2024.03.23

アダストリア、「Aloha Table」運営のゼットンを子会社化 商業施設とのコネ、ECノウハウ生かし飲食強化

アダストリアとゼットンは3月21日、アダストリアによるゼットンの完全子会社化に関する株式交換契約を締結したと発表した。両社グループの中長期的な視点に立った経営戦略の機動的かつ迅速な実現を目指す。

アダストリアは、「グローバルワーク」「ローリーズファーム」「レプシィム」「ジーナシス」「レイジブルー」などのカジュアルファッションブランド、「ニコアンド」「スタディオクリップ」「ベイフロー」などのライフスタイル提案型ブランド、「アプレジュール」などのEC専業ブランド、「カオス」「カレンソロジー」などの洗練れた大人に向けたブランドなどさまざまなブランドを展開している。

一方、ゼットンは、「Aloha Table」などの飲食店やブライダル、アウトドアに関する事業を展開している。2023年7月末時点で直営72店舗、FC2店舗を展開している。

両社は3月21日開催の取締役会において、アダストリアを株式交換完全親会社とし、ゼットンを株式交換完全子会社とする株式交換を行うことを決議し、株式交換契約を締結した。

本件株式交換は、2024年6月1日を効力発生日として行う予定で、本件株式交換の効力発生日に先立ち、ゼットンの株式は名古屋証券取引所ネクスト市場において、5月30日付で上場廃止の予定となっている。

衣食住という言葉に表現されるように、消費者のライフスタイルの中で「食」は「衣」と並んで大きな領域である。アダストリアは、自社にとって飲食事業は、アパレルの枠を超えて生活のあらゆる場面で多様なライフスタイルを顧客提案するために重要な要素でとし、飲食事業の拡大に向けて、既存の経営資源を利用した現状の延長線上での成長ではなく、他社との提携やM&Aによる成長の可能性を幅広く検討していた。

アダストリアは、自社が飲食事業を立ち上げた2017年10月頃から取締役を中心にゼットンと交流があったとし、ゼットンのブランドや商品、サービスといったコンテンツは、内装の1つひとつにこだわりを感じさせるクオリティの高い空間デザインを有していると評価しており、アダストリアがライフスタイル提案を目指す中でターゲットとするファッション感度の高い消費者層への訴求力があり、こだわりのある内装から醸し出されるスタイリッシュな空気感も自社のブランドとの親和性が高いと考えていた。

一方、ゼットンにおいても、Park-PFI制度に基づいた公園開発事業や公共施設再開発といったサステナブル戦略を推進していくたには、飲食業で培ってきたノウハウを活かしながらも、他業種との連携なども視野に入れ、飲食業の枠を飛び越える必要があると独自に認識していた。

新型コロナウイルス感染症の収束後においても、さらなる事業成長、および企業価値向上のためには、他業種も含めた外部連携が必要との認識の下、2021年1月上旬より他社との資本提携を含めたさまざまな選択肢の検討を開始し、2021年12月14日付で、アダストリアとゼットンは資本業務提携契約を締結。2021年12月から2022年2月にかけて実施した第3者割当増資および公開買付けを経て、アダストリアはゼットンを連結子会社した。

その後、両社間においては資本業務提携契約に基づき、「両社それぞれが強みを持つ海外地域における、相互の商品、ブランド、事業の展開」「両社それぞれの既存ブランド事業における、相互の商品、ブランド、事業の展開」「アダストリアグループのECプラットフォーム上におけるゼットン商品の取扱の拡充」「アダストリアグループのオウンドメディアを通じたゼットンのプロモーション活動」「ゼットンブランドの雑貨のアダストリアグループ内での企画・製造」「アダストリアグループがこれまで構築してきた商業施設とのコネクションを活用した共同での店舗開発や、海外のゼットンの未進出エリアの開拓、管理部門における人材交流や業務効率化等に関するノウハウの交流」といった施策について検討を進めてきた。

また、新型コロナウイルス感染症による世界的な混乱の収束を経て、ゼットンが属する外食産業においては、急激な物価上昇や慢性的な労働力不足、IT活用の遅れなどが引き続き課題となっており、ゼットンにおいてもこれらの課題に対する施策の遂行が急務となっていた。一方で、事業機会への投下資金の確保においては、外食産業に対する金融機関への融資姿勢は引き続き慎重であることから、機動的かつ十分な資金を確保するハードルが高い状況にあった。

こうした状況を踏まえ、アダストリアは、ゼットンにおける成長に資する事業機会を積極的かつスピーディに推進することは、長期的な両社の企業価値の向上に資すると考えるに至ったとしている

一方で、これらの施策は短期的には設備投資や費用の増加を伴い、業績や経営指標の低下によりゼットンの少数株主の利益を損なう可能性があり、また、ゼットンにおいては上場企業として親会社であるアダストリアから独立した経営が行われ、アダストリアとの取引においては利益相反を回避するために慎重な検討を要する点から、積極的かつスピーディな実行が困難な状況にあったとし、アダストリアはゼットンを完全子会社化することによりこれらの課題を解決し、中長期的な両社の企業価値の向上を実現できるとの判断に至ったとしている。

アダストリアは、2023年11月より本件株式交換に関するゼットンとの具体的な協議を開始し、12月27日付でゼットンに対し株式交換による完全子会社化を提案する旨の意向表明書を提出した。ゼットンは、提案について慎重に検討した結果、アダストリアの完全子会社となることで、従来以上に両社の連携を緊密化して、ゼットンの事業を拡大していく機会を図るとともに、資本業務提携契約における施策の実行をさらに迅速化し、アダストリアグループの有する商品開発やマーケティングのノウハウ、人材、資金力、国内外のネットワーク等の経営資源をより一層活用することにより、両社グループの中長期的な視点に立った経営戦略を機動的かつ迅速に実現することが可能となるとし、本件株式交換がゼットンの企業価値の向上に資するとの認識に至ったとしている。

完全子会社化後の具体的な施策、およびそれに基づき顕在化するシナジーとして、ゼットンの組織強化、採用力の強化、人材の拡充、DX化の推進。資金調達手段の機動性・条件の向上、資金調達の機動性の向上に伴う新規店舗の付加価値向上やPark-PFI制度における札力の向上、資本業務提携契約に基づく施策の積極化、機動性の向上を見込んでいる。




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