――利用事業者との対話プロセスにおいて各オンラインモールが注力していることは?皆川:アマゾンには、Voice of Sellers(VOS)というプログラムがあり、利用事業者の声を集約・保存して、サービスの品質向上に反映させるという取り組みを行っているという報告を受けています。
利用事業者の窓口となるテクニカルサポートについては、対応する人によって回答が違うなどの声が相談窓口に寄せられることもありますが、サービスレベルの向上を図っているという報告もされています。
楽天に関しては、SKU単位で商品データを登録できる「SKUプロジェクト」が2023年4月から始まっています。利用事業者の声を踏まえながら、個別に対応したり、調整を進めている旨の報告を受けています。
ヤフーにおいても、「優良配送制度」を提供するにあたって、利用事業者の要望フォームを作成し、そこに寄せられた声を施策に取り入れるという取組を実施しているとの報告がされています。
――利用事業者との相互理解を促進するための手続き・体制整備に対する各オンラインモールの取り組みは?皆川:アマゾンに関しては出品停止などの措置の取り組みについてモニタリングしており、利用事業者の声を踏まえて問題点を洗い出して修正しているようです。担当者レベルの声を拾い上げて改善に生かす「Gembaプログラム」を導入しているという報告もされています。
楽天に関しては、先ほども申し上げた内部監査のほかに、外部有識者の声を聞く「楽天市場 品質向上委員会」の提案について、一部を除いて、すでに対応済みであることも報告を受けています。
ヤフーに関しては、退店や休店の数値などを数カ月ごとにチェックし、事後検証したり、アンケートをとったりする取り組みを実施しています。利用事業者の声を踏まえて、運営管理ツール「ストアクリエイター」のユーザーインターフェースの向上などにも取り組んでいるとの報告を受けています。
これらはいずれも良好な取組ですが、定量的・具体的に改善状況を報告されている取組もあれば、何がどう変わったのかが見えにくい取組もあります。
件数が多ければいいというものではないと思いますが、より具体的な取組の事例や、検討可能な形での報告を求めています。
――苦情処理・紛争解決に向けての各オンラインモールの取り組みは?皆川:アマゾンについては、テクニカルサポートに寄せられた利用事業者の声を管理部門が分析・検討したりしており、改善に取り組んでいるとの報告を受けています。
ヤフーは定形的な問題はマニュアルをもって早急に解決できるようにしています。マニュアルを作成している点は他のオンラインモール事業者も同様ですが、ヤフーについては、「48時間以内に一次回答する」などの目標を設定しており、2022年度は71.9%の問い合わせに対して、その目標をクリアしたとの報告がされています。
楽天に関しては、2022年度から引き続き、コンプライアンス部門が中心となって、トラブルに発展しそうな案件は早期解決できるように対応しているとのことです。また、透明化法を踏まえて、苦情・紛争窓口を設置し、その窓口の認知向上を図る取り組みにも注力しているとの報告があります。
もっとも、例えば契約解除の通知においては、苦情申し立ての窓口が分かりにくかったり、不服申立ては書面での提出を求めるなど手続きが煩雑だったりする面もありました。そういった部分については、通知の見直しなどを行い、より分かりやすく、利便性高く対応するように求めています。
――各オンラインモールの利用事業者から上がってきた相談や苦情の内容は?皆川:前に述べましたように、アマゾンに関して、相乗り出品の仕組みへの不満や、販売手数料が一方的に決まってしまうという点に関する相談が寄せられています。
また、アマゾン以外のプラットフォームも含めて、無在庫転売に関する相談も増えています。例えば、無在庫転売の事業者がツールを使い、他店の画像や情報を無断で流用して、大量に出品するという問題が発生しています。
それ以外にも返品・返金の問題や売上金留保の問題などに関しては、引き続き相談が多く寄せられます。
――今後の各オンラインモールの取り組みに期待することや利用事業者に伝えたいことは?皆川:今回、大臣評価で指摘した点について各社で取組を進めてもらいたいのはもちろんですが、それがすべてではないと思っています。こちらが把握できていない課題も、利用事業者からの声から積極的に見出し、それに対する対応を進めていただきたいと思います。特に苦情対応や内部監査の取組に期待しています。
オンラインモールでの取引上の課題解決のためには、オンラインモール任せにするのではなく、利用事業者の皆さまの役割も重要です。今年度の有識者会合においても、オンラインモールにおける取引上の課題を適切に把握し、評価していくためには、実際にオンラインモールを利用して取引をしている利用事業者の声から分かるファクトやエビデンスが重要だといった内容の意見が出ました。
そういった観点からは、利用事業者の皆さんにも課題意識を持っていただき、積極的にデジタルプラットフォーム取引相談窓口に相談や情報提供を寄せていただきたいです。
全部の課題を一気に解決できるかというと、そうではないかもしれないですが、声を上げていただくことを期待しております。
仙田:大臣評価においても、デジタルプラットフォーム提供事業者に対して、実際に利用事業者に提示している説明文や通知文、書式などを積極的に開示することを求めていますが、こうしたプラットフォーム側からの実務面での情報開示に加え、利用事業者の実務から見たプラットフォームの取組に対する評価が重要だと考えています。
例えば、規約を紹介するページや規約変更の案内などが、利用事業者にとって分かりやすいかどうかは、やはり利用事業者でないと評価しにくいところがあると思います。
同様に、デジタルプラットフォーム提供事業者が利用事業者との対話に取り組んでいるとしても、その内容や、聞く姿勢については、利用事業者の目線で率直な意見をお聞かせいただきたいと思っています。
課題解決につなげていくためには、ファクトやエビデンス、これに基づく評価を積み上げていくことが大事になります。利用事業者の声がなければ、そこからオンラインモールの課題を検証し、改善すべき点は改善を促していくというプロセスが効果的に働かず、結果として利用事業者の苦情の解決や要望の実現が十分に進まないことになります。
利用事業者には、オンラインモールへの苦情や要望は、それぞれのオンラインモール事業者に躊躇せず伝えていただきたいと思いますし、それでは解決・実現しない場合はぜひ経済産業省の相談窓口に声を寄せていただきたいと思います。
■特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性についての評価https://www.meti.go.jp/press/2023/02/20240202005/20240202005-d.pdf■デジタルプラットフォーム取引相談窓口(オンラインモール利用事業者向け)https://www.online-mall.meti.go.jp/