2023.11.06

「景表法違反は企業成長のきっかけだった」やずや矢頭社長がしくじり体験談語る【D2Cの会 フォーラム2023<講演要旨>】

やずやの矢頭社長(中央)が通販のしくじり体験を語る


通販・D2Cのコンサルティングを手掛ける、売れるネット広告社はこのほど、「『D2Cの会』 フォーラム2023」を開催した。オルビスややずやなど、通販・D2Cを運営する企業の社長・担当者が多数登壇した。本連載では、フォーラムで開催された講座のハイライトを紹介する。第3回は、オルビスの小林琢磨氏、北の達人コーポレーションの木下勝寿氏、やずやの矢頭徹氏の3人のセッションを取り上げる。office Kの田岡敬氏がモデレーターを務めた。


 

景表法違反から復活


田岡:創業から40年以上の歴史があり、経営を引き継いで20年近く経つ矢頭氏には、「景品表示法違反『熟成やずやの香醋』」をテーマに、当時のエピソードをうかがいたい。

矢頭:当時、メディアミックスで売り上げが上がり、社内も非常に忙しかったとき、「熟成やずやの香醋」の「お酢を20倍に濃縮してカプセルにしている」といった広告表現が、排除命令を受けた。日本語としては間違っていないが、「栄養素が20倍に上がっているように誤解を与える」という指摘を受けた。

田岡:誤解を与える表現ではないように思うが、結果的にどのくらい影響が出たか?

矢頭:広告は約半年間ストップした。一番きつかったのは、売り上げが下がることよりも、社員が顧客からお叱りを受けることだった。社員は平謝りの状態ではあったが、それも1カ月ほどで収まった。意外にも励ましの言葉を多くいただき、景表法違反を指摘されたことによって退会する顧客は、全体の5%もいなかった。

田岡:その後、どのくらいの期間、どのような対策をとったか?

矢頭:2年ぐらいは広告出稿をコントロールした。「熟成やずやの香醋」の販売を中止したり、新たな商品を開発したりした結果、結果的にはいい方向に進むことができた。

景表法違反を指摘されるまでは「熟成やずやの香醋」が売り上げの8割を占めていたが、その後はリスクヘッジとして、上位10商品くらいで売上の8割を作るような形に切り替えた。


失敗から成功へ


田岡:最後に、これから会社を成長させようとしている経営者にメッセージをお願いしたい。

小林:商品数もアクティブ顧客数も多いオルビスの社長に就いたばかりのときは、膨大なデータ分析に溺れたこともあった。これまでに、いろいろなことに手を出して失敗も経験してきた。やはり、基本をしっかりやりきることがすべてだと痛感している。多くの先人たちが失敗してきた情報もある。そのなかで質の高い情報をキャッチアップして、基本をやりきってから新しいことにチャレンジするのが大切ではないか。

木下:私は、「10回やれば9回失敗する」という前提で仕事をしている。しかし、残りの1回は絶対に成功すると考えている。9回の失敗からいかに多くの学びを得るか、いかにコストをかけずにスピーディーに失敗をするかが大切だ。そしてその失敗パターンをうまく避けていくことが、成功につながるのではないだろうか?

矢頭:通信販売業界に20年関わってきたものの、分からないことはまだ多く、それが楽しいと思っている。だからこそ、社内はもちろん、業界全体でさまざまな議論をし続けることが大事なのではないだろうか。

D2Cや通信販売を突き詰めれば、ホテル事業やスポーツ事業など、まだまだ進出できる分野は多いと思う。業界全体でどんどんD2Cを突き詰めてもらいたいと考えている。






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