2024.06.21

【コンタクトEC最大手の新戦略とは?】パレンテ 吉田忠史代表「書籍や動画で新たな顧客と出会う」

パレンテ 吉田忠史代表


コンタクトレンズ(コンタクト)ECサイト「レンズアップル」を運営するパレンテの吉田忠史代表は、今年5月に書籍「いつも使っているコンタクトレンズのことを、あなたはほとんど知らないかもしれない」を発売した。2023年6月期の売上高は前期比11.7%増の323億円とコンタクトEC最大手の同社が、書籍を発行した背景には、競争が激化する中で新たな顧客接点を創出する狙いがあった。YouTubeにも「コンタクト社長」として出演し、市場の健全化・拡大を推進する吉田代表に、書籍発行の思いや、EC事業の展望などを聞いた。



書籍「いつも使っているコンタクトレンズのことを、あなたはほとんど知らないかもしれない」は、コンタクトの選び方、使い方から豆知識まで、気軽に読めて、役に立つ1冊となっている。


▲今年5月に書籍を発行

これからコンタクトを利用しようとしている学生さんが、この本を親御さんと読んで不安を解消したり、それ以外の方も本で読んだ豆知識をどこかで話してくれたりしたらうれしい。書籍を通して「レンズアップル」を知るきっかけにもなればという狙いもある。


コロナ禍にYouTubeで発信


「レンズアップル」の認知を高めるために、コロナ禍にYouTubeチャンネルを開設した。私が「コンタクト社長」と出演し、コンタクトに関する情報発信を始めた。コンスタントに配信を続けており、動画は300本を超えている。

YouTubeでコンタクトの情報がたまってきたこともあり、それらを整理した形で書籍化することにした。書籍を出せば、リアルの書店でも、さまざまなユーザーと接点を作ることができる。

さらに、私たちも出店しているAmazonや楽天市場といったモールでも書籍を販売している。モール内で「コンタクトレンズ」を検索した際に商品だけではなく、書籍も表示されれば多くの面を取れることになる。


市場変化に応じた一手


もともと書籍の発行やYouTubeでの情報発信、ヴィッセル神戸などスポーツチームへのスポンサードを始めたきかっけは、コンタクトEC市場の競争激化だ。

私がパレンテに来た13年程前は、コンタクトのEC化率は数%という規模だった。多くの商品をそろえ、いかに安く販売し、早く届けられるかの勝負だった。当社はその市場において先行し、コンタクト業界のECへのチャネルチェンジが進む中で、急成長を遂げることができた。私が来たころは年商30億円ぐらいだったが、いまではその10倍の300億円を超える規模になった。

3000億円といわれるコンタクト市場において、現在のEC化率は30~40%とみられている。当社はコンタクトEC市場では最大手のポジションにいる。しかし、ECに参入する企業が増え、ECソリューションも進化する中で、差別化は難しくなっている。

集客もSEOとリスティング広告だけやっていれば良い時代もあったが、今はそうではない。コンタクトECのトップ企業としてコンタクトの情報発信を積極的に行い、市場の健全な拡大を後押ししながら、自社のサービスと顧客の接点も増やしていきたいと考えている。書籍やYouTubeはその延長線上の取り組みだ。

現状でもオフラインの市場の方が大きいことを考え、デジタルと融合した体験型の店舗を設けて、ECに誘導する取り組みも検討している。




【記者の目】
吉田代表はさまざまな人と会ったときに自己紹介すると、「コンタクトってネットで買えるんだ」と驚かれることが多かったという。「意外とコンタクトのことって知られていなんだと」と痛感したようだ。

YouTubeのチャンネル開設前にYouTube内で「コンタクトレンズ」と検索すると、専門家がまじめな解説を配信していたり、YouTuberがエンタメ系のコンテンツでコンタクトを使用していたりするようなものしか出てこなかったという。

自社のPRも狙いではあったが、それよりもコンタクトの情報の少なさや、理解の低さに危機感を持ったという。市場の健全な発展を先導することで、回り回って「レンズアップル」の利益につながるだろう。








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