2024.02.27

【アパレル「3D活用」の可能性を3社に聞く】生産効率化に加え、バーチャル試着やメタバースに広がる商機

MNインターファッション 企画開発部 兼 デジタルクロージング 代表取締役社長 御子柴良太氏(左から1人目)、ユカアンドアルファ 東京営業部 インストラクター マネージャー 笛木愛美氏(同2人目)、ソフトバンク IT&アーキテクト本部 アドバンスドテクノロジー推進室 クリエイティブ制作課 課長 嘉数翔氏(同3人目)、イーストマン・マイケル氏(同4人目)


アパレル業界向けに3D技術導入を推進する3社に「3D活用の現状」「導入のハードル」「将来的な可能性」について聞いた。ユカアンドアルファは自社製品や韓国の3Dソフトウェア「CLO」の代理店販売などアパレル向けソフトを提供している。日鉄物産の繊維事業と三井物産アイ・ファッションの事業統合により誕生したMNインターファッションは、繊維商社としてOEM/ODMで製造を請け負っている。MNインターファッションはデジタル事業を行うデジタルクロージングという子会社を設立し、「CLO」の導入支援や3D技術活用の支援も手がけている。ソフトバンクはMNインターファッションとも協力しながら、3D技術を活用したバーチャル試着サービスの開発を進めている。アパレル企業への3D技術導入の最前線に立つ、ユカアンドアルファ 東京営業部 インストラクター マネージャー 笛木愛美氏、MNインターファッション 企画開発部 兼 デジタルクロージング 代表取締役社長 御子柴良太氏、ソフトバンク IT&アーキテクト本部 アドバンスドテクノロジー推進室 クリエイティブ制作課 課長 嘉数翔氏とイーストマン・マイケル氏に教えていただいた。



――アパレル業界における3D技術の導入状況は?

笛木(ユカアンドアルファ):アパレル企業の主な導入の目的としては、商品企画の効率化やサスティナブルな生産体制の実現、ECの販売促進などがあります。

特に企画業務においてコミュニケーションを円滑にするための活用が多いです。ODMと呼ばれる企画を請け負う会社や、繊維系商社などでは、かなり高い比率で導入が進んでいます。

ただ、企画業務の特性上、情報がなかなか外に出ることはありませんので、具体的な利用状況は導入企業から公開されるケースはほとんどありません。各社が着実に活用を進めているのは間違いありません。

――3D技術の具体的な導入事例は?

笛木:まず3D化をしていきましょうという原点として、アパレルの製品を作るには2Dの型紙が必要になってくるんですが、そのデジタル化が進んでいます。それが企業によっては、デジタル化の延長として3D化しましょうという段階に来ています。

3D化したデータのさらなる活用法としてECでの活用が出てきます。デジタルクロージングさんの3DCGの商品カタログやソフトバンクさんのバーチャル試着なども、その活用の一例だと思います。

御子柴(MNインターファッション):デジタルクロージングとしては、3DCGで商品カタログの制作やセールスプロモーションでの活用を行うケースがあります。特にスポーツアウトドア業界において活用が進んでいます。

例えば、レディースのフリルやレースがたくさん付いたスカートなどは、CGだと再現がすごく難しいです。

一方で、ナイロンのジャケットや、フーディー、ジャージーなどは、CGで写真と変わらないぐらいの再現性を持たせることができ、立体的に見せることも可能です。そういう面もあり、アウトドアスポーツでの活用が非常に進んでいるのだと感じています。


▲3DCGで商品カタログを制作。スポーツアウトドア業界で導入進む

――3D技術導入のハードルは?

御子柴:人材の課題はあると思います。というのは間違いなく1つネックですね。「CLO」というソフトを使いこなすのは、決して簡単ではないです。2DのCADデータを扱う専門知識と3Dモデリングをする専門知識の両方が一定程度必要となります。その知識の習得は簡単にできるものではありませんので、そこが導入の障壁にはなっていると思います。そういった課題を解消するために、当社のような会社が支援をしています。

笛木:「CLO」の操作性は3D着装シミュレーションシステムの中では、比較的簡単といわれているものではありますが、幅広い業務で使いこなしていくとなると、簡単ではない部分もあります。

嘉数(ソフトバンク):バーチャル試着を研究開発する上でさまざまな企業からお話を伺ったところ、そもそも商品の3Dデータを持っていない企業が多いことが分かりました。当然、3Dデータを作成するためには、コストがかかります。全シーズンのSKUで3Dデータを作ろうと考えると、数千数万という量がありますので、負荷が大きくなります。そのため、1つの用途だけで3Dデータを活用するのではなく、さまざまな用途で活用できるようになると、コストパフォーマンスが上がり、導入が進むと期待できます。

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