2023.07.22

「パンと日用品の店」運営の『わざわざ』が国内26社目「B Corp認証」を取得した理由は?

「山の上のパン屋」として話題の「パンと日用品の店 わざわざ」などを運営する、わざわざはこのほど、米国の企業認証である「B Corp」に認定されたと発表した。「B Corp認証」はパタゴニアやallbirdsなどが取得している公益性の高い企業を認証する制度。日本ではダノンジャパンなど29社が取得しており、わざわざは日本で26社目の認証取得となったという。

わざわざは小売業を主体とした事業を行っている。「パンと日用品の店 わざわざ」、喫茶+本+ギャラリーを併設する店舗「問tou(とう)」、良いものをさっと買えるローカライズされたコンビニ「わざマート」、コワーキングと体験型施設「よき生活研究所」の4店舗を長野県東御市で運営している。

ECサイトも2サイト運営しており、パンと日用品の店「わざわざ オンラインストア」という独自ドメインのサイトと、「キナリノモール」内にも「パンと日用品の店 わざわざ」を出店している。2018年には「カラーミーショップ大賞」の最高賞である大賞を受賞している。


▲「カラーミーショップ大賞」を受賞したわざわざの平田はる香社長

「B Corp」とは米国ペンシルバニア州を本拠とする非営利団体「B Lab」による民間の認証制度で、2006年の開始から国際的に広がりつつある制度だ。B Corpの“B”が意味するのは、”Benefit”のBであり、日本で表すと「公益」の意味合いが強い。「B Corp」は企業単独の利益だけではなく、社会全体に利する公益を重視する企業に与えられる認証だと紹介する。

わざわざは「事業を行うにあたり利益は必要であるが、それを目的化しない」ということを長く考えてきたという。同社の代表的なオリジナル商品として、靴下工場に余った糸を材料に作っている「残糸靴下」や「残糸ザンシンバッグ」がある。これらは工場から相談を受け、その課題を解決しながら、作り手・売り手として必要な利益を出すことができ、買い手である顧客にとっても購買行動を通してゴミの削減に貢献できる製品となっている。


▲「残糸靴下」

わざわざは営利組織であるため、商品を販売して利益を出すことは、会社存続のために必要なことだ。ただ、そのためにすべきこととすべきでないことがあると考えている。

工場でオリジナル商品を作ることと引き換えに、余った材料を増やして工場や関わる人々を困らせたくはないという。作る人、売る人、買う人。三方にとって良いものづくりでなければならないという考えだ。


▲作る人、売る人、買う人の「三方よし」を重視して事業に取り組んでいる

これまでは自分たちの考え方で良いと思うことを取り組んできたが、「B Corp」にはそれを客観的な尺度で測り、より新たな広い視点を与えてくれる可能性を感じた。それが、わざわざが「B Corp認証」を取得した理由だ。

同社が「B Corp」を知るきっかけとなったのが、長野県上田市にあるバリューブックスだ。バリューブックスに「問tou」で販売している古本を選書・納品してもらっている。

バリューブックスで「B Corp」を日本に普及する活動をされている鳥居希取締役は、わざわざの平田はる香社長とも親交が深い。鳥居取締役は「B Corpハンドブック よいビジネスの計測・実践・改善」監訳をしていたり、わざわざが「B Corp認証」を取得する過程においても力を貸してくれたという。


▲「B Corpハンドブック よいビジネスの計測・実践・改善」

わざわざは2021年7月、「B Corp認証」を取得するために、BIA(B Impact Assessment)にチャレンジした。初回に獲得した点数は53点だった。「B Corp認証」申請の基準となる80点まで不足していたという。そこから、社内の取り組みを客観的に整理し、点数を重ねて、80点を超えたところで申請したという。

世界中から多くの企業が「B Corp認証」を取得するための申請をしているため、わざわざが申請してから半年後にようやく次のステージに進むことができた。申請から1年後の2022年9月に事務局であるB-labとテレビ面接を実施。その後、再び点数が基準の80点を下回ったため、さらに追加の質問に答えたり、答えるために社内整備を行ったり、資料を用意したりした。そして、同年12月に2回目のテレビ面接を実施した。

その後、回答した質問に対する証憑の提出や、別の質問に回答することによって点数を重ね、最終的に2023年4月に80.4点を超え、アセスメントクリアの連絡をB-labからもらったという。署名や登録料の支払いに時間を要し、今年6月21日にようやく「B Corp」認定に至った。


▲基準点の「80点」をクリア

わざわざが取り組みを開始してから、認証されるまで約2年半かかった。ここまで審査に時間がかかったのは、業種が「小売業」で店舗やオンライン、オリジナル商品の開発など複合的に事業を運営していることが背景にあるという。

わざわざは「B Corp認証」取得を経て、さらに「三方よし」の事業運営にまい進する構えだ。




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