2023.11.15

【ベースフードなど製品回収問題】「D2Cの急成長に伴う共通の落とし穴」 D2C専門家は「OEMのキャパシティー限界」を指摘


D2Cメーカーの、製品事故や回収事例が頻発している。完全栄養食ブランドを運営するベースフードは10月23日、特定の製造工場で製造した、一部ロットの商品について、カビが多発する事案が発生したと発表した。スマート家電メーカーのアンカージャパンでは10月、行っていた、一部のロボット掃除機やポータブル冷蔵庫のバッテリーの回収・交換について、対象製品の範囲を拡大すると発表した。美容機器メーカーのMTGも、美容ドライヤーの一部製品で、内部のファンの部品が破損する事故が多発しているとして、交換対応を行っている。これら製品トラブルのすべてに共通しているのは、対象となった商品の製造を、国内外のOEMメーカーに委託していたという点だ。D2Cを始めとした企業のコンサルティングを手掛けるライフェックスの工藤一朗代表取締役は、「こうしたOEMメーカーが製造した製品に関する事故は、少なくない。多くの急成長するD2C企業にとって落とし穴となっている」と警鐘を鳴らしている。



OEM工場が品質チェック


ベースフードはこのほど、本紙の取材に対して、カビが発生したのは、同社が製造を委託しているOEM工場で製造した製品だったことを明らかにした。発表資料では、「特定の製造工場(リョーユーパン唐津工場)で製造していた製品群」であったとしている。

ベースフードでは、製品の品質管理について、委託先のOEM工場とベースフードの双方で、共有・連携しながら進めているという。ただ、基本的には、OEM工場が品質管理の大部分を担っているようだ。

アンカージャパンでは8月、ロボット掃除機や一部のポータブル冷蔵庫のバッテリーにおいて、発火のおそれがあると発表。回収・交換の対応を行うとした。10月には、この回収・交換の対象品目を拡大した。

アンカージャパンによると、中国の提携先のOEM工場の、バッテリーの製造ラインにおいて、本来であれば、品質チェックの段階で除外されるはずのものが、そのまま機器に搭載されて出荷されてしまったのだという。同じ工場のラインで製造されたバッテリーが、さまざまな製品に使われており、結果的に複数の品目に影響が及んでしまったのだとしている。

MTGでは、内部の破損が発生した「リファ ビューティーティック ドライヤー」を、OEM工場が製造していたかどうかについて、現時点では明らかにしていない。ただ、同社はこれまでも、美容機器や健康機器を中国のOEM工場で製造してきており、同製品も同様にOEM工場の製造品である可能性が高い。MTGでは2020年~2022年にかけて、四つの製品について、「異物の混入」や「製品が動作しない」といったことを理由に、商品の回収や交換を行っている。


最小ロットからキャパシティーを超える


こうしたD2Cメーカーの製品事故・回収について、D2Cコンサルタントの工藤一朗氏は「背景に共通した問題がある」と語る。

「OEMの工場で事故が発生する共通のタイミングがある。それは、D2C企業が急成長して、OEMのキャパシティーを超えてしまう時だ」と工藤氏は話す。

スタートアップのD2C企業の場合、初期の製品製造はミニマムロット(最も少なく作れる量)でOEMに委託するケースが多い。例えば、化粧品や健康食品の場合、一般的に1000~3000個程度がミニマムロットと言われることが多い。ただ、OEMメーカーにとって、少ないロットでの製品製造は、手間がかかる割に利益が出しづらい取引といえる。そのため、敬遠されるケースも少なくない。そんな中ではあるが、D2C企業は、在庫を抱えるリスクを抑えるため、できるだけ少ないロットで生産を引き受けてくれるOEMメーカーを探すという構図がある。

そういった流れの中で、小規模なOEMメーカーに製品製造を委託。いざ事業が拡大した時に、OEMメーカーの製造キャパシティーを超えてしまうといったことが、往々にしてあるのだという。OEMメーカーは、自社の製造ラインでは追い付かなくなった受注を、別のOEMメーカーに再委託するケースも多い。そうなると、品質管理が十分に行えなくなり、結果として、事故が起きてしまうことがあるのだという。

賞味期限が設定されている食品の場合は、製造だけでなく、倉庫の管理も同様に重要となる。保管する倉庫の「管理のキャパシティー」を超えてしまった場合、管理が行き届かず、賞味期限切れの商品がたまってしまう可能性もあるようだ。

こうした問題は、OEMメーカーや倉庫に限らない。物流や、コールセンターにおいても、初期段階に想定したキャパシティーを超えて事故が起きるというケースは少なくないようだ。

こうした事態を避けるためには、定期的にオペレーションを見直す必要がある。製品・顧客対応・輸送などあらゆる面で、事業のスケールに伴う品質の低下が起きていないか、定期的にチェックすべきだろう。場合によっては、アウトソース先のリプレイスをすることも必要だ。

ただ、アウトソース先を変更するということは、D2C企業にとっても大きなストレスになりがちだ。アウトソース先をリプレイスした結果、同じ品質の製品を作れるかが保証できなくなるといったケースも想定される。OEMメーカーとして、リプレイスされないよう、品質を維持しながらスケールを拡大できる、柔軟な提案を行っていく必要があるだろう。








RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事