2024.04.26

【責任者に独占取材】ヤフーショッピング、「無在庫転売」にメス 在庫証明書の提出を要求

LINEヤフー ヤフーショッピング安全対策部 栗原親史部長


LINEヤフーが「ヤフーショッピング」の不正対策について本格的にメスを入れた。LINEヤフーは4月15日ガイドラインを改定し、「無在庫転売」に関するルールを厳格化した。新たに個人事業主が「ヤフーショッピング」において、商品を500点以上出品する際、”在庫証明書”の提出を求める。LINEヤフーのヤフーショッピング安全対策部・栗原親史部長に「無在庫転売」の実情と対策内容などについて聞いた。



2023年夏頃より深刻化


ーー2023年夏頃より、「無在庫転売」について問題が深刻化している印象を受ける。LINEヤフーとしてどう捉えているか?

当社は日頃から「ヤフーショッピング」の監視を行っているが、確かに2023年の夏頃から、「無在庫転売」を行うストアや、それに伴って起こる問題が多発してきたと思っている。

「無在庫転売」とは、言葉の通り、在庫を所有していない状態で商品の注文を受けることを指す。例えばだが、ある洋服を出品し、注文を受けたら、別のECモールで注文者の情報を入力し、そこで購入して、注文者の住所に送付するという仕組みだ。

在庫を持っていないため、もし他のECモールに商品がないときは、注文者にキャンセルの連絡をすることになる。結果として注文者の手元に商品が届かないということになる。以前より、「無在庫転売」は問題だと考えており、さまざまな対策を考えていた。

ーー具体的に厳格化したルールについて聞きたい。

「ヤフーショッピング」に出店している個人事業主のみを対象に、500点以上商品を出品する際は、当社が所定する審査を受けていただくことにした。審査については、当社で出店者の運営状況の確認を行った上で、在庫場所の資料の提出のほか、確実に手元に在庫があるかを写真で撮って送っていただく内容となっている。出店時の審査においても同様に在庫の証明を行っていただくようにしており、無在庫転売目的の出店を排除している。

ーー「ヤフーショッピング」においては、「優良配送店舗」が検索上位に表示される。今回の「無在庫転売」が検索で上位に来ることもあったのか?

ある商品を検索した際、「無在庫転売」の商品が検索ページで一覧表示されてしまう。この結果、ユーザーはどこのストアで商品を購入するべきなのか(販売価格が100円~5000円までと幅広い価格で出品することもある)分からないことにつながる。「ヤフーショッピング」の規律を遵守して、きちんと店舗を運営しているストアには迷惑しかない現状だ。

ーー現在の「無在庫転売」は日本国内での転売がメインなのか?

「無在庫転売」の手法としては、国内の他のECモールで購入して、そこから注文者の手元に送る方法と、海外から直送する方法があると思っている。どのような方法で海外から転売の形で日本人に送っているかは、まだ明らかになっていない。割合は国内での転売が大半を占めており、海外からの直送はまだそこまで多くの比率を占めていないと考えている。


出店料徴収は考えていない


ーー「ヤフーショッピング」が狙われる理由として、出店料や月額手数料が無料なことが関係していると思う。今後、「無在庫転売」がきっかけで、出店料が発生することはあるのか?

現時点では考えていない。前身となるヤフーは2013年10月、「eコマース革命」を掲げ、「ヤフーショッピング」の出店料とシステム利用料の無料化を実施した。多くの企業EC分野への進出を支援し、気軽にECモールで商品を販売できることを目指した。

今後も現時点ではこの路線を変更することは考えていない。「ヤフーショッピング」においては、「プロモーションパッケージ」を提供しており、このパッケージからの売り上げを軸に考えている。「プロモーションパッケージ」は売り上げの3%を支払うと「ヤフーショッピング」出店者の売り上げ向上やストア運営をサポートする販促オプションツールのことだ。

ーー他にも現在注力している不正対策はあるか?

「サクラレビュー」の対策を強化している。「サクラレビュー」とは、商品を購入していないにも関わらず、高評価なコメントがつけられるレビューのことだ。2023年より、「ヤフーショッピング」において、新規出店企業が、商品を新規出店したとき、新規出品にも関わらず、「星5」などの高評価のレビューが付くことがあった。これは明らかにおかしいことで、LINEヤフーとしても対策に注力している。

最近では、商品を高評価するよりも、店舗の評価を高評価する傾向がある。店舗もレビューで高評価が集まると検索結果で上位に表示できる。おそらくだが、ストアが業者に依頼して、一斉に高評価のコメントを残していると思われる。今後も社内の人材が「ヤフーショッピング」の監視を行い、「サクラレビュー」を含め、さまざまな不正事項に対処し、適切なモールになるよう徹底していく。




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