2024.03.04

【経済産業省に聞く】2回目の「大臣評価」でオンラインモールに求めた改善とは?

経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 デジタル取引環境整備室 室長 仙田正文氏(左)、法令専門官・弁護士 皆川征輝氏(右)


経済産業省は2月2日、総合物販オンラインモール事業者などを対象にした、経済産業大臣による「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性についての評価」(大臣評価)を公表した。総合物販オンラインモールでは、「Amazon.co.jp」を運営するアマゾンジャパン(アマゾン)、「楽天市場」を運営する楽天グループ(楽天)、「ヤフーショッピング」を運営するLINEヤフー(ヤフー)が対象となっている。同評価は、事業者が提出した報告書の内容、デジタルプラットフォーム取引相談窓口(相談窓口)に寄せられた情報、有識者やデジタルプラットフォームを利用する事業者の意見を踏まえたものだ。今回の大臣評価の内容について、商務情報政策局 情報経済課 デジタル取引環境整備室の仙田正文室長と、法令専門官・弁護士の皆川征輝氏に詳細を聞いた。



――今回の大臣評価の概要は?

仙田:今回の大臣評価は、デジタルプラットフォームとこれを利用する事業者との取引関係の改善を図る「デジタルプラットフォーム取引透明化法」(透明化法)に基づくものです。規制対象のデジタルプラットフォーム各社は、大臣評価を踏まえ、運営改善に努めなければならないとされています。大臣評価は、オンラインモールとアプリストアに対しては2回目となり、デジタル広告については初めてとなります。

オンラインモールについて昨年度、最初の大臣評価を公表しており、本年度は、それに対して各オンラインモール事業者がどのような取組をしてきたか重点的に報告を求め、事業者ヒアリングをモニタリング会合の場で実施しました。その内容を踏まえて、新たな大臣評価を公表させていただきました。

初回の大臣評価で取り上げられた内容がオンラインモールにおける課題の全てだとは思ってはいません。経産省の委託事業として日本通信販売協会(JADMA)が運営している相談窓口には引き続き、オンラインモールを利用される事業者からの声が寄せられており、その声から新たな課題が抽出されています。

今回は、前回の大臣評価で各社に求めた内容を、さらに深掘りすること、新しい課題にも積極的に対応することを意識いたしました。

新しい課題に機動的に対応できるところは、透明化法が採用する共同規制やアジャイル・ガバナンスのメリットだと考えています。

相談窓口に寄せられた利用事業者の声が、モニタリング会合での議論につながり、今回の大臣評価でオンラインモール事業者に具体的な取組を求めるところまでつながったと思っています。

――各オンラインモールについて、評価している点と改善を求める点は?

皆川:全体的な傾向として前回の大臣評価に引き続いて、規約やガイドラインなどの取引条件の情報開示に向けた取り組みが進んだ印象です。その他には、例えば、アマゾンに関しては、苦情・紛争処理状況に関する情報を詳細に開示したと思います。

また、楽天、ヤフーに関しては、自社・関係会社優遇に関する内部監査の実施計画が報告されました。

各社からさまざまな取組みが報告されているものの、外部からは各社の取組の効果等が分からないことから、客観的に検証できるようにしてほしいという指摘をしました。このような要請を受けたものとして評価できる取組といえます。

改善を求める点に関しては、詳細は後述しますが、総評としては、利用事業者の声をよく聞いて、課題の原因を真摯に分析し(それは、各社のビジネスモデルに由来することかもしれないですし、規約などが膨大かつ曖昧であることによるものかもしれません)、適切に対応すること、また、課題に対してとった取組について外部的に検証できる形で報告してもらいたいと考えています。

――アマゾンに対して個別具体的に期待することが書かれているが、その内容は?

皆川:主にビジネスモデルや同社独自の仕組みによって発生していると思われる各種課題についての指摘をしています。

例えば、返品・返金に対してアマゾンが受付作業(商品がアマゾンの定める返品条件に適合しているかの確認等)を行うことになっています。これによって、出品者の受付業務の負担は軽減されるかもしれませんが、一方で、出品者の方からは、意図していない受付をされてしまうという声が寄せられました。また、FBA(フルフィルメント by Amazon)やマーケットプレイス保証などで独自のルールもあります。このような返品・返金の問題に対して、ルールの明確化を求める指摘をしています。

1商品1カタログの仕様となっています。それによる相乗り出品に関しても懸念の声が寄せられています。1商品1カタログは消費者にとっては商品を見つけやすいといった面もあると思いますが、出品者にとってはカタログの修正権限が複雑になっていたり、他の出品者が偽物を販売していると、そのカタログ全体の信頼性が下がってしまうことがある等の問題も発生しています。

また、アマゾンの規約によると、おすすめ出品にのる(カートを取る)ためには、他のECサイトよりも販売価格を安くすること等が求められています。このような販売価格に関する要請について懸念の声がありました。

さらに、販売手数料がカテゴリーごとに分かれていることによる課題もあります。出品者は出品時にどのカテゴリーで販売するかを選べますが、販売手数料のカテゴリーはアマゾンが定めるため、出品のカテゴリーと販売手数料を定めるカテゴリーとが一致せず、予想していない手数料が請求されたという声が寄せられています。

これらの懸念・課題については、利用事業者の不利益の緩和に向けた早急な対応に加え、利用事業者からの相談・苦情がある際は、丁寧な説明や真摯な対応を行うように求めています。

――提供条件やその変更内容をわかりやすく開示する取組・工夫に対する各オンラインモールの対応状況は?

皆川:オンラインモール各社は規約などを集約したページを作るようになっています。楽天とヤフーは一昨年から実施しており、アマゾンは昨年8月に「出品販売に関する重要な規約・ポリシー一覧」を一般公開しています。

そのほかにアマゾンは、専門チームが利用事業者の満足度を測り、その声を踏まえて規約を微調整したり、ガイダンスを提供したりしていると報告しています。

ヤフーもそうですが、問い合わせを踏まえてFAQをアップデートしたり、個別に不明点を説明したりしています。

一方で、出店者のもとにはオンラインモールからさまざまな連絡がきているところ、規約の変更やアカウントに関する通知など重要な通知が埋もれてしまって気付かなかった、といったケースもあります。

まとめページ等で全部把握できれば良いのですが、大手オンラインモールのルールは複雑ですので、検索性の向上や分かりやすさを追加で求めています。

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