2019.12.19

【EC向け広告】デジタル化する音声広告 音声+ディスプレイでCTR数十倍

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音声広告のデジタル化が進んでいる。ネットラジオの「Radiko(ラジコ)」や音楽配信の「Spotify(スポティファイ)」などの音声コンテンツサービスでは、ユーザーを性別や年代、趣味嗜好でセグメントし、ターゲティングした広告を配信することが可能になっている。19年からは、PCやスマホに表示するディスプレイ広告との連動を開始。音声とディスプレイの両方でターゲティング広告を配信することができるようにした。音声広告を耳にしたユーザーが、ウェブ上で同じ広告を目にした際に、広告をクリックする割合(CTR)は、ウェブ広告を見ただけの場合と比較すると、商材によっては数十倍から100倍以上にもなるという。商品認知と新規顧客獲得の両方を狙う単品通販企業にとっては、有力な広告媒体になる可能性がある。


ラジコとスポティファイが巨頭


国内の音声配信サービスでは、「ラジコ」と「スポティファイ」が2大巨頭となっているようだ。


「ラジコ」と「スポティファイ」が2大巨頭


「ラジコ」の月間アクティブユーザー数は約750万人。その内、日本全国のラジオ番組を聞くことができる「プレミアム」の会員は約65万人だとしている。

ラジコでは、配信しているラジオ番組に元々ついている広告とは別に、独自のオーディオアド(音声広告)を、ターゲティング配信している。ターゲティング広告の配信には、ラジオ局の番宣や局報の枠を使用している。

例えば、地上波のラジオ番組の途中で流れる「12月16日午後6時からは○○を放送予定!」のような20秒程度の広告を、ラジコでは、「○○するなら△△」といった、同じ長さの音声広告に置き換えて配信している。

ラジコ独自の音声広告は、配信する番組名を指定することができない。事前に広告を配信したい時間帯やユーザーの年代などの条件を設定しておくと、マッチしたタイミングで自動的に広告が配信される仕組みだ。独自の音声広告の完全聴取率(一つの広告を最初から最後まで聞いた人の割合)は98%だという。ユーザーが広告を視聴中に途中で離脱することがないのがメリットだ。

スポティファイでは、ユーザーが選択した音楽のアルバムやプレイリストを再生する際に、広告を配信している。ラジコと同様、事前にユーザーごとにターゲットを絞って、セグメントした広告を配信することが可能だという。

音声広告の運用などを手掛けるオトナルによると、スポティファイでは、「通勤中」「睡眠」「運動中」などといった、シーンに合わせて作られたプレイリストを再生中のユーザーに対して、ターゲティングして広告配信することができるという。ユーザーの「まさに今」の状況に合わせて広告を配信できるのが強みだとしている。


CTRは数十倍にも


ラジコの担当者によると、音声広告はあくまで認知のための広告として出稿する企業が多く、新規顧客の獲得を目的に広告を配信することが多いEC分野の広告主はまだ多くはないという。前出のオトナルの八木社長も同様の見方を示している。

ただ、音声広告は、ウェブ上のディスプレイ広告と連動して運用することも可能で、こうした運用を行うことにより、EC分野でも大きな広告効果を生み出すことができるのだという。

具体的には、音声広告に触れたユーザーに、ディスプレイ広告で再アプローチするといった手法が効果的だという。

オトナルの八木社長によると、「ラジコの場合もスポティファイの場合も、別のプラットフォームが持つデータを掛け合わせて広告を配信することができる。聴覚と視覚の両方でユーザーに接触することにより、『最近どこかで知ったな』というブランドへの既視感を持たせたうえで、ECサイトへの導線を作ることができる」と話している。

八木社長は「広告主の商材や音声広告の認知度などにもよるが、音声広告を聞いてからディスプレイ広告をクリックする割合は、ディスプレイ広告だけを見た場合と比較して数十倍から100倍以上になるケースもある」と話している。

ラジコによると、音声広告を利用する事業者はまだ数十社程度。スポティファイでは、飲料や食品、化粧品メーカーなどが広告を出稿しているという。ただ、どちらのサービスも運用型広告を利用する事業者は増加しているとしている。ユーザー数は毎年増加しており、今後も広告主の増加が期待できるという。

一方で、「個人情報の法律上の扱いが今後代わることにより影響を受けるのでは」と懸念する声も聞かれる。個人情報保護委員会はこのほど、個人情報保護法改正案の骨子案を発表した。その中には、ユーザーの端末情報をマーケティングなどに利用することを一部規制するといった内容も含まれていた。

音声広告とディスプレイ広告の連携が、規制の対象になるかは未知数だ。

音声広告のECでの活用事例が増えるのかどうかは、個人情報保護法の改正議論の動向にも大きく影響を受けそうだ。

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