2024.03.11

【創業60周年インタビュー <前編>】タンスのゲン 橋爪社長・工藤副社長「シフトチェンジと震災が契機」

橋爪裕和代表取締役社長(左)、工藤直也取締役副社長(右)


1964年に創業し、現在は家具やインテリア、家電などのEC事業を手掛けるタンスのゲン。2024年1月13日で創業60周年を迎えた。60周年を迎える前の2023年4月に経営陣を刷新。当時、専務取締役だった橋爪裕和氏が代表取締役社長に昇格し、取締役副社長には工藤直也氏が就任した。会社を先導している橋爪社長と工藤副社長が本紙の取材に応じ、「タイミング良く、方針や事業を変えてきたことが成長の要因だ」と述べた。前編(全3回)では両氏に、創業時の話やEC事業を開始した経緯などを聞いた。


【<中編>「売り上げゼロからの復活劇」】
https://netkeizai.com/articles/detail/11050

【<後編>「3本柱で売上高1000億円へ」】
https://netkeizai.com/articles/detail/11114


メーカー、実店舗、ECと業容変化


――創業60周年、これまでの振り返りを聞きたい。

橋爪:まず、60周年を迎えることができたことを従業員、関係各社に御礼申し上げたい。

創業した60年前の1964年当時は、家具メーカーだった。社名にも明記されている通り、たんす屋。たんすの製造販売を通じて、婚礼家具などのニーズに応える形で成長してきた。

しかし、1990年頃、消費者のライフスタイルが変化し始めた。その変化でたんす自体の需要が低迷し雲行きが怪しくなった。すぐに、家具メーカーから小売業にシフトした。このシフトチェンジが大きなターニングポイントだった。

工藤:1991年に約330平方メートルの実店舗の展開を開始し、小売りが始まった。2つの路面店を展開し、そこからたんす以外の家具類の販売を開始。その後、10年間、路面店で販売を続けてきた。

しかし、2000年に大規模小売店舗改正法(大店立地法)が施行され、大店法が廃止された。これによって、大きな面積を持つ小売店が地方に進出できるようになり、当時、九州エリアでは、ホームセンターのナフコやインテリアのニトリなどが進出し、大きな店舗が相次ぎ出てきた。

当社の店舗は、大規模店舗とはほど遠い約330平方メートルしかない。この面積では、大規模小売店に勝てるわけがなく、品揃えという部分でも、当社が顧客の要望を応えることが難しかった。

橋爪:2002年、当社の現会長が、オンラインでネット通販を始めようと決めて通販が始まった。

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▲インタビュー中の橋爪裕和社長

始まりは楽天市場。ここから当社がEC専業企業としてスタートした。ありがたいことに、開始から2年後の04年には実店舗の売り上げと同じくらいの成果が出せた。

記憶だと、2002年7月15日から楽天市場がスタートし、その月の売り上げが20万8000円。画像一枚と説明文だけの簡易的なサイトだったが、翌月からの売り上げは月100万円を超えていた。

当時、楽天大学というセミナーがあった。現会長が足を運んで積極的に学び、ネット通販に本気で取り組んだ。当社以外もセミナーに参加してネット通販を始めた会社が多数あったが、ほとんどの企業が断念したようだ。

工藤:当社は専門家具屋だったこともネット通販がうまくいった要因の1つ。家具の構造などが非常に詳しいこともあり、実店舗での経験や接客をそのままネットに展開していった。

ネットに詳しい企業がネットを始めて軌道に乗せた形ではなく、家具に詳しい企業がネットを始めたからうまくいったという具合だ。

この時から、ネット通販も対面販売と同じで、画面の向こうには人がいることを念頭に通販事業を展開していた。この考えは今もしっかりと受け継がれている。

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