約8割を占める。
 
カード業界の関係者は、「クレジットカードの不正利用被害はEC加盟店の数千店に集中して発生しており、それらの加盟店の被害を抑制すれば、被害額の大幅減につながる可能性がある」と明かす。
 
EC向けの対策について、JCAは「EC市場の特徴として、加盟店は出入り自由で、規模の幅が大きい業界だ。そうした中でカード会社・決済代行事業者の限られたパワーを生かすため、ティア(階層)に分けて対策を行っている」(同)と話す。
 
一方で、EC事業者にはセキュリティー対策への対応が、導入コスト負担やかご落ちの高まりにつながるとの懸念もくすぶる。
 
あるEC企業は「EMV3ーDSだけでなく、不正検知サービスの導入などは"守り"への投資。直接的な売上アップにつながりにくいため、対応が遅れるという面は否めない」と打ち明ける。
 
こうした声に対し、ある関係者は、「EC業界は成熟しているため、消費者の理解は得られやすいのではないかと思う。セキュリティー対策には、購買行動や検索履歴などの情報を用いるため、EC事業者の業績への影響はあまりないのでは」と指摘している。



■<第1回>2024年4月時点で対応済みは3割か 今後ベンダーに開発が集中のおそれ
https://netkeizai.com/articles/detail/11418

■<第2回>かご落ちリスクは商材次第 定期購入はリスク低いか?!
https://netkeizai.com/articles/detail/11543

■<第3回>本紙独自調査!EMV3ーDS対応済みは42%
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■<第5回>カート側は個別対応も 追加コスト回収する施策強化
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